ロッテ・藤原恭大「課題である体力もそうですけど、まだまだ技術不足も感じました」来季は「圧倒的な数字を残さないと」

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2023.11.4(土) 10:02

ロッテ・藤原恭大[撮影=岩下雄太]

◆ 好スタートを切った春先

 「5年目は一つの区切りだと思うので、スタメンを勝ち取らないといけないと思いますし、後もないのでしっかり自分のやるべきことをやりたいと思います」。

 ロッテ・藤原恭大はプロ5年目を迎えるにあたり、なるべく無駄な動きをなくすためにコンパクトなバッティングフォームに変え、バットの長さも1センチ長くして86センチのバットに変更し、オフの自主トレ、春季キャンプを過ごした。

 2月の練習試合では打率.342(38-13)、2本塁打、9打点と打ち、3月3日と4日にバンテリンドームナゴヤで開催された『カーネクスト侍ジャパンシリーズ2023名古屋』の侍ジャパンサポートメンバーで代表にも選出。オープン戦の打率は.188だったが、開幕一軍を掴むと、ソフトバンクとの開幕戦に『9番・中堅』で先発出場し第3打席で今季初安打、4月1日のソフトバンク戦から4月5日の日本ハム戦にかけて3試合連続複数安打するなど、一時打率、安打数でリーグトップに立った。

 4月5日の日本ハム戦では0-1の7回一死一塁の第3打席、メネズに対して1ボール1ストライクから9球連続ファウルで粘り、12球目の外寄りの126キロスライダーをピッチャーのグラブを弾く内野安打で出塁すれば、4月16日のオリックス戦では、0-0の3回一死一、三塁の第2打席、宮城大弥に対して3ボール2ストライクから3球連続ファウルで粘って10球目のインコース145キロストレートをレフトへ弾き返す適時打。春先は追い込まれてからも簡単に打ち取られずファウルしたり、四球を選んだりと打席内での粘り強さが出ていた。

 4月当時藤原は「(腕が)離れずにコンパクトに出せているので、ボールに対していい形で入れているのかなと思います」と、追い込まれてから粘りの打撃ができている理由を説明。

 3・4月、打率.298、2本塁打、11打点の成績で終えると、5月も5日のソフトバンク戦で1試合5三振を喫したが、この試合を除き10試合全てで安打を放った。5月16日のオリックス戦では第1打席が遊安、第2打席が四球、第3打席が中安、第4打席が投犠打、第5打席が捕犠打と全打席内容のある結果だったが、翌日に故障により一軍登録抹消をされた。

 チームにとっても、藤原本人にとっても痛い離脱となった。「とりあえず早く戻ろうと、そこだけでしたね」。気持ちを切り替え、リハビリに励んだ。この時期に「もう1回ルーティンというか、内田さんもいたので喋りながらやっていました」と、自身の打撃を見つめ直すいい時間になった。

 6月8日の楽天二軍戦で実戦復帰すると、翌9日のDeNA二軍戦では小園健太からライトへ先頭打者本塁打を放ち、同月11日に一軍復帰。同日の広島戦に『9番・センター』で先発出場し、復帰1打席目となった0-0の3回に先発・黒原拓未が1ストライクから投じた2球目のカットボールをセンター前に弾き返し復帰後初安打をマークした。

 「状態も悪くなかったですし、復帰してバッティングに不安があったんですけど、なんとか1本出てそこは良かったと思います」。

 故障前と変わらずコンスタントに安打を放ち、故障前の5月6日ソフトバンク戦から故障復帰後の6月17日のDeNA戦にかけて12試合連続安打。

 「この5年間で、好不調の波が少なく一番いいかなと思いますし、交流戦最後の試合でタコったんですけど、基本1日1本出ているのでいいのかなと思います」。


◆ 夏場の低迷

 故障から復帰後も“1試合に1安打”安打を放ち、今季こそレギュラーを掴むかと思われた。しかし、交流戦明けはなかなか思うようにいかなかった。7月20日に特例2023で一軍登録を抹消、8月8日に一軍昇格してからも、開幕直後のような打撃を見せることができずにいた。

 8月29日の取材では自身の状態について「よくはないですけど、何とか1本毎日出せるようにやっています」と話し、キャンプの時から話していたコンパクトな打撃フォームについても「そうですね、そこは少しずつできている感じはあるんですけど、振る力であったり最初に比べてだいぶなくなってきているので、もっともっと1年間通して振れる力をつけていけたらいいなと思います」と課題点を口にした。

 夏場以降は「ピッチャーが良いので、そこは難しいので工夫しながらですね」と、追い込まれてからすり足で打ったり、バットを短く持ったりして対応することもあった。

 一軍の試合に出場し続ける中で、なぜ安打が打てていて、なぜ打てていないのかというのを自身の中で理解しながら打席に立てているのだろうかーー。

 「ひとつは真っ直ぐにしっかり入っていけること、打てない時は変化球とかいらないことが頭に入って、初球から振りたいのに振りにいけなかったりということもあるので、なるべく考え方をシンプルに毎回持っていけたらいいなと思います」。

 確かに一軍出始めの頃は初球から積極的にスイングしていたが、調子が落ちてきた時期の藤原を見ていると、初球を見逃したり、積極性が失われているように感じる打席もあった。

 「基本はまっすぐを打ちにいっているところなんですけど、それができない今があるので、毎日頭をリセットして入れるようにしています」。

 9月13日の楽天戦の試合前練習では最終組で打撃練習を行い、約30分近く村田修一打撃コーチが投げる緩い球を打ち込み、時折アドバイスをもらっていた。9月15日の西武二軍戦ではバントした第4打席以外はヒッチ気味のフォームで打って2安打し、16日の西武戦ではヒッチしていないフォームで、18日の西武戦では肘の位置を下げたフォーム、20日のオリックス戦は普段の打撃フォームに近い形で打った。

 ヒッチしたフォームなど色々と試していた意図について藤原は「前に突っ込まないように、ヒッチなどをやったりしていました。それ(ヒッチ)はやめて、また変えてやっています」と9月25日の試合前練習後の取材で明かした。

 その日にあった形で打っているのだろうかーー。「その日にあったものではなくて、今はしっくりきているのでそこを継続してやっています」。色々なフォームで打っている中で、打撃練習では「歩幅が大きくならないように」ということを考えて9月終盤は打っていた。

◆ 試行錯誤の中で光

 試行錯誤をしていた中で、10月2日の西武戦から白木のバットに変更。「いろんな人のバットを10本くらい使って石川さんのバットが1番良かった。石川さんのバットを自分の形にしてうまくハマりました」と、石川のバットをモデルに現在は85センチ、880グラムの白木のバットを使用している。

 10月6日のオリックス戦では2本の適時打を含む3安打2打点、打ち取られた打球も強い打球が増え、本人も「しっかり自分のスイングで打てているかなと思います」と手応えを掴んだ。そして、打席での構え、打席内での雰囲気も春先の打っている頃のように戻ってきた。「状態としては非常に良いですね」と、クライマックス・シリーズに突入した。

 クライマックス・シリーズでもオリックスとのCSファイナルステージ第4戦、0-3の8回無死走者なしの第3打席、セットアッパー・山﨑颯一郎が2ボール1ストライクから投じた4球目の153キロストレートをライトスタンドに放り込んだ。

 「バッティングは自分の感覚というか、打球も最近上がってきて、今シーズンで今一番いいかなという状態、来年につながる練習、そういうのをしていければ来年もっと打てるのかなと思います」と、良い形でシーズンを終えた。

◆ 原点に立ち返る

 ただプロ5年目の今季、プロ入り後初めて100試合(103試合)以上に出場したが、打率.238、3本塁打、21打点、5盗塁。決して満足のいく数字ではない。藤原は「振り込みが足りなかったかなというか、調子が良い時もゴロヒット、当てるヒットが多かった。バッティング練習もそうでしたけどライナー、ホームラン、A打球(捉えた痛烈な当たり)が少なかった。そこを追い求めていかないと1年間戦えない。圧倒的な数字を残せないのかなと感じました」と振り返る。

 ZOZOマリンスタジアムで行われた秋季練習では、シーズン中の試合前の打撃練習では試合に備えて、逆方向に打ったり、すり足やノーステップで打ったり、体の構造を確認しながら打っていたが、11月1日の打撃練習ではマシンに対してひたすら引っ張りの打球。

 「今日は左カーブ(のマシン)だったので、実戦をイメージして左のカウントどりのカーブ、スライダーを待って、しっかり打てるようにという意識と、最近ずっとやっているんですけど角度、最低ライナー、そこをイメージしながらやっていました」。2日以降も引っ張った打球を中心に打っている。

 この秋のテーマについては「フェニックスもそうですけど、今季はゴロのヒット、間を抜けるヒットが多かった。ゴロのヒットというよりかは、やっぱり長打。ライナーから上、ホームランからライナーの間、そこのゾーンを目指して今をやっています」と教えてくれた。

 左中間、右中間に二塁打、三塁打を多く打っていくイメージなのだろうかーー。

 「そうですね、二塁打、三塁打、ホームランそこです」。

 これまでプロ入りから何度も口にしてきたホームランへのこだわりについても、「今年は正直あんまり(ホームランを)意識していなかったんですけど、シーズン終盤になってより、やっぱり野球はホームランのスポーツだと改めて感じさせられましたし、ロッテの現状外野を見ると長打を打たないと出られないところだと思うので、率もそうですけど、長打にこだわってやっていかないといけないなと思います」とキッパリ。

 11月16日〜19日に開催されるカーネクストアジアプロ野球チャンピオンシップ2023の日本代表に選出され、侍ジャパンでも10月以降の良い流れを継続してほしいところだ。


◆ 来季こそ!

 藤原も来季でプロ6年目。「ずっと課題である体力もそうですけど、まだまだ技術不足も感じました」と、これまで短期間で活躍する場面を何度も見てきたが、好不調の波が大きくシーズン通して安定した打撃を披露できていない。

 「やっぱり圧倒的な数字を残さないと出られない。もう一度このオフ課題を持ってやっていけたらいいなと思っています」。マリーンズファンは不動のレギュラーとして、ZOZOマリンスタジアム、一軍の舞台で常に躍動することを待っている。来季こそポジションを掴みたい。

取材・文=岩下雄太

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