【ソフトバンク】新担当が見た小久保裕紀監督 科学の力で統率する巨大組織と異なる人間臭さ 

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2024.4.16(火) 05:00

ソフトバンク・小久保裕紀監督

 ソフトバンクが絶好調だ。パ・リーグ5チームとの対戦を終えて2位・ロッテに2・5ゲーム差をつける首位。幸先の良いスタートを切った小久保裕紀新監督(52)は、巨大組織を科学の力で統率する親会社と球団にあって、果たして“ソフトバンク的”な人物なのか。担当1年目の田中昌宏記者が迫った。

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 まずは親会社の話になるが、ソフトバンクグループのスケールがデカすぎる。昨年10~12月期の純利益は9500億円で、同年4~9月期は1兆4000億円の純損益。ラーメン替え玉の100円すら惜しい記者には正直ピンと来ない話だが、グループの金庫番・最高財務責任者(CFO)を務める後藤芳光球団社長に「記者の皆さんは同志だ」なんておだてられると、自分まで金持ちになった気分になる。

 球団もスケールがデカい。小久保監督は自軍を「巨大組織」と呼ぶ。65人もの育成選手を抱える4軍体制。筑後市のファーム施設も巨大なら、球団職員数も某球団の10倍近い約500人と、どれもこれもケタ違いだ。潤沢な資金をベースに、指導も「最先端テクノロジーを取り入れて」行っている。

 その文脈で、指揮官に「AGIって分かるか?」と問われたことがある。最近、頭頂部の薄毛(AGA)が気になってきまして…なんて返しても無視されそうなので、黙って首を振った。汎用人工知能と訳される、要は(記者のボキャブラリーで表現すると)“ものすごいAI”のことらしい。

 グループの総帥・孫正義オーナーは、AIが人類の叡智(えいち)を追い抜く時代=AGIの時代が「10年以内に来る」と予言しているんだとか。3月の本社激励会でも「スポーツもこれからは科学とそれをバックアップするAIのインテリジェンス。この2つが近代化を促してくれると思う」と、報道陣に話していた。

 同じ言葉を繰り返すが、正直ピンと来ない。だからグループの一翼を担う小久保監督も、啓蒙(けいもう)思想的な科学万能主義の人物だろうと思って身構えていた。だが、いい意味で裏切られた。

 「麻雀? やめたよ。監督やってる間は、やらんやろな」。何と願掛けだ。指揮官を科学的=ソフトバンク的でない迷信に駆り立てるものって何? 「俺が膝のじん帯を切った時、母が大好きなお茶を絶ったと、後から知ったんや」と遠くを見つめた。現役時代の03年。シーズンを棒に振る大けがに見舞われた愛息の再起を、母・利子さん(17年死去)は神仏に願い立てたのだ。

 「そんなん聞くとね…。だから願掛けじゃないけど、何かを絶つことは、昔からよくやってる。ホークスに帰ってきた1年目(07年)に酒をやめたりね。CSでロッテに負けたその夜に、浴びるほど飲んだよ。もう、めっちゃ効いた。でも店でひっくり返ってるカズミ(斉藤和巳・現4軍監督)を見て『理性を失うまで飲んだらアカンな』と思て…」

 科学やAIへの準拠と、それらを超越した母への思慕、人間臭さ。バランスが取れたリーダーとして、小久保監督はチームを4年ぶりの栄冠へ向けて活性化している。(田中 昌宏)

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