イチローらが行う初動負荷トレーニング、実際に取り入れた選手の声は…
シーズンオフに新たなトレーニングに挑戦する選手も多い。北海道日本ハムでは今オフ、初動負荷トレーニングを取り入れる選手が増えている。
マリナーズのイチロー外野手や元中日の山本昌投手、岩瀬仁紀投手らが長年取り組んできたことで知られる初動負荷トレーニングが、北海道日本ハム投手陣の間でプチ流行している。シーズン終了直後から千葉の専用ジムに通う鍵谷陽平投手は「今またうちのチーム増えてきています」と明かす。
鍵谷自身は昨年3月に右尺側手根屈筋を痛め、昨季不本意な成績に終わったことがきっかけになった。「以前、大野(奨太捕手=現中日)さんから『やってみたら?』と言われたことがあって。それが今のタイミングかなと思いました」と話す。
鍵谷と同じようにリリーフの中心として期待されるや井口和朋投手、先発ローテーション入りが期待される杉浦稔大投手や藤岡貴裕投手らも取り組んでいる。
実際、どんなトレーニングなのか。昨年3月に道内初の専用ジムとしてオープンした「ワールドウィング札幌」(札幌市豊平区平岸3条14丁目3-3紅観光ビル2階)を訪ねると、専用のマシン17台がズラリと並んでいた。
通常のマシンと違うのは、直線的な動きだけではなく、ねじり運動を伴う3次元の動きができること。普段の生活や運動ではなかなか使わない箇所を動かすことが可能になる。肩甲骨と股関節を効率よく動かせるようになることで、力の伝達が良くなり、パフォーマンスが向上するという。渡邉廣乃代表は「弾力のある筋肉をつくり、体をしなやかに保つことができます。『体に油を差したようになる』という表現をされる方もいらっしゃいます」と話す。
「パフォーマンスを長く発揮するという意味では、すごいいい結果」
選手たちはどんな狙いで取り組んでいるのか。鍵谷は「僕は今まではどちらかというとウエートトレーニングや走り込みと、体を鍛える方に特化したトレーニグをやっていました」と振り返る。「そこに柔軟性や、今までにない体の動き方を取り入れていこうかなと思いました。怪我の防止にもつながりますし、柔軟性もよくなります。体のポジションも良くなって、いい方向に行くんじゃないかなと思います」と効果を期待している。
井口は昨年の春先から取り組んでいる。6月13日に1軍再昇格した時には「股関節の可動域を意識してやって、投げ方が変わりました。しっかり体重移動ができようになり、ボールが力強くなりました」と語っていた。その言葉を証明するように、昨季は31試合1勝1敗7ホールド1セーブ、防御率2.48の成績。「初動負荷は、パフォーマンスを長く発揮するという意味では、すごいいい結果が出せたと思っています」と今後も継続していく。
昨季右肩痛からの復帰白星を挙げた杉浦は「とにかく怪我をしないこと、自分のコンディションを整えることが優先。そのために今年は新たに初動負荷トレーニングをやり始めました」と動機を語る。「体の関節の動きとか、やった直後に体が軽くなる感じがある。続けていけば、基本のパフォーマンスが上がるかなと思います」と期待を寄せる。
昨季途中に千葉ロッテからトレード移籍した藤岡は昨年1月に続き、今月も鳥取のワールドウィングでのトレーニングキャンプに参加予定。「投げ方についても教えてくれますし、体の使い方も教えてくれる。理論が難しいので、やりながらちょっとずつ覚えていっている段階です」と頭もフル回転させながら挑戦している。
新たな取り組みがそれぞれの選手にどんな進化をもたらすのか。新シーズンが楽しみだ。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)
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