「死球数」が示す、井口選手のプロフェッショナリズム

2016.6.23(木) 00:00 パ・リーグ インサイト マリーンズ球団広報 梶原紀章

日本球界最年長野手、41歳にして衰え知らぬ男から目が離せない。さまざまな記録を樹立し、今なお更新をしている井口資仁内野手が、今年もまたいくつかの記録を照準に捉えている。日米通算300本塁打まであと9本(日本247本、MLB44本。日本だけで250本塁打まであと3本)、通算1000打点まであと6打点。そして、もう一つ、あまり表には出ることはないが、強打者の証ともいえる数字がある。日本球界歴代4位となる通算146死球。過去に日本球界で150死球を記録した選手は3人しかおらず、これもまた大いなる勲章だ。

「それだけインコースを攻められているということだからね。相手が嫌がってくれているからこそ、インコースに投げる。結果が出てくるのと比例してデットボールは増えたよね」

最近では6月10日の東京ヤクルト戦(QVCマリン)。2回裏にヤクルト先発の小川から今季2個目の死球を受けた。しかし、井口の凄さはどんな場面でも痛さを表情に出さないこと。真剣勝負において、どんな状況でも相手に弱みを見せまいという強烈な気迫が感じられる。

「もちろん、痛いよ。でも、少々の痛みは我慢をしている。この勝負の世界において、大事なのは勝負に勝つこと。そういう意味では死球の後、どうやって打つかを考えている。死球の後に自分の打撃が崩れないように意識をしないといけない。死球の後だからこそ、次の打席では絶対に打ちたいと思っている。当たった直後から、次はどうやって打つか、どう攻めてくるだろうかと考えないといけない」

打席は、相手投手との読み合いでもある。だから、死球を受けた後に、腰を引くわけにはいかない。そんな時にこそ、グッと踏み込んで打ち返す。もうインコースはないと決め、狙い打ちをすることもある。痛いという感情より先に、次にいかに打つかに頭を巡らせる背番号「6」の姿はプロフェッショナルそのものだ。

ちなみに146個の死球を受けた井口がそれを理由に戦線離脱をしたのは一度だけ。09年の埼玉西武戦で左手首に受けた際。ただ、その時も「できない痛みではない」とプレーを続け、あまりにも腫れが引かなかったため、1週間後に再検査を受け、骨折が判明。患部を6週間ほど固定し、リハビリ生活を余儀なくされた。

「あの時は、なかなか痛みが引かなくて、バットも握れない感じになった。そこまでいくともう仕方がないけど、この世界では少々の痛みは誰だって、いつだってある。その中でいかにベストなプレーができるか。プロ野球でプレーをしている限り、なにかしらの痛みとは付き合いながら、闘っていかないといけない」

時には痛みをこらえ、立ち上がる。あえて敵に弱みを見せないため、涼しい顔を見せる。その背中を若手の多いマリーンズの選手たちも見ている。だから弱い姿勢は絶対に見せまいと決めている。

キャプテンの鈴木大地内野手は言う。「井口さんの存在は大きいです。デッドボールが当たっても、平気な顔で1塁に行く。ああ、大丈夫なんだなあとこちらも思ってしまっているのですが、ロッカーで見たら体のアザが凄くて、衝撃を受けました。プロ野球選手とはこうあるべきなのだなあと感じた。こういう姿勢を見習いたいですね」。若手への幾多のアドバイスを欠かさない井口だが、やはり一番大事だと考えているのは自らの野球に取り組む姿勢。見られる立場だからこそ、自分に厳しく、どんな時も弱音を吐くことはしない。

「記録の数字というものはある程度、長くやっていれば、ついてくるもの。それこそ、もしかしたら、もっともっといい数字を出せたかもしれない。節目の記録に到達するたびに思うのは、どちらかというとそういう思い。特別な感慨はあまりなくて、その時はもう次に向かっているよね」

若手を中心に躍動をしている2016年のヤングマリーンズにおいて、この男の存在はあまりにも大きい。オールスター出場9回、日本シリーズ出場4回。メジャーでは493試合に出場し、世界一も経験した飛び抜けた実績の中で自身が学んだものを惜しむことなく後輩たちに託している。このメンバーでもう一度、優勝を味わいたい。強いチームになってほしい。強い想いと願いがそこにはある。なんとも頼もしい井口という大ベテランがいる。だから、マリーンズは強く、粘り強いのだ。

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