北海道から発信する新たな球場の形 社会・地域との共生目指す北海道日本ハムの思い

Full-Count 石川加奈子

2018.11.7(水) 10:44

北広島市内で2023年3月に開業予定の北海道ボールパーク※写真提供:Full-Count(画像提供:北海道日本ハムファイターズ)
北広島市内で2023年3月に開業予定の北海道ボールパーク※写真提供:Full-Count(画像提供:北海道日本ハムファイターズ)

2023年に開業予定の新球場とは

 北海道日本ハムが5日の記者会見で2023年開業予定の新球場の概要を発表した。きたひろしま総合運動公園(北広島市共栄)に建設予定の新球場は、約3万5000人収容の開閉式屋根の天然芝フィールドで、建設費用は約600億円(球場周辺外構部及び球場内設備・機器等を含む)を予定している。

 会見で明かされた「新球場・ボールパーク建設の意義」と「施設のポイント」を紹介する。まず、建設の意義については球団は以下の4点を挙げた。

1.社会・地域への寄与・貢献
スポーツコミュニティを球団理念に掲げ、地域との共生、社会への貢献こそが球団の存在意義だと強く認識している。単に野球ができる場所を作るというのではなく、地域経済の活性化、北海道のにぎわいの創出にいかに貢献できるかを追求していく。人々が集う場所だからこそ、社会課題の認識や解決の場として活用すると同時に、次世代通信5G、人工知能AI、自動運転などに代表される新技術の実証実験の場としても検討していく。万が一、自然災害が発生した場合には、防災拠点として機能できる設備も備え、地域にとって必要不可欠な場所であり続ける。

2.新たなエンターテインメントの創造
北海道のにぎわいを創出するためには、エンターテインメントとしての価値があることが前提になる。新球場・ボールパークにおいては、新たなエンターテインメントとして多種多様な観戦環境や最新技術を駆使した、これまでにないワクワク感、食とスポーツを融合させた楽しさと美味しさと喜びを提供できる空間にしていく。

3.チームパフォーマンスの最大化
エンターテインメントとしての価値の基盤となるのは、選手たちの全力プレーとチームの勝利。チームパフォーマンスの最大化を図ることも非常に重要だと認識している。天然芝のグラウンドや選手のトレーニング、コンディショニング施設を充実させることで、選手にはよりのびのびと元気ハツラツにプレーしてもらい、高いパフォーマンスを発揮することでチームの勝利をつかみとっていく。

4.コミュニティ機能の発揮
人口減少や少子高齢化に伴い、日本の社会構造が新たに変化している。多くの人々がここに来たい、ここで働きたい、ここで何かをやりたいと思える場所自体が、今後非常に重要になってくる。より多くの人がここに集い、一緒に思い描くものを実現していく。これこそが共同創造空間というこの球場のコンセプトであり、そのような場所だからこそ、北海道のシンボルになれると考えている。

開閉式屋根の設置で天然芝のフィールドが可能

 新施設の主なポイントは以下の通り。

◯37ヘクタールの広大な敷地内に公園も整備
敷地面積は約37ヘクタール。新球場の建設と並行して、北広島市とともに敷地内に公園施設を整備する。隣のレクリエーションの森から流れてくる水を生かした水辺の憩いのスペースや、四季折々の花々が楽しめる場所、各種アクティビティーを満喫できる場所をつくる。また、バーベキューやグランピングのスペースも用意する。

◯2枚構造の三角屋根
屋根は2枚構造になっており、大きい方の屋根が可動するリトラクタブルルーフを採用。可動する屋根の長さは約160メートルでセンターからホームプレート側に向かって移動し、開閉には約25分要する。開閉式屋根により、雪が降る北海道でも天然芝のフィールドが可能になった。斬新なデザインだが、北海道に古くから多く存在する切妻屋根をモチーフにしている。周囲との調和を考慮して、建物の威圧感を減らすために高さを抑え、建物の中層部にはテラスを設け、屋上には庭園をつくる。

◯非対称のフィールド
建築面積は約5万平方メートルで収容人数は約3万5000人。メジャーリーグの球場と同様、フィールドはグラウンドを掘ってつくる。フィールドレベルは地下1階、地上4階建て、高さ約70メートルの建造物になる。左右非対称になる見込みだが、フィールドの具体的な形状については、チームから戦略上の意見を聞き、今後詰めていく。

◯特徴的なグラスウォール
センター後方にある70メートル×160メートルの巨大なガラス(グラスウォール)が存在感を放つ。球場内が明るくなるだけでなく、太陽光が天然芝に当たることで芝を育成するという機能性も持ち合わせる。将来映像装置として使うことも視野に入れている。このグラスウォールの下の部分は、球場の中と外の境界線をなくしている。高さ約10メートルのガラス壁を開くと、球場と公園、水辺エリアがつながり、野球観戦と公園を同時に楽しめる空間が広がる。球場外からも野球観戦や球場の雰囲気が楽しめるようになっている。

世界レベルのトレーニング施設やコンディショニング施設も

◯ワールドクラスのプレー環境
選手にとって最良の環境が整う。天然芝によって思い切ったプレーができ、怪我をしにくくなるだけではなく、世界レベルのプロスポーツプレーヤーにふさわしいトレーニング施設、コンディショニング施設を整える。ほかにもミーティングスペース、リラクゼーションスペース、選手の家族もゆっくり楽しめるファミリールームなども計画している。

◯多種多様でゆったりしたシート
場所が変われば、景色や雰囲気が変わり、異なる楽しみ方ができることが特徴。ダッグアウトの隣にも座席エリアを設けるなど、選手と同じ目線で観戦できるエリアも多数用意する。座席シートについても世界中のスポーツ施設を参考にして、バラエティ豊富な座席を用意し、選択することの楽しみを味わってもらう。

◯新たな観戦スタイルの提案
センター後方のグラスウォール付近にはファミリー向けの遊具や乗り物を設置するほか、水辺で遊んでから野球観戦というスタイルも可能にする。レフト上段には世界初となる地下から汲み上げる天然温泉に入りながら野球観戦ができる温浴施設を備える。

◯巨大ビジョンの設置
現時点でメジャーリーグが導入している最大サイズ以上のものを複数枚設置する予定。巨大LEDビジョンは縦が18メートル、横66メートルというサイズを想定している。

◯みんなが集える場所
お祭りのように歩いているだけで楽しいという場所にする。常にフィールドが見え、試合の状況もわかる360度のコンコースがあり、そこを歩くと両サイドには魅力的な食の選択肢が広がる。コンコースを歩けば、知り合いにも出会う。スポーツを通じたコミュニティが形成され、自宅や職場以外のみんなが集える場所になることを目指す。

 日本における新たな球場のスタイルを、北海道から発信していくことになりそうだ。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

記事提供:Full-Count

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