非凡な修正能力、オープン戦で苦戦しながら初打席初安打&初先発初勝利
今シーズン、現代のMLBに突如20世紀初頭のベーブ・ルースを思い出させる“二刀流”の選手が日本からやってきた。エンゼルスの大谷翔平は、デビューから投打にわたって活躍し、投手として10試合に先発し4勝2敗、防御率3.31。打者としては.285、22本塁打、61打点、10盗塁を記録した。
DAZNではオフの新番組「Home of Baseball」の配信を2日から開始。第1回は大谷の特集で、投手編(2日から)、野手編(9日から)に分けてルーキーイヤーを様々な角度から分析している。日米通算2148安打、484本塁打のアンドリュー・ジョーンズ氏、エンゼルスOBで現在はオリックスのシニアアドバイザーを務める長谷川滋利氏、元レイズ(デビルレイズ)の岩村明憲氏らが登場する中、エンゼルスのOBであり、地元テレビ局の中継解説者を務めるMLB132勝のマーク・グビザ氏がこの1年を振り返り、大谷の魅力を語り尽くした。
グビザ氏がまず大谷に驚かされたことは、その修正能力の高さだったという。スプリングトレーニングでは苦戦をしいられ、開幕前のオープン戦では打率.125、防御率27.00という散々な成績。それが、3月29日(日本時間30日)の開幕戦、アスレチックス戦で「8番・DH」として起用されると、2回の初打席で初球を痛烈に右前にはじき返してみせた。
「思い出すだけで鳥肌が立ちますよ。キャンプでは本当に苦労していたのに、スイングを修正して初打席の初球を打ったのですからね」とグビザ氏。4月1日のアスレチックス戦では投手としてMLB初先発で初勝利を挙げ、3日(日本時間4日)のインディアンス戦では、プロ初の1号3ラン本塁打を放った。
「日本では足を上げ、下ろした後にスイングをしていましたが、キャンプの終盤のドジャースとのオープン戦では、すり足でスイングして見事に打った。オオタニは、特にシーズン前半は登板もしていたので、週に3回くらいしか打席に立てなかった。それも相手は、160キロを投げる初対戦の投手。その意味で、オオタニは見事に素早く正確に修正しました」
打撃だけではない。グビザ氏の本職であったピッチングでも、大谷の修正能力には驚かされたという。キャンプから開幕までの間に見た時の大谷は「速球があまり動かず、スッと入っていく印象だった」という。「それだと狙ったところに投げられたとしても、カウントによっては投げられない。メジャーのバッターにとって、バッティングカウントは、1ボールノーストライク、あるいは2ボール1ストライクです。そのカウントでバッターだったら、速球を待つ。どんな球威だろうと構わない。とにかくストライクゾーンの速球を待つのです」。素直な球筋のストレートは、どれだけ速くても打ち返すのがMLBの一流打者だ。
大谷に3三振のアスレチックス・オルソン「ボールが見えなかった…」
しかし、大谷はすぐにそれを理解し、ボール先行のカウントではスプリットやスライダー、カーブを中心に組み立て、逆に変化球を待つカウントでは速球をどんどん投げ込んだ。それも、多彩な球種に加え、どの球でもストライクが取れる自信があってこそ。グビザ氏は「オオタニが試合で投げる球種は確か5種類。その平均球速は、160キロを超えます。私の野球人生でそんな投手は見たことがない。特に先発投手ではね。リリーフなら、1イニングしか投げないから(160キロ超の球速も)あり得るけれど、(大谷は)先発投手として見事ですよ」と絶賛した。
4月8日のアスレチックス戦では本拠のエンゼルスタジアムで初のマウンドに上がり、7回1安打12奪三振の圧倒的なパフォーマンス。グビザ氏によると、この試合で大谷に3三振を奪われたアスレチックスのマット・オルソンは「ボールが見えなかった。球種はまったく分からない」と言ったという。「自分のボールがメジャーで十分通用すると分かったのでしょう。つまり、最初は抑えられるか不安に思っていたが、投げるうちに自分の投げるボールがメジャーでも相当にレベルが高いことが分かり、どうやったらアウトにできるかが分かったんですね」とグビザ氏は分析した。
大谷は、グビザ氏に「僕は決してネガティブになりません」と何度も言っていたという。「『自分にはメジャーでやる力がないかも』と思ってしまうと、自分に対する疑念が生まれる。対してオオタニは、決して自分の能力を疑わない。ピッチングでもバッティングでもね」。4月、5月の大谷は、投げ、打つたびに自信を深め、メジャーリーガーとしての風格を備えていった。
(Full-Count編集部)
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