ロッテ・金子誠戦略コーチに聞いた攻撃の裏側 足を使った攻撃、代走・和田、7番・髙部の意図…

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2024.10.20(日) 10:09

小技練習の時に話しあうロッテ・金子コーチと和田康士朗[撮影=岩下雄太]

◆ ファーストストライクの対応

 ロッテは今季71勝66敗36分の3位で、2年連続のAクラス入りを果たした。その中で打線はリーグ2位のチーム打率.248、429四球、リーグ3位の493得点、75本塁打、リーグ5位の64盗塁だった。今季の攻撃の戦略について金子誠戦略コーチに聞いた。

 ロッテの攻撃といえば、井口資仁前監督時代は投手陣に球数を投げさせ四球を選び、犠打、“1つ先の塁を狙った”走塁で得点を奪うことが多かった。吉井理人監督が就任してからは早いカウントから積極的に攻めた攻撃が目立つ。金子コーチは6月2日の取材で「そもそも早いカウントで打つというのは、バッターの鉄則じゃないですか。あとは数年長打力がない。長打力は結局、しっかり早いカウントからスイングできているのかというのが傾向としてあるから、そこは意識してやりましょうと。爆発的に上がるわけではないけど、投高打低の時代だし、癖をつけていかないといけない」と説明していたが、シーズン終盤は9月11日のオリックス戦、9イニングで203球を投げさせ、打者別で見てもソトが9月14日の西武戦で5打席で30球、藤岡裕大が9月26日のオリックス戦で5打席で30球、中村奨吾が9月28日の西武戦で5打席で34球投げさせたりするなど、打者によって相手投手に球数を投げさせていたり、投げさせていなかったりという印象を受けた。

 金子コーチは「どうでしょうね、アナリストさんとバッティングコーチのアレなんで」としながらも、「このチームの数年来のOPSの低さというのは数値化するまでもなく、OPSが高い打者というのは第1ストライクをしっかり捉えている。第1ストライクは絶対に甘いじゃない。いかに自分のスイングを強くできるかというのが数字を上げる意味では一番大事なんだけど、変な話スイング力のない人間が早く打っていったって数字は上がらない。そこへの勇気がなかったので、オープン戦、練習試合から口酸っぱく。積極性とは違うんですよね。第1ストライクに反応できる準備というのをシーズン定期的にやっていたはず」と説明した。

 「球数が多いというのは、ソフトバンクの近藤を見てもそうだけど、結局スイングしているけど、難しいボールはファウルになるようにカウントが出来上がる、甘いボールを捉えにいく、レベルの高いバッターは意識しているというよりも自然に起こること。甘いボールなのに球数増やしているのは、これまた違う話。振って3ボール2ストライクのカウントができたのか、見逃して3ボール2ストライクのカウントができたのかというので全く変わってくる。選手それぞれ課題を見つめ直さなきゃいけないのかなと思いますけどね」。


◆ 足を使った攻撃

 球数もそうだが、9月に入ってからロッテ本来の足を使った攻撃が増えた。その象徴的だった試合が、9月14日の西武戦。0-0の初回先発・羽田慎之介に対し、先頭の岡大海が四球で出塁すると、続く藤岡裕大が1ボール2ストライクからのスライダーをセンター前に弾き返し、スタートを切っていた一塁走者・岡が三塁を陥れる。3番・ポランコの二塁併殺の間に三塁走者の岡が生還し、この1点を守り切り1-0で勝利した。

 金子コーチは「多分ね、(足を使った攻撃が)増えているというよりも誰が塁に出て、誰がピッチャーで誰がバッテリーでというのの状況が揃ったんだと思う」と話す。

「それは常に狙っているので、盗塁は数やっても失敗したら流れが変わるし、大量点が期待できるチームではないと思うので、あんまり冒険はね。シーズンそれをしなきゃいけないんだろうなという時期はあったの。冒険すると取り返しがつかなくこともあるから、数10試合勝てなくなるというのもある。そこら辺は僕は、マイナス思考の人間なので」と、チームとしての盗塁機会が少ない理由を語った。

「ただあそこは条件が揃った。初回から岡、藤岡のコンビがこのタイミングというのが。思い返すと、もっと早く動けたよなとか思うこともあるんです。1-0で勝ったというのは、結局ピッチャー様様ですけどね」と、9月14日の西武戦で仕掛けた場面について話した。


◆ 代走・和田

 代走・和田康士朗の起用法も気になった。今季は11度の盗塁機会で全て成功し、牽制アウトも1度もなかった。和田は「牽制死、盗塁死がゼロだったので、それは目標に掲げていた。数は多ければ多いほど良いですけど、その分走ったらアウトもついてくる。代走で行って一番ダメなのはアウトになることなので、今年は盗塁死がなかったのは良かったかなと思います」と振り返った。

 和田は主に試合終盤の“代走のスペシャリスト”として起用されるが、盗塁で1つ先の塁を狙う場面が少なく、使われ方を見ると、チームとしてどういうことを求めていたのだろうかーー。

 金子コーチは「相手のプレッシャーともちろん盗塁も11。ファイターズの五十幡みたいに失敗して次というのが必要なのかもしれないけど、そこも質を求めちゃったのかな。終盤の和田を活かせるケースがあんまりなかった」とし、「終盤になるほど出塁もなかったしね。和田をもっと早く出してもいいのかなと思ったのが春先。6回くらいから出していたよね」と、5月4日の楽天戦では0-0の6回無死二、三塁で二塁走者・角中勝也の代走で和田が出場している。

 「そこは誰が出ていて、この後、試合がどういう展開になった時という兼ね合いもあったと思う。ソト、ポランコの外国人2人がいて、外国人の時は動けないから。和田、和田と頭にいつもあるんだけど、競っているともう1回(ソト、ポランコの)打席が回ってくるんだよなというのが時々あって、よくよく考えるともう1回(ソト、ポランコの)打席が回ってくるまでにチャンスは来ないよなと思ったり、そういう時は早く動いたりしましたけど、そもそも今、マリーンズに対してのピッチャーとキャッチャーの抑止力が上がっているからね。そこにいくにはギャンブル的な要素は必要かなと思っていますけど」と、切り札を起用するにも他の選手との兼ね合いを含め、チームとして最善の方法を常にベンチで考えていた。


◆ 7番・髙部の意図

 打順では今季井口前監督時代には1番や2番を打っていた髙部瑛斗が、7番で起用されることが多かった。髙部本人はシーズン中、打順について「僕がやることは変わらない。そこは変えずに自分のできることをと思ってやっています」と話していた。

 ポランコ、ソトというポイントゲッターの後に、さらに髙部が還すことで大量得点に繋がり、ランナーがいない場面で髙部からイニングがスタートすれば、髙部が1番の役割を果たし、チャンスで1番・岡に回すことができ、髙部と岡の打順を離したようにも見える。

 金子コーチは「それもあるし、本当は9番もいいかなと。岡、荻野というのが意外と1番の方が出塁が高かったので、そういうのもあったと思います」と岡は1番での出塁率.392、荻野は.305だった。「あとは藤岡と両外国人の兼ね合いもありましたし。7番に髙部をおいた方が、結構つながっていましたね」と髙部は21試合に7番で出場したが、6月15日の中日戦でチームは10得点を挙げ、『7番・中堅』で出場した髙部も4打数3安打2打点の活躍を見せた。

 「我々の印象もあったので、髙部は1球、2球で終わっちゃうバッターだからね。どの打順がいいのか、前後は誰がいいのかと結構考えたんだけど、今年はそこ(7番)だったというところです」と教えてくれた。


◆ 進塁打

 今季の攻撃で言うと、チーム打撃をしっかりとする中村奨吾や田村龍弘は進塁打を打つことが多いが、状況によって今季はレフトへ引っ張ってチャンスを広げる場面もあったように見える。

 そこについて金子コーチは「右方向に打って欲しい時は右方向のサインを出します」とキッパリ。「その中でランナー二塁でも、ここからバッター3人で勝負で自由に打っていいよ、ヒットを打ってというところでも彼らは右方向に打ってくれた」と感謝した。

 「三遊間が空いているので、三遊間打ってというのもあったし、そういう意味でノーアウト二塁でノーサイン、ランナー二塁で進塁打、ランナー二塁でバントというのは、はっきりやってたけど、ノーサインでも右方向にフライ打ったり、考えながらやれる選手だと思っていたので。あえて縛るならサインとして縛る、そうじゃない時はご自由にと(笑)」と、走者を進めて欲しいときは明確に指示を出していたようだ。

 ファーストストライクから打っていくこと、代走・和田、7番・髙部、チームの盗塁が少なかったことなどにも明確な狙いがあったのだ。今季の反省を踏まえ、来季は今以上に相手が嫌がる攻撃で得点力を上げて欲しいところだ。

取材・文=岩下雄太

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