
◆Preseason match: Seibu 1-0 Hanshin Tigers (11th, Belluna D)
若干の胸騒ぎを覚えていた。9回2死まで5投手で無安打リレーを継続。しかし、現役時代に9回2死からの安打を2度許すなど計3度の“ノーノー未遂”を経験している西武・西口文也監督(52)は「心の中でひょっとしたら打たれんじゃねえのかなって、思ったりしなくもなかったけど。打たれるならそこしかないっていう。ツーアウト取った時点でね」と思いがよぎったことを明かした。
予感は的中した。あと1人。虎党の大声援と息をのんで見守る西武ファン。オープン戦とは思えないほどボルテージは最高潮に達していた。ウィンゲンターが投じた直球は前川にはじき返され、打球は中堅方向へ。遊撃・滝沢が懸命に追いつき送球も、一塁手の足が塁から離れ判定はセーフ。スコアボードに初めて「H」ランプがともった。
指揮官が22年からの2軍監督時代を通じて初のリクエストをするも判定は覆らず。ベンチで控えめに天を仰いだ。右腕が後続を抑え1点を守り切り、新監督にとって記憶に残る本拠地での初陣勝利。「何も言うことはございません。ナイスゲームでした」と、晴れやかな笑顔だった。
“ノーノー男”でも西口監督の悲願は達成できなかった。ウィンゲンターはカブスに所属していた昨季、今永が先発し、継投ノーノーを達成した9月のパイレーツ戦で登板こそなかったがブルペンで快挙を見届けていた。米国での高校時代にも先発として「何度も達成した」と言うが、この日は縁がなかった。
収穫はあった。21歳左腕の菅井が5回無失点で開幕ローテ入りへアピール。昨季、救援防御率3・41で12球団中11位と苦しんだリリーフ陣も4人が「0」を重ねた。「守り勝つ野球はこれからも目指していきたい」と指揮官。快挙は逃したが西武が最下位からの逆襲へ準備を整えている。(大中 彩未)
◆西口監督の現役時代の“ノーヒットノーラン未遂”
▽02年8月26日 対ロッテ(西武D)
9回2死まで出した走者は7回の福浦への四球のみ。小坂のフライが中前安打となり、その後サブローにも右前安打を打たれ、被安打2で完封勝利。
▽05年5月13日 対巨人(インボイス)
9回2死まで2回の清原への死球のみ。清水に右翼席へ本塁打を許し、被安打1で完投勝利。
▽同8月27日 対楽天(インボイス)
9回終了まで完全試合も0―0のまま延長戦に突入。先頭の沖原に右前安打を打たれ、10回を被安打1の完封で16勝目を挙げた。