「腕がちぎれるくらい全力で」元オリックス・近藤大亮広報、パナソニック野球部最後の大会への思い

パ・リーグ インサイト 海老原悠

オリックス・バファローズ広報 近藤大亮さん ©PLM
オリックス・バファローズ広報 近藤大亮さん ©PLM

 パナソニック野球部は、10月31日から行われる「第51回 社会人野球日本選手権大会」を最後に、76年の歴史に幕を下ろす。日本選手権大会優勝2回に準優勝2回、都市対抗野球大会準優勝1回と、数々の名勝負を生み出し、多くのプロ野球選手を輩出してきた名門の休部。さらに、同大会をもって廃部することを発表したセガサミー硬式野球部と、相次ぐ名門チームの活動終了は、社会人野球界に大きな衝撃をもたらした。

 この節目に、OBは何を思うのか。かつてパナソニック野球部のエースとして活躍し、現在はオリックス・バファローズで広報を務める近藤大亮さんに、社会人野球時代の思い出と、最後の日本選手権に臨む後輩たちへの思いを聞いた。

近藤大亮さん/浪速高校-大阪商業大学-パナソニック野球部と経て、2015年のドラフト会議でオリックスから2位指名を受けて入団。回転数の多い力強いストレートを武器に、中継ぎ投手として活躍する。2023年オフに読売ジャイアンツへ移籍。2025年に現役を引退し、古巣・オリックスで広報に就く。

一敗の重みと、会社の看板を背負う責任

 パナソニック野球部の休部について、近藤さんは「寂しいですね」と率直な思いを口にした。在籍期間はわずか2年間。しかし、そこでの経験は、その後のプロ野球人生にも大きな影響を与えたという。

 近藤さんがパナソニックへの入社を決めた背景には、大阪商業大学時代から日本選手権大会を通じて同部の試合を観戦していたことと、当時の野球部関係者から「戦力として必要としている」と声をかけられたことがあった。自分を必要としてくれるチームで野球がしたい。その思いが入部の決め手となった。

 入部後、まず驚いたのは競技レベルの高さだった。打者のスイングスピードや力強さ、プレーのスピード感。あらゆる面で大学野球との違いを感じたという。

 パナソニックは、堅い守備で失点を防ぐ「守り抜く野球」を伝統としてきた。近藤さんが託された背番号「18」は、後にプロ入りする秋吉亮さん(元東京ヤクルト・福岡ソフトバンク)が背負っていた番号でもある。

「会社の看板を背負って戦う以上、絶対に負けられないという思いがありました。大学時代のリーグ戦とは異なり、都市対抗や日本選手権に出場するための予選は、一つの負けが全国大会への道を閉ざしてしまう一発勝負の世界です。勝ち点制のように『次の試合で取り返す』ことができない厳しさこそが、学生野球との大きな違いだと感じていました」

 そうした環境のなか、近藤さんは持ち味であるストレートに磨きをかけるべく、朝から晩までトレーニングに打ち込んだ。ジムにも通い、徹底して身体を鍛えた経験は、プロ入り後、自分に合ったトレーニング方法を確立するうえでも役立ったという。

日本選手権で得た自信と、ドラフト指名後の重圧

 近藤さんが社会人時代で最も印象に残っている試合として挙げたのは、1年目の2014年、「第40回 社会人野球日本選手権大会」の初戦、東邦ガス戦だ。

 初めて立つ全国大会のマウンド。対戦相手には、社会人野球界のレジェンドとして知られる主砲・山本明大さんがいた。近藤さん自身、強打者との対戦には怖さも感じていたというが、結果は捕邪飛。社会人のトップクラスの打者を抑えられたことが、大きな自信となった。

 この試合で、近藤さんは全国大会初勝利を挙げた。何よりうれしかったのは、会社の人たちが喜んでくれたことだったという。

 当時の配属先であるインダストリアル営業本部の社員をはじめ、多くの人が球場に駆けつけていた。勝利を収め、スタンドで歓喜する社員たちの姿を目にしたことで、初めて会社の役に立てたという実感が湧いた。

 チームは続くJFE西日本戦にも勝利し、準決勝へ進出。優勝したトヨタ自動車には敗れたものの、先発した近藤さんは6回途中6奪三振3失点。ルーキーイヤーから確かな存在感を示した。

 翌2015年は、さらなる飛躍の年となった。都市対抗野球大会では大阪ガスの補強選手として出場し、現東北楽天の酒居知史投手らとともに準優勝に貢献。大阪ガスから戦力として必要とされたことはもちろん、所属するパナソニックの社員たちが変わらず応援してくれたことも、温かい思い出として残っていると話す。

大阪ガスの補強選手として都市対抗野球に出場した近藤さん 【写真提供:毎日フォト・サービス】
大阪ガスの補強選手として都市対抗野球に出場した近藤さん 【写真提供:毎日フォト・サービス】

 同年には侍ジャパン入りも経験した。そこで後にオリックスでチームメイトとなる山岡泰輔投手(当時・東京ガス)、田嶋大樹投手(当時・JR東日本)、西川龍馬選手(当時・王子)らと出会った。

「山岡、田嶋とはいまだに社会人時代の思い出話をするんですよ」

 プロ入り後も、ロッカールームや食堂で日本選手権の試合映像を見ながら、社会人出身の選手同士で当時の対戦相手や試合の話に花を咲かせることがあるという。チームが違っていても、同じ時代に社会人野球を戦った者同士のつながりは続いている。

 そして2015年秋、近藤さんはドラフト会議でオリックスから2位指名を受ける。その直後に臨んだ日本選手権では、前年とは異なる重圧を感じていた。

「1年目は自分の力を愚直に発揮するだけでしたが、2年目は『NPB指名投手』という目で見られる立場になりました。自分を育んでくれたパナソニックにも、評価してくださったオリックスにも恥ずかしい姿は見せられないという、強いプレッシャーを感じながら投げていました」

 近藤さんは初戦、Hondaとの試合に先発。相手先発の石橋良太さん(元東北楽天)と緊迫した投手戦を繰り広げたが、1対2で敗戦した。京セラドームのマウンドの忘れ物を取りに行くかのように、プロ入り後腕を振るった。

広報になって気づいた、社会人野球で培われる力

©PLM
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 現役引退後、古巣のオリックスで広報業務に携わるようになった近藤さんは、社会人野球での経験がプロ入り後にも生きていることを、選手を支える立場から改めて実感しているという。

 その一つが、メディアへの対応力だ。取材の場では、若い選手が受け答えに戸惑うこともあり、広報担当者がサポートする場面もある。一方で、社会人野球を経験した選手は、自分の考えやプレーの意図を言葉にすることに慣れていると感じるという。

「東山玲士投手(ENEOS)の取材に立ち会う機会がありました。現役時期が重なっていなかったため最初は少し心配していたのですが、彼はメディアからの質問に対して見事に自分の考えを言語化し、しっかり答えていました。社会人で揉まれた経験や意識の高さが、プロでのメディア対応や振る舞いにも表れているのだと実感しました」

 会社の看板を背負って試合に臨み、社員やファンの応援に応える。社会人野球で培われるのは、技術だけではない。現在は広報として選手たちと接する近藤さんだからこそ、見えてきた一面でもある。

「腕がちぎれるくらい全力で」

 パナソニックが最後の日本選手権で初戦に迎えるのは、同じ大阪の強豪・日本生命だ。近藤さんにとっても、社会人時代から「エリート集団」という印象を持つ、特別な相手だったという。

 試合会場は京セラドーム大阪。日本選手権でマウンドに立っただけでなく、プロ入り後もオリックスの本拠地として幾度となく腕を振った、近藤さんにとってなじみ深い球場だ。マウンドの硬さや高さも自分に合い、思い切って投げ込める場所だったと振り返る。

 現在、パナソニックの指揮を執る井上貴晴監督は近藤さんの1学年上の先輩であり、ベテラン左腕の榎本亮投手は1学年下にあたる。かつてのチームメイトの多くはそれぞれの道を歩み、知っている現役選手やスタッフは数少なくなった。それでも、「貴晴さんが胴上げされている姿を見たいですね」と近藤さんは話す。

 報道によると、休部決定後、選手・スタッフの約7割は引退して社業に専念し、残る約3割は別のチームなどで現役続行を希望しているという。それぞれが異なる進路を選び、チームとして最後の大会に臨む。近藤さんは、「最後は全員が笑顔で終わってほしい」と願う。

 そんな後輩たちへ、エールをお願いした。

「トーナメントにおいて重要なのは、とにかく悔いの残らないよう一球一球に気持ちを込め、全力を出し切ることです。先のことは考えず、腕がちぎれるくらい、身体がぶっ壊れるくらいの意気込みで目の前の試合に全集中してほしいですね」

「腕がちぎれるくらい」。思わずその言葉を復唱すると、近藤さんは続けた。

「僕、実際に腕がちぎれて引退しているんで」――

 現役時代には右肩腱板断裂を経験。それでも最後までマウンドで腕を振り、3球三振で現役生活を終えた近藤さん。自らの経験を重ねた、近藤さんらしいエールだった。

 パナソニック野球部の最後の大会となる日本選手権。その初戦、日本生命戦は10月31日(土)18時、京セラドーム大阪でプレーボールだ。

information

オリックス・バファローズの公式ファンクラブ「BsCLUB」会員は、「第51回社会人野球日本選手権」を割引価格で観戦できます。対象は当日券のみで、京セラドーム大阪のチケット販売窓口で会員証をご提示ください。チケットの種類と割引価格は以下のとおりです。
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・プレミアム席(バックネット裏 前列/ドーム内で使用可能な500円分のクーポン付き)
一般販売価格 3,300円 → 会員特別価格 2,850円(ご本人様のみ)
・特別席(バックネット裏 中後列)
一般販売価格 1,650円 → 会員特別価格 1,450円(同上)
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大会の詳細は日本野球連盟の公式サイト(https://www.jaba.or.jp/51baseball/)でご確認ください。

記事提供:パ・リーグ インサイト 海老原悠

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