東京ヤクルト奥村、阪神尾仲のようにプロ入り1年や2年で移籍するケースも
例年、オフのマーケットを賑わすのが、トップ選手のFA宣言による移籍だ。今季もオリックスの西勇輝投手や埼玉西武の浅村栄斗内野手、広島の丸佳浩外野手といった球界を代表する選手たちがFA権を持ち、その動向が今後注目されることになるだろう。
ある選手がFA移籍する際、移籍選手の前所属球団は、移籍先の球団に対して金銭、あるいは人的補償を求めることができる(所属球団内の選手の年俸ランクがA、Bの場合。Cランクは補償不要)。移籍先球団は、28人までプロテクトをかけることができるが、成長株の若手などがプロテクトから漏れ、人的補償で新天地に移る例も多い。
近年、人的補償によってやむなく移籍した選手は今季、8選手が現役でプレーした。巨人から埼玉西武に人的補償で移籍し、自らのFA権で巨人に復帰した脇谷亮太は今季限りで引退。残る7選手の現状を見てみよう。
◯赤松真人(広島)
2004年のドラフト6位で立命館大から阪神に入団。2年目の2006年には2軍で3割をマークし、2007年には1軍で28試合に出場した。2007年オフに新井貴浩の阪神移籍に伴って広島へ。移籍1年目から外野のレギュラーを争うと、2009年には137試合に出場し、オールスターにもファン投票で選ばれた。その後はレギュラーを奪われるも、代走や守備固めとして重用された。2016年オフに胃ガンが発見され手術を受けた。今季も1軍出場はないが、ウエスタン・リーグで55試合に出場。1軍復帰を目指している。
◯高濱卓也
2007年の高校生ドラフト1位で横浜高から阪神へ入団。小林宏之の阪神移籍に伴い、4年目の2011年から千葉ロッテへ。1年目に1軍デビューを果たしたものの、その後も定位置獲得とはならず。2016年に自己最多の53試合に出場したものの、今季は10試合の出場に終わっている。
◯一岡竜司(広島)
2011年のドラフト3位で沖データコンピュータ教育学院から巨人に入団。大竹寛の巨人移籍に伴い、2年目の2013年オフに広島へと移籍。移籍1年目の2014年から中継ぎ陣の一角として大活躍を収め、今季も59試合5勝6敗2セーブ、18ホールド、防御率2.88とセットアッパーとして3連覇に貢献。人的補償で移籍した選手の中で、現状、最も成功を収めている選手といえるだろう。
◯藤岡好明(横浜DeNA)
宮崎日大高、JR九州を経て、2005年の大学生・社会人ドラフト3位で福岡ソフトバンクへ。鶴岡慎也の福岡ソフトバンク移籍に伴い、人的補償として2014年に北海道日本ハムへ移籍した。北海道日本ハムの3年間ではわずか16試合登板に終わり、2016年途中にトレードで横浜DeNAへ移籍。今季は15試合に登板して1勝0敗0セーブ1ホールド、防御率6.14の成績だった。
〇奥村展征(東京ヤクルト)
2013年ドラフト4位で日大山形高から巨人入団。長打力のある内野手として期待されたが、2014年オフ、相川亮二の巨人移籍により、NPB史上最短(プロ2年目)、最年少(19歳)で東京ヤクルト移籍となった。2017年には44試合113打数27安打、打率.239の成績を残すと、今季は32試合で41打数9安打、打率.220。成績は落としたものの、10月4日の阪神戦プロ入り初本塁打を放った。
〇平良拳太郎(横浜DeNA)
2015年、ドラフト5位で沖縄・北山高から巨人に入団。2016年オフに山口俊の巨人移籍に伴い、横浜DeNAに人的補償として指名された。昨年は5月10日の中日戦でプロ初勝利を挙げたものの、4試合で1勝3敗、防御率7.07。だが、今季は先発投手の不振が目立ったチーム事情もあってチャンスをつかみ、13試合に投げて5勝3敗、防御率3.49とまずまずの成績を残した。特に9月は3戦3勝、防御率3.12と好投を続け、来季のローテ入りにも希望の見える内容となった。
〇金田和之(オリックス)
2012年ドラフト5位で大阪学院大から阪神入団。阪神では3シーズンで通算56試合登板、7勝1敗、防御率4.27の成績を残した。2016年オフに糸井嘉男の人的補償としてオリックスに移籍。移籍1年目の2017年には45試合に登板して4勝1敗、防御率4.15と中継ぎとして活躍したが、今季は10試合、12回1/3で0勝0敗、防御率7.30と大幅に数字が落とした。
〇高木勇人(埼玉西武)
2014年ドラフト3位で三菱重工名古屋から巨人に入団。ルーキーイヤーに26試合に先発して9勝10敗、防御率3.19の成績を残したが、年々、成績は下降。昨季オフに、巨人に移籍した野上亮磨の人的補償として埼玉西武へ移籍。今季は4月22日の千葉ロッテ戦で先発し6回2失点と好投し移籍後初勝利をマークしたが、パフォーマンスは続かず、結局1軍では8試合(3先発)1勝2敗、防御率8.69と移籍先でも不本意な成績に終わった。人的補償で移籍したこれまでの選手の中では実績豊富なだけに巻き返しに期待したいところだ。
〇尾仲祐哉(阪神)
2016年ドラフト6位で広島経済大から横浜DeNAに入団。2017年に11試合に登板したが、その年のオフに大和の人的補償で阪神へ。まさかのルーキーイヤーのオフに移籍となった。阪神では今季12試合に登板にとどまったが、ファームでは28試合に投げて1勝4敗、防御率3.54とまずまずの成績。ファーム日本選手権でも3番手で登板しており、球団からの期待をうかがえる。
13日からファーストステージが始まるクライマックスシリーズ、そして日本一を決める日本シリーズが終わると、今年のFA戦線がいよいよ始まる。今オフは、どんなFAにまつわるストーリーが待ち受けているのだろうか。
(Full-Count編集部)
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