「勝ちたかったね」。台湾プロ野球チーム・Lamigoモンキーズとの「桃園最強Power Series 2018」日台バトルカップ3戦目に2対7で敗れた後、ベンチに戻ってきた井口資仁監督は開口一番、悔しそうな表情を浮かべ、そう口にした。
交流試合とはいえ勝ち負けのある試合で3連勝を狙った。勝負事で負けるのは嫌いだ。だから悔しさを噛みしめた。ただ、もちろん収穫はあった。この機会にとアピールした若手たち。そして色々なことも試した。ベンチで戦況を見守りながら2019年シーズンに向けたさまざまな考えが巡っていた。
「3連戦で色々なことを試せた。収穫もあった。上で使える目途を感じた選手もいた。チームの底上げが必要。そのためには若手が上がってきて、刺激にならないといけない。そこから競争が生まれる」
この3連戦で一つ、前もって決めていたことがあった。それは酒居知史投手を最後に起用することだった。しかも1試合ではない。3試合、3連投をさせると決めていた。だから事前に本人には通達した。
「経験の意味合いもある。1イニングを全力で抑えることで何かをつかんでほしかった。こういう風に1イニングを全力で抑えるということは来年、先発をするにしても後ろに回るにしてもいい経験になる。1イニングの大事さも分かる」
9日は1回を2奪三振、無失点。10日は被安打2ながら3奪三振。そして11日は打者3人で料理した。ベンチで見守った指揮官は「今日は良かった。昨日はまだまだ。1イニングをもっと全力で投げ切ってほしいと思った」と評した。1試合や2試合ではなくあえて3連投。そこには想いがあった。
「3日連続で投げる。3日間共に全力で投げてどうなるか、本人がどう感じるかを見たかった。1日目と2日目と3日目での違いも含めてね。なかなか3連投はないのでいい経験になる。3日間、全力。自分のスタイルを見つめ直すキッカケにもと思う」
プロ2年目の酒居は今季、15試合に登板して2勝6敗で防御率5.59。井口監督はポテンシャルの高さを評価して、結果が出なくても我慢して先発で使い続けた。しかし、満足いく成績を挙げることなくシーズン終了を迎えた。
もがき苦しみ続ける右腕に、この台湾での3連戦であえて最後を3試合ともに任せた。それは中途半端な形では駄目。だから3試合連続の3連投という形となった。試合後、本人も「自分のピッチングを見つめ直すことができた。発見がありました。またここからの期間で生かしていきたい」と充実した表情を見せた。
なにか良い方向へと進むキッカケになってほしいと願っての起用。来季への可能性も検証できた。井口監督はこの台湾での3連戦でさまざまな種を撒き、色々な可能性と向き合った。4泊5日の短い遠征を終え、12日に帰国するや再び秋季キャンプ地の千葉県鴨川に戻り、鍛錬の日々に明け暮れる。
新しいシーズンに向けての備えに余念はない。2018年の悔しさを晴らすためにこれからも多くの仕掛けを行い、動き続ける。それはマリーンズにどのような変化をもたらし、どういう結果を生むのだろうか。新たなシーズンが待ち遠しくなる台湾、最後の夜となった。
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