ケガを乗り越え、パ・リーグで戦い抜いた15年間。美馬学の活躍を4つの映像で振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2025.9.30(火) 08:00

千葉ロッテマリーンズ・美馬学投手(写真は2024年)【写真:球団提供】
千葉ロッテマリーンズ・美馬学投手(写真は2024年)【写真:球団提供】

2013年には日本シリーズMVPに輝き、千葉ロッテでも2度の2桁勝利を記録

 千葉ロッテは9月9日、美馬学投手が今季限りで現役を引退することを発表した。美馬投手は2011年から9年間にわたって東北楽天でプレーし、2013年には日本シリーズでMVPに輝く活躍で、球団創設後初となるリーグ優勝と日本一に貢献。千葉ロッテに移籍後も2度の2桁勝利を記録し、在籍6年間で4度のAクラス入りを果たしたチームを先発として支えた。

 今回は、美馬投手が15年間のプロ生活で見せてきた投球の中から、とりわけ印象に残る4つの登板をピックアップ。優れた制球力を武器にパ・リーグの舞台で輝きを放った右腕の活躍ぶりについて、実際の映像と共に振り返っていきたい。(※成績は9月10日の試合終了時点)

クライマックスシリーズで見せた、値千金の完封勝利(2013年10月19日)

 勝てば球団史上初の日本シリーズ進出に王手がかかる試合で、美馬投手は先発のマウンドを託された。2回と3回に立て続けに2死1、2塁のピンチを迎えたものの、いずれのイニングでも粘りの投球で得点を許さず。2回裏にバッテリーを組んだ嶋基宏氏の適時打で2点を先制したことで、試合の行方は美馬投手の投球によって左右される状況となった。

 美馬投手はポストシーズン特有の重圧に気圧されることなく、4回以降は1度も得点圏に走者を進めない見事なピッチングを披露。9回の先頭打者を四球で出塁させた直後に、後続を併殺打に打ち取るなど、最後まで冷静なマウンドさばきを続け、虎の子の2点を最後まで守りきる完封勝利を達成。チームの日本シリーズ進出を大きく手繰り寄せる快投だった。

9回無死まで1人の走者も許さない、大記録目前まで迫る快投(2019年7月19日)

 美馬投手は立ち上がりから完璧な投球を見せ、同年の日本一に輝いた福岡ソフトバンク打線を相手に付け入る隙を与えず。一人の走者も許さないピッチングを続ける美馬投手の好投に打線も応え、5回裏に千賀滉大投手から4点を奪う猛攻を見せて試合の趨勢を決定づけた。

 美馬投手は援護点が入って以降も落ち着いた投球を続け、8回が終了した時点でパーフェクトピッチングを継続。大記録達成への期待も高まったが、9回無死から四球と安打を許して完全試合の偉業達成はならず。それでも後のメジャーリーガーである千賀投手に投げ勝ち、9回を投げ切って1失点完投勝利という素晴らしい投球でチームに勝利をもたらした。

ポストシーズン進出を大きく手繰り寄せるシーズン10勝目(2020年11月5日)

 2020年は全120試合制と短縮シーズンとなった影響もあり、クライマックスシリーズに進出できるのはリーグ上位2チームのみとなっていた。所属する千葉ロッテが埼玉西武と熾烈な2位争いを繰り広げており、1試合の敗戦が致命的となりかねない状況において、美馬投手は先発として同年のリーグ優勝を既に決めている福岡ソフトバンクの強力打線と相対した。

 美馬投手はこのシーズンに福岡ソフトバンク戦だけで5勝を挙げるなど相性の良さを発揮しており、この試合でも7.2回を投げて1失点(自責点0)と好投。打たせて取る投球を展開して3年ぶり2度目のシーズン2桁勝利を記録するとともに、この試合で規定投球回への到達も果たし、移籍1年目からチームのクライマックスシリーズ進出に大きく貢献してみせた。

打たせて取る投球の極致。奪三振0で6回1失点と好投し勝ち投手に(2022年9月22日)

 美馬投手はキャリア平均の奪三振率こそ6.44とやや控えめな数字だが、通算の与四球率は2.20と優秀で、高い制球力を活かした打たせて取る投球を展開してきた。2022年にリーグ連覇を果たしたオリックス打線に対して自らの持ち味を存分に発揮したこの試合は、そんな美馬投手のピッチングスタイルの極致と言えるものだ。

 6回を投げて6安打を喫しながらも与四球はわずか1個に抑え、打たせて取る投球を徹底。2回以降は得点を許さず。6回を投げ切って1失点の好投でシーズン9勝目を挙げ、三振を1つも奪わないという珍しい記録も達成。美馬投手はこの試合の白星によって10勝到達の可能性を残し、シーズン最終登板での白星によって2年ぶり3度目の2桁勝利を達成している。

故障に負けず39歳まで投げ続けたキャリアは、美馬投手が持つ不屈の精神の表れだ

 美馬投手は藤代高校、中央大学、東京ガスを経て大卒社会人でプロ入りし、現役生活を通じて幾度となくケガの影響で手術を受けてきた。ベテランの域に達してからも度重なる故障を乗り越え、39歳を迎える今シーズンまでパ・リーグの舞台で戦い続けてきた美馬投手のキャリアは、自身が持つ不屈の精神を体現するものだったと言えよう。

 9月30日の千葉ロッテ対東北楽天は、美馬投手の引退試合として開催される。並みいる強打者たちを相手に打たせて取る投球を展開してきた技巧派右腕が、古巣と相対する現役生活最後のマウンドに、ぜひ注目してみてはいかがだろうか。

文・望月遼太

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