お互いが納得するまで話し合う「思ったことはどんなことでも言ってくれ」
プロ野球はシーズン終盤を迎えセ・リーグでは広島、パ・リーグでは埼玉西武がリーグ優勝に向けラストスパートを見せている。そんな中、ユニホームを脱ぐ決断を下した選手もいる。巨人の杉内俊哉投手もその一人だ。福岡ダイエー、福岡ソフトバンク、そしてオフシーズンの自主トレを共にしたオリックス・山崎勝己捕手は特別な思いで先輩の引退を惜しんだ。
福岡ソフトバンク時代に第2捕手の地位を築き、2013年オフにFA移籍した山崎勝。今年は2度目のFA権を取得するなどプロ18年目のシーズンを過ごしている。「杉内さん、和田さんの球を受けることができたから今の自分がある。本当に感謝しかないです」。尊敬する先輩の引退を感慨深く口にした。
福岡ソフトバンク時代は杉内の専属捕手を務めた“元相棒”は左腕の凄さを改めて語った。
「直球とスライダー、チェンジアップ。この少ない球種だけで打ち取ることができる。こういったら失礼ですけど、ある程度のところにボールがきたら大丈夫。それぐらいのボールを持っていた。あとは気を使うことなく、どんなことでも話をすることができた」
2歳年下の山崎勝にも「思ったことはどんなことでも言ってくれた」と捕手を育てる環境を作ってくれたという。抑えることもあれば打たれることもある。どんな状況でも納得するまで2人で話すことでお互いの信頼関係を築いていった。これは山崎勝に限ったことではなく若い選手にも同じだった。
「だから僕もダメなところははっきり言ったし、自分のリードで打たれた時は『今のはそうなると思っていた。次は違う形でいこう』とアドバイスももらった。若い時はやっぱり先輩の顔色が気になるもんです。一回の失敗で萎縮してしまうこともある。特に捕手のポジションは。チームのエースが捕手を育てる。まさにそれが杉内さんであり、和田さんだった」
引退発表の前日に杉内から携帯に着信があり報告を受けた。
「寂しいことはなかった。ケガをしてからの状態をずっと見てきたので。お疲れ様でしたという気持ちしかないですね。本人からは『俺より長くやれ』と言われたので僕も、もう少し現役にしがみついていきたい」
プロ18年目のベテランは今年の8月で36歳を迎えた。杉内との約束を守るべく山崎勝はグラウンドに立ち続ける。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)
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