FA移籍の大和も出場機会増え存在感
2018年もポストシーズンに入り、日本シリーズが終わればいよいよ各球団の来季に向けた戦力補強、整備が本格化する。昨シーズンオフ、フリーエージェント(FA)の権利行使、あるいは契約満了により球団を移った選手たちの移籍先での戦いも、ひとまずレギュラーシーズン終了で一区切りとなる。戦力外通告による退団やトレード、FAの人的補償などではなく、自らの意思で戦う場所を変えた選手たちの2018年がどんなシーズンだったのか、検証してみた。
〇松坂大輔投手
2017年(福岡ソフトバンク)1軍登板なし
2018年(中日)11試合6勝4敗 防御率3.74 投球回55回1/3 勝率.600 51奪三振
右肩痛に苦しみ、福岡ソフトバンクでの3年間でわずか1試合登板、防御率18.00という成績に終わった“平成の怪物”は、同球団のコーチ就任の要請を断り退団。埼玉西武時代、ルーキーイヤーの1999年に2軍投手コーチだった中日の森監督に声をかけられ、テスト入団の形で移籍した。
再び投げられるのかどうか、懐疑的な声もある中で、森監督は先発として起用。松坂もかつてのような豪速球で打者をねじ伏せる圧倒的な投球こそ影をひそめたものの、見事にモデルチェンジ。MLB仕込みの、ボールを動かしてバットの芯を外す頭脳的なピッチングを披露した。
巨人、阪神、横浜DeNAを相手に11試合に先発し、巨人にこそ0勝3敗、防御率12.54と打ち込まれたものの、阪神には3勝1敗、防御率1.96と“虎キラー”になった。古巣・福岡ソフトバンクからも交流戦で勝利を挙げ、防御率3点台は復活と言っていいだろう。
セ上位の東京ヤクルト、広島には1試合も投げておらず、その力量からいってできれば2桁勝利が欲しいところだが、実績からいって出処進退は自分で決められる立場だけに、完全燃焼したと思えるまでプレーして欲しいところ。来季は、今年6月17日に先発を予定しながら背中の張りで回避した古巣・埼玉西武と広島から勝利を挙げ、12球団勝利を達成したい。
オリックス増井は35セーブを記録し2015年の自身最多39セーブに迫った
〇増井浩俊投手
2017年(北海道日本ハム)
52試合6勝1敗27セーブ7ホールド 防御率2.39 投球回53回2/3 被安打47 被本塁打6
2018年(オリックス)
63試合2勝5敗35セーブ9ホールド 防御率2.49 投球回65 被安打55 被本塁打4
国内FA権を行使して北海道日本ハムからオリックスへ移籍。守護神の平野佳寿がダイヤモンドバックスに移籍した後任として守護神に座り、防御率こそやや落としたものの、登板試合数、投球回数、セーブ数は増やし、森唯斗(福岡ソフトバンク)に次ぐ2位に入った。
持っている力からすれば、このぐらいはやって当然とも言えるが、2015年のキャリアハイ39セーブに迫る成績を同一リーグ内の移籍で残したのだから、その力を改めて証明したと言える。6月29日の北海道日本ハム戦でセーブを挙げ、江夏豊(当時北海道日本ハム)、クルーン(当時巨人)、サファテ(福岡ソフトバンク)に次ぐ史上4人目となる「12球団セーブ」の記録も達成した。
〇大和内野手(前田大和)
2017年(阪神)100試合232打数65安打 打率.280 本塁打1 打点16 出塁率.331
2018年(横浜DeNA)113試合394打数96安打 打率.244 本塁打2 打点27 出塁率.293
国内FA権を行使して阪神から横浜DeNAに移籍。金銭条件的には阪神が最大4年契約(推定)、起用法についてはオリックスがレギュラー保証をするなどの好条件が出ながら、移籍先に横浜DeNAを選んだ。
遊撃に倉本、二塁に柴田と若手選手とのポジション争いに身を投じ、スイッチヒッターもやめて右打席に専念。数字的には打率、出塁率ともに数字は落としたが、もっとも重要な出場機会において、前年より162打数も増えた。スタメン起用の回数が多かったことを意味しており、左脇腹痛で7月を2軍で過ごす時期もあったものの、主に遊撃手として定位置を確保。復帰後の8月には月間打率.395、30安打を記録。古巣阪神相手に球団別最高の打率.288、23安打を放った。2本の本塁打はいずれも巨人戦。大活躍とまではいかないまでも、ひとまず移籍の目的は達したと見ていいだろう。
ただ、持ち味の守備に関しては11失策を記録。二塁、遊撃、外野と“便利屋”的に使われた阪神時代より大幅に増えている。出場機会が増えれば守備機会も増え、守備範囲が広ければ捕れない打球に追いついたがために失策になってしまうケースもあるので一概には言えないが、守りに定評がある選手だけに、来季は失策数を減らしたいところだ。
〇鶴岡慎也捕手
2017年(福岡ソフトバンク)29試合28打数9安打 打率.321 本塁打3 打点5 出塁率.385
2018年(北海道日本ハム)101試合239打数58安打 打率.243 本塁打2 打点22 出塁率.293
出場機会を求めて海外FA権を行使し古巣・北海道日本ハムへ移籍。2013年に北海道日本ハムから福岡ソフトバンクに移籍しておりFAで移籍した選手が移籍前の球団に再度FA権行使で復帰する史上初のケースとなった。
打力に定評がありDH、代打での出場も多かったが捕手としてチーム最多の89試合に出場しベテラン健在を見せつけた。前年に比べ出場数は72試合も増加し、チームはAクラス入り(3位)と移籍は大成功だったといえる。リーグ優勝を果たした埼玉西武戦の打率は.341(41打数14安打)と勝負強さを発揮した。
清水優心、石川亮など若手捕手も出場機会を増やしているがまだまだ正捕手を確保するに至っていないのが現状。来年4月で38歳を迎えるベテランだがチームに取っては必要不可欠な選手なのは間違いない。
野上、大野奨のFA移籍組は不本意な結果に
〇野上亮磨投手
2017年(埼玉西武)
24試合24先発11勝10敗 完投2 完封1 防御率3.63 投球回144 勝率.524 113奪三振
2018年(巨人)
25試合9先発4勝4敗1ホールド 完投0 完封0 防御率4.79 投球回71回1/3 勝率.500 54奪三振
国内FA権を行使して埼玉西武から巨人へ移籍。MLBに復帰したマイコラスの穴を埋める存在として期待されたが、5月13日の中日戦(東京ドーム)を最後に勝利はなし。同27日の阪神戦(甲子園)、5回4失点で4敗目を喫して以降は先発ローテを外れ、以後は救援登板するようになったが、8月15日の東京ヤクルト戦では11-5で勝ったものの2/3回で3失点など、不安定な内容が続いた。
投球回数が半分以下なのに、与四球が24→21とほとんど変わらず、被本塁打は10→15と逆に増加。積極打法で浅いカウントからフルスイングしてくるパの打者には通用した投球が、ボールをじっくり見てミート中心につないでくるセの打者には通用せず、かわす投球となってカウントを悪くし四球、あるいは痛打を浴びたという傾向が見てとれる。セの打者の傾向に慣れたであろう来季、この不本意な成績からどう巻き返してくるか。
〇大野奨太捕手
2017年(北海道日本ハム)83試合154打数34安打 打率.221 本塁打3 打点13
2018年(中日)63試合167打数27安打 打率.197 本塁打2 打点10
国内FA権を行使して北海道日本ハムから中日へ移籍。岐阜出身ということもあり、北海道日本ハムの正捕手の移籍として、大きな期待を寄せられた。正捕手・松井雅のバックアップとして63試合に出場はしたものの、数字は落としている。2017年オフに右肘の手術を受けた影響もあり、かつて4割以上の盗塁阻止率を誇った強肩もよみがえっていない。
出場試合数はプロ入り以来最少で、上がった数字は北海道日本ハム9年間で1本しか打っていなかった三塁打を今季だけで2本打ったぐらい。期待されたほどの数字を残したとは言いがたいが、これまでの経験を中日の捕手陣に伝える役割も期待されての移籍だけに、数字だけで計れないものはあるだろう。まずは故障を完治させて強肩の復活を期待したい。
〇アレックス・ゲレーロ外野手
2017年(中日)130試合469打数131安打 打率.279 本塁打35 打点86 三振98 出塁率.333
2018年(巨人)82試合287打数70安打 打率.244 本塁打15 打点40 三振62 出塁率.325
2017年の本塁打王は、中日との残留交渉がまとまらず、巨人と2年総額8億円(推定)という条件で移籍したが、ほぼすべての部門で数字を落とす不本意な成績に終わった。打撃不振から6月15日に2軍落ちし、7月には高橋監督との面談を拒否したとしてメディアを賑わせたが、8月になって1軍復帰。4月だけは85打数28安打、打率.329、5本塁打とまずまずの成績だったが、完全な尻すぼみに終わった。
9月以降も17試合46打数8安打、.174と低空飛行ながら、8安打中3本が本塁打と長打力の片りんは見せてはいるものの、まったくの期待外れ。巨人は投手でメルセデス、アダメス、ヤングマン、打者でもマルティネスといった格安助っ人が今年1軍でプレーし、いずれもそれなりに戦力になっただけに来季は正念場となるのは間違いない。
(Full-Count編集部)
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