「一軍増枠」で恩恵を受けるパ選手は?各球団おすすめの「29人目」

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2019.1.22(火) 11:00

北海道日本ハムファイターズ・村田透投手(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・村田透投手(C)PLM

リリーフ投手、控え野手、第三捕手…「1枠」の活用法は多岐にわたる

 2019年シーズンから、日本プロ野球の一軍公式戦に出場できる「出場選手登録」の人数が1つ増枠されることが、21日に行われた実行委員会で決まった。ベンチ入りが可能な人数は従来通り25人のままだが、昨季までのように試合に起用される可能性がほぼゼロに等しい先発投手がベンチを埋めたり、そもそもベンチ入りの人数が25人未満となるようなケースは減少していくかもしれない。

 今回増設された「最後の1枠」の使い道としては、中継ぎ投手を1人増やしてリリーフ陣の厚みを増したり、打撃や守備に特長がある選手を登録して戦い方に幅を持たせるといったケースが考えられる。また、昨季までは捕手2人制を取っていたチームが、増枠を機に捕手3人体制へと移行していく可能性もあるだろう。

 そこで、今回は増枠によって一軍でより多くのチャンスを得られそうな選手たちをパ・リーグ6球団につきそれぞれ1人ずつピックアップし、その理由と新シーズンに向けた期待感を紹介していきたい。

北海道日本ハム:村田透投手

 米球界での挑戦を経て北の大地にやってきた「逆輸入右腕」にとって、2019年はこれまで送ってきた波乱万丈の野球人生の中でも新たな転機になりうる年だ。2017年にファイターズに入団した村田投手は同年に15試合で1勝2敗・防御率2.77、2018年は18試合で6勝3敗・防御率3.27と安定した成績を残してきたが、2018年は計6度の登録抹消を経験するなど、チーム事情に応じて昇降格を繰り返す日々が続いていた。

 一軍枠がひとつ広がることによって投手陣に割ける枠にゆとりが生じれば、先発と中継ぎの双方をこなせる村田投手がより重宝される可能性は高まりそうだ。米球界でもマイナーで好成績を挙げながらメジャーでの出場機会には恵まれなかったベテラン右腕にとって、今回の登録枠増は渡りに船。シーズンを通して2018年と同様の投球を披露できれば、初となる2桁勝利も決して夢物語ではないはずだ。

東北楽天:久保裕也投手

 数多の辛苦をなめてきた不屈の大ベテランは、吹きつつある追い風を完全復活への足がかりにできるだろうか。巨人で主にリリーフとして長年活躍してきた久保投手は、2度の戦力外通告を経て2017年から東北楽天でプレー。2017年には27試合で防御率3.60と復活を感じさせる投球を見せながら、血行障害を発症した影響でオフには育成契約を余儀なくされた。

 回復を見せた2018年5月に支配下に返り咲くと、25試合で防御率1.71と前年を上回る好成績を収めた。その安定感に反して、チームが開幕から苦戦したこともあってベテランの久保投手の登板数はあまり伸びなかったが、登録枠がひとつ増える2019年は再び一軍の舞台で登板を重ねるチャンスが巡ってきそう。苦境を乗り越えて再び輝きを放ちつつある38歳の右腕には、杜の都の、そして全国のファンに向けてさらなる雄姿を見せ続けてほしいところだ。

埼玉西武:永江恭平内野手

 2019年に26歳を迎える内野手にとって、二重の意味で大きなチャンスが訪れる1年となるかもしれない。永江選手は持ち前の堅い守備を武器に主に守備固めとして活躍してきたが、2018年は二遊間が固定されていたこともあり、プロ入り以来最少となる4試合の出場にとどまっていた。しかし、浅村選手が移籍した影響で二塁の定位置は「空位」に。チームにとっては痛手だが、永江選手を含む多くの内野手にとってこの状況はチャンスとなりうる。

 二塁、三塁、遊撃のいずれも高いレベルでこなすことができる抜群の守備力は、試合終盤の守備固めや有事への備えにうってつけ。もちろん、一軍に帯同し続けることができれば課題の打撃面でアピールの機会が巡ってくる可能性も増してくるだろう。定位置奪取への第一歩を踏み出すためにも、まずは頼れる守備固めとしての立ち位置を取り戻したいところだ。

千葉ロッテ:永野将司投手

 評判通りのスピードをはじき出していた快速球が、2019年は一軍の舞台でより多く目撃できるかもしれない。九州国際大学、Hondaを経てドラフト6位で入団した永野投手は、150km/hを超える速球を武器に、下位指名ながら即戦力左腕としての働きが期待されていた。しかし、オープン戦では2試合の登板で防御率45.00とめった打ちに遭い、シーズンに入ってからも一軍での出番は訪れないままだった。

 しかし、二軍では22試合で防御率1.29と圧巻の数字を残し、シーズン最終盤には一軍でも150kmオーバーの剛速球を披露した。好成績を収めながらなかなか昇格の声がかからなかった永野投手だが、マリーンズの投手陣は松永投手以外の左のリリーバーが手薄なまま。ブルペンに割ける枠がひとつ増えることになれば、チームのニーズにも合致する快速左腕の出番が増す可能性も十二分にありそうだ。

オリックス:武田健吾外野手

 若手からベテランまで数多くの有力候補を擁しながらなかなか外野の布陣が固まりきらないオリックスにとって、武田選手は期待の若手と呼べる存在のうちのひとりだ。2017年は交流戦期間中に規定打席以上では全選手中3位となる打率.382という数字を残し、シーズン通算でも97試合で打率.295という好成績を記録。レギュラー定着に向け、大きな期待感を抱かせていた。

 しかし、2018年は69試合の出場で打率.221にとどまり、4度の二軍落ちを経験する苦難のシーズンに。飛躍を期待させた2017年から、一歩後退となってしまった。武田選手はたびたび守備固めとしても起用されるなど守備・走塁面における評価も高く、ベンチに控えるスーパーサブとしても存在価値が高いタイプ。それだけに、監督交代に加えて登録枠も増える2019年は25歳の若武者にとって好機となりうるはずだ。

福岡ソフトバンク:塚田正義外野手

 キャリアハイとなった2018年の成績以上のものを、次はより大きな母数で実現してみせる。塚田選手は2018年、25試合に出場して打率.270、3本塁打、6打点、出塁率.372と、いずれもプロ入り後最高の成績を収めた。一軍の舞台でも一定の存在感を示した一方で、外野の厚い選手層にも阻まれ4度の登録抹消を経験することに。プロ7年目となった2018年も一軍定着は果たせなかった。

 2軍では76試合に出場して打率.285、7本塁打、34打点と安定した成績を残しており、過去には2016年にウエスタンの首位打者を獲得した実績も持つ。30歳の節目を迎える2019年、必要なのは一軍での結果だけだ。打率.381と抜群の強さを誇った対左投手の代打を足掛かりに、増えた1枠を生かしてチームにとって貴重なピースとなるべく飛躍を果たせるか。


 プロ野球の世界は、ほんの些細なきっかけで選手としてのキャリアが一変することが往々にして存在するもの。今回の一軍登録枠変更を機に、野球人生が変わるほどの飛躍を果たす選手は果たして現れるだろうか。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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