巨人からロッテにトレード移籍となった石川慎吾(C) Kyodo News

◆ 石川慎吾を獲得

　ロッテは3日、小沼健太投手と巨人・石川慎吾外野手の交換トレード成立を発表した。

　石川は今季一軍出場はないが、ファームで47試合に出場して打率.358、4本塁打、26打点の成績を残す。ロッテの外野陣はレギュラーとして期待された荻野貴司、昨季盗塁王の髙部瑛斗が故障により離脱しており、岡大海、藤原恭大、山口航輝、角中勝也、和田康士朗、平沢大河らに加え、内野手登録の小川龍成が外野に挑戦。さらに指名打者で出場することの多いポランコも、外野で先発出場することもある。

　個々で見れば良い働きを見せているが、現状では相手投手との相性、左投手、右投手の兼ね合い、選手の好不調によって調子の良い選手が起用されている印象で、絶対的なレギュラーと呼べる選手がいない。本来であれば、かなり層の厚い外野陣になっているところだったが、荻野、髙部の離脱は予想以上に痛く、チームのウィークポイントになりつつあった。ファームで打率.358をマークする石川が、新天地となるロッテでレギュラーを掴むチャンスが十分にある。逆に言えば、既存の選手たちはチャンスが今までに比べて減る可能性があるということだ。

▼ ロッテ外野での出場試合数
56試合　岡大海
47試合　藤原恭大
41試合　平沢大河
34試合　山口航輝
30試合　和田康士朗
22試合　角中勝也
10試合 ポランコ
8試合　小川龍成
6試合　荻野貴司
3試合　菅野剛士
2試合 山本大斗

◆ 得意の的確補強

　近年はシーズン途中のトレードが、“的確補強”に繋がるケースが多い。

　20年は巨人からトレードで澤村拓一を獲得し、9月8日の日本ハム戦（ZOZOマリンスタジアム）で3－2の6回から登板して渡邉諒（現阪神）、大田泰示（現DeNA）、ビヤヌエバを圧巻の3者連続三振のデビュー。主に勝ち試合の8回を担当し、22試合に登板して0勝2敗13ホールド1セーブ、防御率1.71の成績を残して、チームの4年ぶりCS進出に大きく貢献した。

21年もシーズン途中に加藤匠馬（現中日）、国吉佑樹がトレードで加入し、加藤は東京五輪明けの後半戦、小島和哉の9月11日楽天戦でのプロ初の完投勝利、続く9月19日の日本ハム戦でプロ初完封勝利、10月3日の楽天戦で今季2度目の完封勝利と、3完投とも先発マスクを被り、佐々木朗希が先発した試合でも21年は6試合・37イニングを投げて、イニング数を上回る44奪三振、2勝0敗、防御率1.22。シーズン途中加入も先発投手陣を好リードした。

　国吉も東京五輪明けから勝ち試合の7回を担当し、守護神・益田直也が連投中のときには勝ち試合の9回を任され、佐々木千隼が連投中のときには8回で投げることもあった。国吉は移籍後25試合に登板したが、17ホールド、2セーブと、25試合中19試合でホールド、セーブがついた。加藤、国吉共に2年連続CS進出の立役者となった。

　昨年は坂本光士郎がシーズン途中にヤクルトからトレードで加入。トレードが発表された翌日の7月30日に一軍登録され、同日のオリックス戦でデビュー。4－6の8回に登板し1イニングを三者凡退に抑える好スタートを切ると、8月2日の楽天戦では当時勝ちパターンを務めていた東條大樹が新型コロナウイルス陽性判定で一軍登録抹消中、ゲレーロもベンチ外だったこともあり、6－3の7回に登板し移籍後初ホールドをマークした。

　この勢いで坂本も、前年（21年）の国吉佑樹、20年の澤村拓一のように途中加入から“勝ちパターン”に食い込んでいくかと思われたが、翌3日に新型コロナウイルス陽性判定を受け離脱。7試合・8回2/3を投げて、1ホールド、6奪三振、防御率4.15という成績だったが、離脱がなければ勝ちパターンに食い込む可能性があったはずだ。

　さらにシーズン途中のトレードではないが、今季も開幕前にトレードで日本ハムから加入した西村天裕が開幕から21試合連続無失点に抑え、ここまで25試合に登板して、8ホールド、防御率0.72と抜群の安定感を誇る。西村は5月に行った取材で、「吉井さんは僕のことを知っていますが、新しいチームに来て、新しい感じで見てくれているので、ノビノビというかどんどんいけているのではないかなと思います」と話すなど、環境が新しくなったこと、今季から取り組む“アウトの取り方”など、考え方の変化が西村にプラスに働いている。

　近年だけでもシーズン途中に加入した選手たちが、ロッテで活躍するケースが多い。石川慎吾には、1974年以来の勝率1位でのリーグ優勝を目指すチームに勢いをもたらす存在になることを期待したい。

▼ 石川慎吾プロフィール
生年月日：1993年4月27日（30歳）
出身地：大阪府
投/打：右/右
ポジション：外野手
身長/体重：178センチ/80キロ
血液型：O型
球歴：東大阪大柏原高―日本ハム（12～16年）－巨人（17年～23年途中）－ロッテ（23年途中〜）

取材・文＝岩下雄太