オリックス助っ人左腕が語る“違い” 自分を分析する米国、相手を分析する日本

Full-Count

2018.12.1(土) 20:02

オリックスのアンドリュー・アルバース※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)
オリックスのアンドリュー・アルバース※写真提供:Full-Count(写真:荒川祐史)

日米の選手のパワー差が生む野球スタイルの違い

 オリックスでの1シーズン目を終え、帰国中のカナダ出身左腕、アンドリュー・アルバース投手が、地元ラジオ局「スポーツネット」の番組に出演。日本の野球事情や、生活に加えて、日本野球におけるデータの使い方についても語っている。

 今や、MLBでは野球の高度なデータ化が進み、2017年のワールドシリーズ王者・アストロズの強力打線に象徴される、「打球の角度を最適化し、フライボールの飛距離を出すことで長打を生み出す」いわゆるフライボール革命が起こっている。MLBのデータ部門「スタットキャスト」は打球の角度、飛距離、速度などを瞬時に分析し、そのデータはテレビ中継の画像に表示される。また、強打者の打球方向を分析し、極端なシフトを敷くことも珍しくない。

 日本にもその波は次第に押し寄せてきてはいるが、いまだに「強いゴロで野手の間を抜く」「アッパースイングで打ち上げるよりレベル、ダウンスイング」といった思想は根強い。日米の野球を見てきたアルバースは、日米のデータの使い方をどう見ているのだろうか。

「僕が知る限りでは、(データ分析は)MLBほどは進んでいません。広まりつつありますし、もちろん分析はしていますが、MLBほど選手が大きくて力強いわけではないので、発射角については少し異なります。発射角はパワーのある打者には有効です。日本ではボールをインプレーにする俊足の選手が多く、守備にプレッシャーを与えます。彼らは低い打球、ライナーを打ちます。そうした点が異なります」

 長打を狙ってビッグイニングを作りにいくのではなく、走塁をはじめ、バントやエンドランなど機動力も使って相手を揺さぶっていくのがもともとの日本野球の身上。中には、フライボールで打球角度を上げ、MLB並みのパワーを見せている福岡ソフトバンク・柳田悠岐のような打者も出てきているが、基本的にナチュラルパワーが米国選手とは違う日本では、やはり「スモール・ベースボール」を織り交ぜた攻めが重視される傾向は根強い。

登板前にはビデオで相手打者を徹底的に分析

 もちろん、データを使わないわけではない。ただ、MLBの場合はトレーニングや技術的なことについて、パワーアップする、打力を上げるといった、自分(または味方)を分析するデータが盛んに使われるが、日本の場合は、相手を分析してその対策をするための「スカウティング」が主だ。アルバースもその点は理解している。

「(日本のスカウティングは)とても良いです。ビデオプログラムがあるのが良いですね。登板する前には、(相手の)ラインナップが過去数週間以内に(アルバースと同じ)左腕と対戦したビデオを見ます。僕は圧倒的な投球をするわけではないから、しっかりと準備するタイプで、それぞれの打者がどのようなスイングをするか、どのような打者か知りたいし、弱点を突くようにしたい。だから、登板する前日の夜に数時間ビデオを見るし、通訳を介して捕手と話をする。なるべく失投を少なくし、自分の投球に自信を持つことが必要だと思っています」

 NPBはMLBと違い、同じ相手と何回も対戦するが、アルバースはしっかりと自分のやり方もそれに合わせて日本でのプレーに臨んでいる。

 ただ、日本独特の事情も存在する。それは、NPBのスタメン発表は試合開始直前だということ。MLBは基本的に3時間前にはスタメンが出るため、それについては戸惑いもあるという。

「ラインナップの発表が、試合開始の30分前なんです。そのため、ビデオを見ていない選手がラインナップに入っていることもあります。『この選手について全く知らないよ』と思います」

 そんな中でも今年5月、6月は計8試合に登板し7勝0敗という成績を残したのだから、アルバースの投手としての能力は確か。本人も、日本でのプレーを相当気に入っているようだ。

「野球に日本でかなり人気があり、熱狂的なファンも多いです。素晴らしい雰囲気を作ってくれます。(自分は)ただ努力し続けるだけです。チームの一員になることが一番です。自分本位にならず、チームの一員となって勝利に貢献することができれば、受け入れられると思います。自信を持って投球し、自分の仕事をしてアウトを取ることが重要です」

 オリックスが離脱中に再契約に踏み切ったのは、成績面もさることながら、野球に取り組む姿勢も評価してのことだろう。その真面目さが、コメントからも伝わってきた。来季は1年間先発ローテを守り、今年届かなかった2桁勝利を期待したいところだ。

記事提供:Full-Count

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