「エース格」の証明。「一流」の条件。複数回の2桁勝利に挑むパ・リーグの投手たち

パ・リーグ インサイト 成田康史

2017.9.9(土) 00:00

東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之投手(C)パーソル パ・リーグTV
東北楽天ゴールデンイーグルス・岸孝之投手(C)パーソル パ・リーグTV

プロの投手にとって、その活躍のほどを示す分かりやすい指標の1つが「2桁勝利」だろう。昨季、パ・リーグで10勝以上を挙げた投手は12名だ。打線との兼ね合いもあって、毎年限られた選手しか成し遂げられないこの記録。これを何年も連続して続けるとなると、当然その難易度は跳ね上がる。そんな中、「2桁勝利」という栄誉へと再び手をかけている投手たちを紹介していきたい。

まず埼玉西武のウルフ投手だ。今季で日本球界8年目となるベテランは、2010年、北海道日本ハムで日本球界でのキャリアをスタートした。この年の終盤から先発投手として起用されると、翌2011年には12勝を挙げて、自身初の2桁勝利をマーク。翌2012年も、安定した投球でチームを支えて10勝と、先発投手としての実績を積み重ねた。

しかし、2013年に9勝を挙げて以降は、なかなか勝ち星が伸びないシーズンが続く。2014年にトミー・ジョン手術を受けたこともあり、福岡ソフトバンクに移籍してからの2年間で挙げた勝ち星は4つだった。しかし、昨季途中に外国人投手の不振に苦しんでいた埼玉西武に加入すると、先発した4試合全てで勝利する。

先発ローテーションの一角として開幕から登板を重ねた今季は、動くボールを駆使し、持ち前の打たせて取る投球でゲームを支配。4月30日の千葉ロッテ戦では、7回を69球でまとめる好投を披露し、今季両リーグ最短の2時間10分という試合時間を演出した。毎週日曜日に登板し、「サンデーウルフ」の愛称で一気に埼玉西武ファンを虜にした右腕は、すでにここまで9勝を挙げている。実に5年ぶりとなる2桁勝利へ、その歩みは止まらない。

続いては楽天の岸投手。2006年のドラフトで埼玉西武に入団すると、ルーキーイヤーから11勝を挙げ、新人王は逃すも鮮烈なデビューを果たした。翌2008年には、日本シリーズでMVPを獲得。2014年にはノーヒットノーランを記録し、自身初のタイトルとなる最高勝率投手賞に輝くなど、埼玉西武先発陣の柱として長くチームを支えた。

故郷・仙台へと舞い戻った今季は、シーズンを通して安定した投球を披露。序盤戦で首位を走ったチームの快進撃を支えた。特筆すべきなのはその投球内容だ。今季登板した試合ではいずれも6回以上を投げ、21試合中17試合でクオリティ・スタートを記録、投手陣の柱としてリーグ屈指の安定感を誇っている。積み上げた勝ち星はここまで8勝。魂のこもった力投を続けながらここ7試合は勝ち星から遠ざかってしまっているが、岸投手の3年ぶりの2桁勝利をチーム全体でも後押ししたいところだ。

最後に紹介するのは、埼玉西武・十亀剣投手だ。2011年ドラフト1位で入団した右腕は、ルーキーイヤーから中継ぎとして活躍。6勝を挙げる活躍を見せる。翌年は先発投手として1年間ローテーションを守り、チーム3位の164回1/3を投げた。初めての2桁勝利は2015年。チームで唯一規定投球回到達を果たすと、自己最多の11勝を挙げた。

今季、開幕はファームで迎えたものの、4月末に一軍の舞台に戻ってくる。初登板となった4月27日のオリックス戦で1勝を挙げると、6月は3勝0敗と抜群の安定感を見せ、月間MVPを獲得した。「炎獅子」パワーで一気に調子を上げているチームの躍進とともに、2年ぶりの2桁勝利をつかむことはできるのか。節目まではあと3勝。上位争いにも不可欠な右腕の投球に期待がかかる。

先発投手の栄誉とも言える「2桁勝利」。今季はすでに、オリックスの金子千尋投手が3年ぶりに大台に到達した。「一流」の登竜門でもあるこの栄誉を、再びつかもうとする彼らの活躍に期待したい。

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パ・リーグ インサイト 成田康史

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