「ファームで福浦さんと堀さんにいろいろ教えていただいて、ファームで自分の形を見つけられたのがああいう結果になったと思うので、それをどれだけ長く続けるかというのは難しいこともあるし、続けていかないといけないところだと思うので、今年のファームで言ったらタイミングを早くとって間を作ってという練習を堀さんとやっていたので、それを続けていければと思いますし、プラスアルファでやらなければいけないこともあると思います」。
ロッテ・山口航輝は8月にパ・リーグタイ記録となる4打数連続本塁打を放ったが、シーズン通すと、悔しさの残る1年になった。
山口は22年から2年連続二桁本塁打を放ち、昨季は開幕4番を務めたが故障や自身の好不調の波が大きく満足のいく成績を残せず、今季に向けて「まず自分が追い込みたかったのも1つありますし、妥協できない環境を作って、やるしかないという環境のもとで、トレーナーをつけました。高校から見てもらっている人なので、キツイ練習することはわかっていた。いい練習ができたと思いました」と、並々ならぬ決意を持って自主トレから過ごしてきた。
石垣島春季キャンプでは、朝からバットを振りまくった。「色々試しながらやっていますし、試している時間とかないとは思いますけど、その中でいかにいいものを出せるように色々試行錯誤しながら、細かいところまで、これだけ時間があったら出てくると思うので、いい練習ができていると思いますし、去年は怪我して振り込めなかったので、いいキャンプを送れているんじゃないかなと思います」と、石垣島春季キャンプは充実の時間となった。
今年の石垣島春季キャンプで、決意を持って練習を取り組んでいるように感じたのは打撃練習だけではない。ベースランニングでは、「先頭に立ってやることは大事だと思いますし、アップとかもなるべく前にいくようにはしています」と常に先頭を走った。
今季初の対外試合となった2月16日の楽天モンキーズ戦で、ライトの守備から途中出場し2打席目にセンター前に適時打、2月18日のヤクルトとの練習試合で本塁打を含む2安打2打点、2月22日の中日とのオープン戦では藤嶋健人から昨秋から打撃練習で取り組んできたバックスクリーンに本塁打。開幕に向けてさらなるアピールをしていきたいところだったが、練習試合・オープン戦では12試合に出場して、打率.200(30-6)、2本塁打、4打点と、熾烈な外野手争いを勝ち抜くことができず、開幕をファームで迎えた。
「見返したい、やり返すという気持ちが強いので、はい」。3月15日の日本ハムとの二軍開幕戦から8試合連続安打と猛アピール。3月終了時点で打率.364、2本塁打、10打点と打ちまくった。4月5日終了時点で.350あった打率も徐々に下降し、4月19日ヤクルト二軍戦終了時点で打率.257まで下がった。
「自分にハマること、何かいい形で見付かればなと思ってやっていました」と、4月29日の巨人二軍戦では、バットを構えた時に投手方向にバットを向けて構えたり、5月3日のヤクルト二軍戦では3打席目まで、バットを寝かせた構えなど試行錯誤。
「本来の自分ではまだないかなと思います」と話しながらも、5月5日の西武二軍戦、0-2の5回無死走者なしの第2打席、糸川亮太が1ストライクから投じた2球目の129キロスライダーをレフトスタンドへの一発、5月11日のDeNA二軍戦、4-0の3回二死走者なしの第2打席、森唯斗が投じた初球のツーシームを打った瞬間のレフトスタンドへの本塁打は素晴らしかった。
「あれ(糸川からの本塁打)は振ったら引っかかったくらいで、森さんから打ったのは結構、完璧で良かったかなと思います」。
状態が上がらない中でも、森から本塁打を放った5月11日のDeNA二軍戦は3安打、続く5月13日のくふうハヤテ戦では2試合連続本塁打を含む2安打7打点の大暴れ。
満を持して5月14日に今季初昇格。5月22日のオリックス戦で今季初安打を放ったが、この日以降出場がなく、ベンチを温める日々が続いた。それでも、久しぶりの出場となった5月31日の日本ハム戦で「繋いだチャンスで打つことができて良かったです。嬉しいです!」と今季初打点となる2点適時打を放ち、少ないチャンスでアピールした。
5月22日のオリックス戦から3試合連続安打を放っていたが、6月4日に一軍登録抹消。ファームではタイミングの取り方を変えたり、白黒バットで打ったり、7月11日の楽天二軍戦では、0-1の7回二死走者なしの第4打席、中込陽翔が3ボール2ストライクから投じた6球目の126キロスライダー、レフトスタンドに打った瞬間の本塁打は白木のトルピードバットだった。
ファームでは「常に一軍にいると思って、チャンスで回ってくることが多かったので、そこを意識してやっていました」と、7月29日のオイシックス戦から3試合連続本塁打、その間9打点を挙げた。7月30日のオイシックス戦、0-0の初回一死一、二塁の第1打席、安城健汰が3ボール1ストライクからの5球目のストレートをレフトスタンド上段に打った瞬間にそれとわかる3ランは非常に良かった。山口本人も「安城投手から打ったのは良かったです」と納得の一発。
山口は降格後、ファームでの打率こそ.240(100-24)だったが、6本塁打、31打点の成績を残し8月5日に一軍再昇格を果たした。同日のソフトバンク戦(ZOZOマリン)、『7番・レフト』でスタメン出場。「今日1日に懸けてきたので、1打席目からチャンスで打つことができて良かった」と、0-0の2回無死一、三塁の第1打席、先発・前田悠伍が1ボールから投じた2球目のチェンジアップを打った瞬間にそれとわかる、レフトスタンドへ豪快な第1号3ラン。
5-1の6回無死三塁の第3打席、「打った瞬間どこに飛んだかわからなかったですが、良い所に飛んでくれて良かったです」と、津森宥紀が2ボール2ストライクから投じた5球目の150キロストレートを詰まりながらもライト前に適時打。さらに6-3の8回無死一塁の第4打席、左の宮﨑颯が2ボール2ストライクから投じた5球目の148キロストレートをレフト前に弾き返し、猛打賞を達成した。
翌6日のソフトバンク戦も『7番・レフト』でスタメン出場し、0-9の6回二死一塁の第3打席、「甘く来た球をしっかり仕留めることができて良かった」と、大津亮介が2ボール2ストライクから投じたシンカーを左中間スタンド中段に突き刺す2試合連続本塁打。山口はZOZOマリンスタジアムで2試合連続本塁打を放ち、「いい感じに来ていると思いますね」と好感触。
8月19日からの楽天3連戦の山口は、すごかった。『7番・指名打者』で出場した19日の楽天戦、0-2の2回無死二塁の第1打席、「25歳、1本目を打つことができて良かったです」と、岸孝之が1ボール2ストライクから投じた4球目の143キロストレートを滞空時間の長いバックスクリーン右に“山口らしい”打球の第3号2ラン。
今季初めて4番の打順で出場した翌20日の楽天戦、「1、2打席目打てなくてチャンス潰していたのでより一層集中して、最高の結果になって良かったです」と、2-2の7回二死二、三塁の第4打席、西垣雅矢が2ボール2ストライクから投じた6球目の143キロカットボールをレフトラグーン席に決勝の第4号3ラン。
21日の楽天戦は、マリーンズファンをワクワクさせた。0-0の初回二死三塁の第1打席、「しっかり捉えることができて良かったです」と、瀧中瞭太が1ストライクから投じた2球目の145キロストレートをレフトスタンド中段に自身初となる3試合連続本塁打を放つと、2-1の4回無死一塁の第2打席、瀧中が1ボール1ストライクから3球目の134キロフォークを左中間スタンドに放り込む第6号2ラン。
勢いの止まらない山口は、8-1の4回二死一、三塁の第3打席、柴田大地が2ストライクから投じた3球目の148キロストレートをレフトスタンドへ第7号2ラン。これが山口にとって22年9月22日のオリックス戦以来となる自身2度目の1試合3本塁打となった。
山口の課題はこれまでも、“継続”できるかどうかがカギだった。栗原健太打撃コーチも「クイックとかが早いピッチャーに対してのタイミングですかね。少し課題があるので、本人も自覚していると思うんですけど、そこがしっかり対応できるようになってくると、もっともっと確実よく打てると思います」と課題点を口にしていた。
結局、この本塁打を最後にホームランがなく、今季は8月の1ヶ月で打った7本塁打だった。 シーズン通してホームランを打ち続けるために必要なことについて、山口は「気持ちの面とかも大事になってくるのかなと思います。打ってる時はみんなそうだと思うんですけど、打ってる時は打てるんじゃないかと思うので、どこかで力みがあったり、どこかでやらなきゃいけないところを考えてしまう時はなかなかいい結果が出ないと思うので、いかに冷静に打席に立てるかが大事になってくるかと思いますし、あとは練習するだけかなと思います」と話した。
期待の長距離砲と言われて5年近くが経つ。来季こそ、本物の右の長距離砲として、打線を引っ張っていきたい。
取材・文=岩下雄太