“おかわり君”が“おかわり君”である必然【白球つれづれ】

ベースボールキング

西武・中村剛也 (C)Kyodo News
西武・中村剛也 (C)Kyodo News

◆ 白球つれづれ2026・第34回

 今年の西武は、想像以上にしぶとく、強い。

 8月上旬には連敗が続き、激しく追い上げる日本ハムと入れ替わりで3位転落。昨年のように夏以降の失速が危惧された。ところが11日の日本ハム戦に勝ち越すと、それ以降のロッテ、オリックス戦に連続勝ち越し。続く楽天戦では激しい凌ぎ合いを制て3連戦3連勝を決め、ライバルの日本ハムと再び3ゲーム差をつけて、また快走が始まった。(記録は24日現在、以下同じ)

 チーム事情は楽ではない。渡部聖弥、桑原将志、長谷川信哉、滝澤夏央らの主力選手が故障のため相次いで戦列を離脱する。投手陣も高橋光成らが体調不良を訴えて、先発ローテーションを回すのが四苦八苦だ。

 それでも勝ち続けられるのは、若手投手陣の奮起と、打線では「日替わりヒーロー」が誕生することで、チームを活気づけているからである。

 21日の楽天戦では25年目の中村剛也選手が大仕事をやってのける。

 延長11回二死満塁の場面で「代打・中村」が告げられる。楽天の泰勝利投手の前にあっという間に0-2と追い込まれた4球目。内角高めを突いた快速球を一振りで左翼スタンドに叩き込んだ。代打決勝満塁本塁打だ。

 プロ入り以来23、通算23度目の満塁本塁打で自身の持つNPB記録を塗り替え、他の追随を許さない。

 歓喜の輪の中に飛び込んでも大きく表情を変えることなく「まあ、打てて良かったです」の一言。“おかわり君”にとっては通算482本塁打を重ねて来た積み重ねの一本だったのかも知れない。

 2002年大阪桐蔭高からドラフト2位で入団。同期の栗山巧選手(兵庫育英)とは同じ新幹線で上京した。

 プロ2年目にはイースタン・リーグで本塁打王に輝いた、中村はその後6度の本塁打王に、4度の打点王も獲得。ホームランを連発するたびに“おかわり君”の愛称は定着していった。

 毎年オフになると、中村の周りには、現ブルージェイズの岡本和真選手らが打撃の極意を教わろうと集まって来る。

 中村の教えは、至ってシンプル。来た球に考え過ぎず、一直線でバットを出す事。あれこれ考え過ぎると打席の中で迷いが生じる。いかに来た球を無心で弾き返すか。一打席ごとに投手と真剣勝負を挑む。だから中村の打席は三振も多い代わりに劇的アーチも量産できる。

 今年の8月で43歳を迎えた。さすがに今季は二軍での調整が続き、一軍での出番は限られる。それでも内角をえぐる速球に、左肘をたたんで腰の回転で本塁打にしてしまうのだから、円熟の技はまだ健在だ。

 長男の勇斗君は、父の背中を追って、今春から大阪桐蔭高に入学。早くも名門学校のレギュラーも手の届くところまでやって来た。「父はいい目標です」と語る勇斗君の卒業まであと2年。西武に異色の「親子鷹」が誕生するのも夢ではない。

 2019年。ライオンズは球史に残る記録を打ち立てている。

 首位打者・森友哉、本塁打王・山川穂高に打点王は中村剛也、そして最多安打に秋山翔吾と打撃タイトルを総なめした。

 あれから7年。中村以外はみんな他球団に移籍していった。盟友・栗山も今月30日に引退試合を行う。

 それでも“おかわり君”は打席に立ち続ける、“おかわり”が、“おかわり”であり続けるために。老雄はまだ死なない。

文=荒川和夫(あらかわ・かずお)

特集
特集
パ・リーグ.com ニュース

“おかわり君”が“おかわり君”である必然【白球つれづれ】