「過去の自分の成績、技術を超えたい」。ロッテ・種市篤暉の2023年が幕を開ける

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2023.4.1(土) 07:25

ロッテ・種市篤暉(撮影=岩下雄太)

◆ 進化した姿を魅せるぞ!

 「過去の自分の成績、技術を超えたい。なので昔みたいな感覚に戻りたい、19年、20年みたいに戻りたいなというのは思っていないです」。

 ロッテの種市篤暉は、トミー・ジョン手術前に活躍していた頃の自分に戻る考えは全くなく、“進化”した姿をマリーンズファンに魅せるつもりだ。

 プロ3年目の19年に「体力的にはきつかったですけど、個人的にはすごく楽しかったと思います」とチームトップタイの8勝をマークし、背番号を63から16に変更した20年は新型コロナウイルスが感染拡大の影響により開幕が6月19日にずれ込んだ。

 「コロナの期間があったので、開幕が遅くて、20年はすごい野球を考えていたと僕の中で思っている。その期間に野球に費やせたのがよかったのかなと僕の中で思っています」。

 開幕してから6月27日のオリックス戦では初回、中川圭太に先頭打者本塁打を許すも、0-1の初回二死走者なしで4番・ジョーンズへ1ボール2ストライクから投じた5球目以降、投球フォームを少し変えて投げるなど、7回を1失点にまとめる修正能力の高さを見せつけた。7月11日の西武戦後にリーグトップの奪三振数を記録し、同月25日の西武戦ではプロ入り初完封勝利を飾った。“エース不在”だったロッテ投手陣のなかで、“エースへの階段”を登っていたが、8月1日の楽天戦後に一軍登録を抹消された。「(手術を)やったほうがいいと言われていたんですけど、僕はすぐに決めました」と、迷うことなく、登録抹消されてから約1カ月後の同年9月14日に横浜市内の病院でトミー・ジョン手術を受けた。

 長いリハビリを経て、22年4月13日の巨人との二軍戦で実戦復帰。20年途中まで同じユニホームを着てプレーしていた香月一也にこの日最速となる152キロのストレートで見逃し三振に打ち取るなど、1イニングを15球、0被安打、1奪三振、無失点に抑える上々の復帰戦となった。

 5月20日のヤクルトとの二軍戦で復帰後初のイニングまたぎとなる2イニングを投げ、6月4日にZOZOマリンスタジアムで行われた日本海オセアンリーグ選抜チームとの練習試合で復帰後初先発を果たし4回を投げ1失点に抑えた。6月12日のDeNAとの二軍戦で復帰後はじめて5イニングを投げ、中6日で先発した6月19日ヤクルトとの二軍戦も5回・85球、1失点。

 6月19日登板後の取材で、一軍の打者に投げるために技術面、投球面で必要だと感じていることについて「まっすぐの強さとアベレージ。ここは今一番欲しいところなので、もっともっと精度を上げていきたいです」と課題点を口にした。

 種市といえば、ワクワクするような力強いストレートが武器だが、7月12日の日本ハムとの二軍戦、7月27日のヤクルトとの二軍戦など少し動くストレートを投げているように見えた。この時期、意図的にストレートを動かしていたのだろうかーー。

 「意図的ではないんですけど、なんだろう指を立てちゃう癖があるのでそれをやめたいなと思っているので、そこもちょっと前腕に力を入れないようにしています。末端にリラックスさせるような意識で投げています」と、今年2月に行われた石垣島春季キャンプ中に教えてくれた。

 結局、昨年は8月11日のソフトバンク戦で740日ぶりに一軍登板を果たしたが、一軍登板はこの1試合のみ。復帰後、一軍で大活躍とはいかなかったが、しっかりとファームで中6日でも投げられる姿を見せて2022年シーズンを終えた。


◆ 本格復帰を目指す2023年

 一軍復帰を本格的に目指す2023年。今季に向けて種市は、1月にアリゾナのドライブライン・ベースボールでトレーニングを積んだ。19年11月にもシアトルのドライブラインへ行き当時は動作解析でツーシームを取り入れたほうがいいのではないかと助言をもらっていたが、今回のアリゾナでのトレーニングでは「変化球を“たくさんこう握って、こう投げたほうがいいよ”というアドバイスをもらって、色々試しているところです。その中でフォークが一番よかったです」(石垣島春季キャンプ中取材)と明かした。

 アリゾナで自主トレを行った後は、3年ぶりに鴻江寿治トレーナーが主宰する自主トレに参加。3年前の20年は「投げているなかで、このフォームだったら良いとか、この感じとかだったら悪いとかはわかりました」と当時話していたが、今回も「考え方は一緒ですけど、教えてもらうことは変わったので、新鮮というか色々聞けてよかったです」と振り返った。

 石垣島春季キャンプでは「僕の中では野球のことだけを考えられている。動画とか見まくれているので、修正できている。その点については充実したキャンプになったと思います」と、24時間365日野球のことを考えられる種市らしく、野球漬けの日々を送った。

 「本島でも抑えられるように頑張りたい」と2月14日の沖縄遠征以降も、2月26日の西武戦で4回・9奪三振、侍ジャパンのサポートメンバーとして先発した3月7日のオリックスとの強化試合では「貴重な経験をさせてもらいありがとうございました」と、4回・48球、0被安打、無失点の好投。マリーンズに戻ってからも3月19日の西武戦は53球中38球がストレート中心の投球で3回無失点、開幕前最後の登板となった3月25日の中日戦は一転して序盤からスライダー、フォークといった変化球も多投して5回・6安打・1失点にまとめた。

 3月31日にロッテはシーズン開幕を迎え、ソフトバンクとの開幕戦に0-4と完封負けを喫した。チームの今季初勝利、そして自身の白星を目指し、種市が先発マウンドに上がる。今季初の公式戦のマウンドで、ワクワクするストレート、そして代名詞のフォークでバッタバッタと三振の山を築き、ホークス打線を圧倒するような投球を見せ、チームの嫌な流れを断ち切ってほしい。

取材・文=岩下雄太

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