FA、トレード、自由契約からの入団と、今オフも多くの選手が移籍していった。その経緯は異なるものの、獲得する球団からの期待が込められているという点では同じだ。しかし、それよりも一足早く移籍を経験した選手たちが存在する。昨シーズンの移籍期限、2018年7月30日よりも前にトレードで移籍した面々だ。
今回は昨季途中に移籍した8人の選手の経歴と昨季の状況を紹介するとともに、春季キャンプでの活躍ぶりを交えながら、彼らの「現在地」を探っていきたい。
藤岡貴裕投手(北海道日本ハム)
藤岡投手は東洋大学時代にエースとして大活躍し、2011年のドラフトの目玉として3球団競合の末に千葉ロッテへ入団。1年目からローテーションに入って6勝をマークすると、その後も2桁勝利こそなかったものの、5年連続で20試合以上に登板し、2016年には中継ぎとして32試合で防御率2.55と好投していた。しかし、故障もあって2017年は防御率16.62と大不振に陥り、続く2018年は一軍での登板機会が得られないままだった。
その年の7月27日にトレードで北海道日本ハムに移籍すると、移籍後初登板は奇しくも古巣・千葉ロッテを相手の先発登板だった。だが、この試合では自身のトレード相手でもある岡選手に2打席連続で安打を許すなど、4回1/3を5失点で敗戦投手に。シーズン通算でも4試合で0勝2敗、防御率6.52と復活は果たせなかった。
今年のキャンプでも二軍スタートと苦しい状況は続くが、かつては誰もが認める大学球界屈指の左腕だっただけに、そのポテンシャルの完全開花が待たれるところ。今年の7月には30歳を迎える。華々しくスタートさせたプロ野球人生を、このまま終わらせるわけにはいかないだろう。
小川龍也選手(埼玉西武)
小川投手は中日時代の2016年に44試合で防御率2.27という安定したピッチングを見せ、貴重な左投手として存在感を見せていた。翌年も18試合の登板にとどまりながら防御率2.19と安定感は相変わらずだったが、2018年は開幕から一軍での登板が一度もないまま7月23日にトレードで埼玉西武へと移籍することになった。
チームの泣き所となっていたブルペンのテコ入れとしての緊急補強だったが、小川投手は左キラーとしてのみならず、時にはイニング跨ぎをこなすなど奮闘。15試合で防御率1.59とこれまで以上の安定感を見せて十二分に期待に応え、リーグ優勝にも貢献を果たした。
前年の活躍を受けて、2019年はシーズンを通しての活躍が期待されたが、キャンプは二軍スタートとなり順風満帆とはいかず。輝きを取り戻しつつある左腕はここから巻き返しを見せ、今季も貴重な左腕としてフル回転の働きを見せてくれるだろうか。
岡大海選手(千葉ロッテ)
明治大学から2013年のドラフト3位で北海道日本ハムに入団した岡選手は、プロ2年目の2015年に101試合に出場すると、続く2016年には41試合で打率.374という抜群のアベレージを残し、奇跡の逆転優勝にも大きく貢献した。今後のさらなる飛躍が期待されたが、その後の2年間は打率1割台と深刻な打撃不振にあえぎ、一軍定着すらままならなかった。
2018年の7月27日に藤岡選手とのトレードで千葉ロッテに移ってからは、主に負傷離脱した荻野選手の代役としてセンターを任された。移籍前の北海道日本ハム時代には28試合で打率.154、0本塁打と絶不調だったが、移籍後は51試合で打率.204、3本塁打と打撃成績の向上が見られた。
とはいえ、打率は2割をわずかに上回る程度と、まだ2016年以前の状態に戻ったとは言い難いだけに、今後の完全復活に期待がかかる。今季は荻野選手が故障から復帰してくるものの、若手中心で臨んだ2月中旬までの対外試合では岡選手がスタメンに据えられるケースが多く、首脳陣の期待の高さがうかがえるところ。俊足・強肩の外野手はその意気に応えて、かつての輝きを取り戻せるだろうか。
白崎浩之選手(オリックス)
2012年のドラフト1位で横浜DeNAに入団した白崎選手は、プロ入り2年目の2014年に101試合に出場するなど、高い守備力とパンチ力のある打撃を武器に5年間で355試合に出場。レギュラー定着こそ果たせなかったが、2017年の日本シリーズでは同点ホームランを放つ活躍を見せて存在感を発揮していた。
しかし、2018年は開幕から一軍での出場機会が1試合もないまま、2018年7月11日にトレードでオリックスへ移籍することに。横浜時代に公式戦で放った14本塁打はポストシーズンも含めて全てソロだったが、8月12日には移籍後初本塁打をプロ入り後初の2ランで飾って成長の跡を見せた。
移籍後は主に三塁手としてその守備力を度々発揮していたが、打撃面では終盤に失速して打率.239に終わってしまったことが今季の課題となりそうだ。初めてオリックスの一員として迎えた春季キャンプでは、紅白戦で豪快なホームランを放つなど躍動。かつてのドラフト1位が新天地でいよいよ覚醒なるか、期待したいところだ。
高城俊人選手(オリックス)
高城選手は横浜DeNA時代に高卒1年目から一軍で出場機会を掴み、7年間で一軍通算312試合に出場してきた。巧みなリードと細やかな気配りを活かして山口俊投手や濵口遥大投手の専属捕手としてもチームに貢献し、三浦大輔氏の引退試合ではかつてのエース直々に先発捕手に指名されるほどの信頼を勝ち取っていた。
2018年も横浜DeNAの一軍で28試合に出場していたが、白崎選手と共にシーズン途中にオリックスへと移籍。環境の変化をきっかけにさらなる飛躍が期待されたものの、移籍後は二軍でも打率.229と苦しみ、結局シーズンが終わるまで一度も一軍に昇格することはなかった。
今年の春季キャンプでは一軍スタートとなり、再起のためにも西村新監督や首脳陣に対してアピールを重ねていきたいところだった。しかし、キャンプ初日に肉離れを発症して別メニュー調整を強いられることになり、いきなり出鼻をくじかれることに。2年続けて逆境に立たされている高城選手は、25歳の若さにして培ってきた豊富な経験を武器に、この試練を乗り越えていけるだろうか。
市川友也選手(福岡ソフトバンク)
市川選手は2009年のドラフト4位で巨人に入団したが、厚い選手層に阻まれ4年間で9試合の出場にとどまっていた。だが、2014年に北海道日本ハムに移籍すると控え捕手として一軍に定着。71試合に出場した2016年にはチームの逆転優勝と日本一にも貢献するなど、4年間にわたって貢献を続けた。しかし、2018年には若手の台頭もあり、一軍での出場機会を一度も得られていなかった。
そんな中、福岡ソフトバンクの捕手陣に故障者が相次いだことを受けて、2018年4月19日に緊急トレードで北海道から福岡への“大移動”が決まった。移籍後は出場試合数こそ25試合に留まったが、6月13日には古巣・巨人から逆転2ランを放って勝利に貢献。決して派手な役回りでこそなかったものの、チームが苦しんだシーズン序盤の戦いを控え捕手として支えた。
しかし、8月4日の試合を最後に一軍での出場はなく、日本シリーズでのベンチ入りも果たせなかった。今年の春季キャンプも二軍スタートとなっているが、現在33歳とまだまだ老け込む歳ではない。経験に裏打ちされたプレーを活かし、今季も与えられた出番で確実に仕事を果たしてほしいところだ。
美間優槻選手(福岡ソフトバンク)
2012年のドラフト5位で広島に入団した美間選手は、プロ入り後の5年間で一軍出場は1試合のみとなかなか出場機会を得られずにいた。しかし、2018年には堅守を武器に開幕一軍を勝ち取って30試合に出場。随所で守備力の高さを見せたものの、打率.139という打力不足がネックとなって一軍定着は果たせなかった。
7月25日に福岡ソフトバンクへトレードで移籍してからは二軍で5本塁打を放ったが、打率.238と確実性に欠け、一軍での出場は1試合もなし。日本シリーズは古巣・広島との対決となったが、その舞台に立つことも叶わなかった。
今年のキャンプでも当初は二軍スタートだったが、負傷した柳田選手の代役として一軍に招集。2月16日の紅白戦では決勝本塁打を放ち、課題の打撃面で大きくアピールした。このままでは終われない24歳の三塁手は、この一発を本領発揮のきっかけにできるか。
松田遼馬投手(福岡ソフトバンク)
松田遼投手は2011年のドラフト5位で阪神に入団し、高卒2年目の2013年には高卒2年目にして27試合に登板して早くも頭角を現す。2016年には22試合で防御率1.00という素晴らしい投球を披露して本格ブレイクが期待されたが、翌2017年は26試合で防御率5.05と、一転して安定感を欠いていた。
2018年には阪神での一軍登板は1試合もなく、7月27日にトレードで福岡ソフトバンクに移籍。長崎出身の松田遼投手にとっては九州への凱旋となったが、一軍での登板はわずか2試合のみ。防御率6.00と結果を残せず、日本一の輪に加わることもできなかった。
松田遼投手はこれまで一軍通算113試合に登板してきた経験を持つが、年齢的には25歳とまだまだこれからというところ。移籍直後に大活躍とはいかなかったが、若くして阪神で台頭を見せた右腕は、快速球を武器に層の厚いブルペンの一角に食い込んでいけるだろうか。
小川投手のように移籍を機に活躍を見せた選手もいれば、残念ながら満足のいく成績を残せなかった選手もいる。ただ、年が明けて迎えた2019年のキャンプで、存在感を放っている選手もまた少なくはない。それぞれ新天地の水にも慣れた今季、獲得を決めた首脳陣の期待に応える活躍を見せてほしいところだ。
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