吉田輝は「北極星」―毎年印象深い、北海道日本ハム大渕スカウト部長の新人紹介の全容

Full-Count 石川加奈子

2018.12.6(木) 14:13

北海道日本ハムの新人選手たち※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)
北海道日本ハムの新人選手たち※写真提供:Full-Count(写真:石川加奈子)

思い入れがたっぷりこもった紹介、思わず選手を思わず「頑張って」と応援したくなる?

 11月23日に札幌市内のホテルでドラフト指名した8選手の新入団発表を行った北海道日本ハム。毎年取材していて印象に残るのは、大渕隆スカウト部長が行う選手紹介だ。思い入れがたっぷりこもった紹介を聞いていると、それぞれの選手がどんな野球人生を歩んできたのかが頭にはっきりと浮かんできて、思わず「頑張って」と応援したくなる。

 昨年はドラフト1位の清宮幸太郎内野手に背番号21を送った3つの理由が印象的だった。今年はドラフト1位の吉田輝星投手(金足農高)について「マウンド同様、夜空の中心となる北極星となって、北の大地で長く輝き続けることを期待して止みません」という詩的な表現が心に残った。

 北極星はいつも真北にあり、暗闇で方角がわからなくなった時、目印になる星。将来の大黒柱としての期待を例える比喩としてしっくり来ると同時に、新鮮な言葉だ。大渕スカウト部長に聞くと「(名前の一文字が)星だなと思っていたら、北極星が浮かんできたんです。中心になる星ですし」とひらめきがあったという。

 早大出身で元高校教師という異色の経歴を持つ大渕スカウト部長は、12年にメジャー挑戦を決意していた大谷翔平投手(エンゼルス)との交渉に臨み、北海道日本ハム入団を決意させた立役者の一人だ。

 選手をよく見て、よく話を聞いて、大きく育ててあげたいという熱い思いにあふれた大渕スカウト部長の選手紹介。長くなるが、今年の新人8人分を改めて紹介したい。

◯ドラフト1位 吉田輝星投手
「この夏、日本中を沸かせた新しい星です。活躍の様子は皆さんご存知だと思います。聞けば、昨年夏の敗戦後、悔しさをバネにとにかく走り込んだそうです。厳しい冬につくられたその下半身は、これまで見たことのないような太く強靭なものになり、この夏理想的なフォームを完成させました。そのフォームからさらに生まれたのは、ベース上で浮き上がる独自の球質。そして、10試合連続完投を含む1517球を放りきるスタミナ。さらには高校生とは思えないゲーム管理力です。夏に生まれたこの星は、この冬北海道にやって来ました。マウンド同様、夜空の中心となる北極星となって、北の大地で長く輝き続けることを期待して止みません。頑張ってください」

生田目は「ボリュームある直球」、万波は「底知れぬポテンシャル、超がつく大器」

◯ドラフト2位 野村佑希内野手
「185セント、90キロという素晴らしい体格。ボールをバットに乗せる技術は生まれ持った天性です。貴重な右の大型スラッガーとして大いに期待しています。感心するのはその戦う姿勢です。この夏はエースで4番としてチームをけん引、孤軍奮闘。甲子園出場に導きました。県予選では連日の猛暑と苦しい試合展開の中、マウンド上で一人黙々と戦い抜く姿は、プロでの活躍を予感させてくれます。春からはサードという不慣れなポジションに挑戦してもらいます。これまで多くのスラッガーたちが獲得できなかった難しいポジションですが、この壁を乗り越え、2023年新球場での『4番・サード野村』というアナウンスを我々は想像しています。頑張ってください」

◯ドラフト3位 生田目翼投手
「150キロを超えるボリュームある直球は、プロでも力で抑え込める能力を持ち合わせ、即戦力として期待する選手です。大きく良く曲がるスライダーも打者に意識させる武器となり、一本調子だった大学時代に比べ、社会人ではゲームを進める力がより一層加わったように思います。先輩である武田久投手からもそのコツを教わったことが功を奏したかもしれません。ご覧の通り堂々とした体格と態度、言い換えればふてぶてしい姿はとても頼りになります。新人賞目指して頑張ってください」

◯ドラフト4位 万波中正外野手
「彼を形容する言葉は枚挙に暇がありません。規格外のパワー、底知れぬポテンシャル、超がつく大器などなどです。意外とパワーだけではなく、内野手もできるかもしれないと思わせる器用さとバランスも見逃せません。この規格外の選手を我々は小さくまとめることなく、既成概念にとらわれない大きな育成をしていくつもりです。一方、技術的にはまだまだ未熟でプロの球を打ち返すには相当な努力が必要なのも事実です。しかし、その努力できる力こそ彼の本当の特徴かもしれません。強豪・横浜高校で最も遅くまで練習し、最も悩み苦しんだ男。話していると、とても理解力と考える力があります。また礼儀正しく、明るく、いつも人が周りにいるのもうなずけるところです。努力に努力を重ねて、ぜひ新球場で大きなアーチを描いてください。頑張ってください」

柿木は「愛されキャラ」、育成の海老原は「シンデレラボーイに」

◯ドラフト5位 柿木蓮投手
「『甲子園で優勝してプロになるために大阪桐蔭に入りました』。私が大阪桐蔭に入った理由を聞いたときの回答です。見事、その通りの結果を残したその実行力に彼の並外れた強い意志が感じられます。150キロを超える力強い球、打者の手元で曲がるスライダーを駆使します。一見、ぐいぐい直球で押すタイプに見えますが、投手らしい繊細な部分があり、総合力の高い投手として評価しています。高校生ではありますが、早いうちに1軍で放れるのではないかと私は見ています。同じチームに根尾選手、藤原選手がいました。また、今は吉田選手と一緒。身近な同期が高い評価をされる中、きっと闘争心をメラメラと燃やしているに違いありません。一方、愛されキャラの面もあり、戦力してだけではなく、チームの雰囲気を明るくしてくれる貴重な存在になるはずです。頑張ってください」

◯ドラフト6位 田宮裕涼捕手
「50メートル6秒0、二塁送球1.84秒、シュアな打撃を持つなど、捕手には少ない3拍子揃った選手です。本人は大学とプロを迷い、最後の夏の結果で決断するという方針の中、見事に決勝進出。打率.524、本塁打2本、打点12と活躍し、勝負強いプレーを見せました。出身は千葉県。おじいちゃんとおじさん2人が成田高校の出身。同じくキャプテンを務めたそうです。また、担当の岩舘スカウトの成田高校野球部の出身。仮契約時には成田山新勝寺で護摩行を行い、成田の力を結集してプロの世界に飛び込んできました。捕手は投手のわがままを受け入れられる性格が向いていると考えております。田宮君はこの笑顔で、いろんな投手を受け止める力を持っていると思っています。頑張ってください」

◯ドラフト7位 福田俊投手
「大学3年秋、神宮大会準優勝の立役者です。今年の春こそ不調でしたが、秋には6試合31イニングで被安打は17、奪三振はイニング数を大きく上回る48、一方、四球はわずか6、防御率1.45と素晴らしい成績を残しました。140キロ後半の直球に加え、鋭く腕を振って変化球で空振りを奪えるところが素晴らしく、打者に向かう度胸の良さがあります。出身はこのホテルから徒歩10分。ファイターズに入るべくして入った福田選手。この縁と運を生かして、地元を大いに沸かせてほしいです。頑張ってください」

◯育成ドラフト1位 海老原一佳外野手 
「ご覧の通り、188センチ、92キロという恵まれた体。その体から繰り出される打球はプロでもトップクラスの170キロの打球速度。とても大きなアーチを描くことができます。独立リーグ出身らしくハングリー精神にあふれ、ファイターズのトライアウトを受けました。その少ないチャンスを場外ホームラン連発という形でものにした勝負強さを持っています。ファイターズ初の育成選手として、とても注目されていくことになります。7月までに支配下契約を勝ち取り、先輩たちを追い抜くシンデレラボーイになることを我々は期待しています。頑張ってください」

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

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