プロ入りから18戦で0勝13敗「名前だけのエースなんじゃないかと」
札幌ドームに出来たライオンズブルーの歓喜の輪。その輪の中で、今季の埼玉西武を背負ってきたエース、菊池雄星にも笑顔が弾けた。今季は23試合に投げ、チームメートの多和田に次ぐリーグ2位の14勝をマーク。防御率3.08とこちらもリーグ2位の数字を残し、大黒柱として大車輪の働きを見せた。
優勝決定後に宿舎で行われた優勝会見。左腕は率直な胸の内を明かした。「9年間いろんなことがあったんですけど、今日が1番9年間で嬉しい1日になりました。監督さんのことを胴上げしたいと2年間思っていましたし、強力打線に助けてもらいながら、なんとか1年戦ってこれたと思います」。その表情は柔らかかった。
左腕が今季最も印象深い試合にあげたのは、やはりV決定から2日前、9月28日の福岡ソフトバンク戦だった。7回を投げて8安打3失点(自責点は1)。プロ入りから18試合未勝利、13連敗中だった天敵福岡ソフトバンクから、19試合目にして初勝利を挙げ、チームは12連勝で優勝へ王手をかけた試合だ。試合後のお立ち台では目に涙を浮かべたほど、自身の中でも強く意識していた相手だった。
この日の会見でも菊池はこう語った。「辻監督になってエースという形で指名していただいたんですけど、やはり福岡ソフトバンクに勝てていなかったので、形だけというか、名前だけのエースなんじゃないかと、負けるたびに自分のことを責めていた部分があった。中村さんに打ってもらったり、山川に3ラン打ってもらって、打線の援護もありながら、勝たせていただいた思い出に残る勝利だと思います」。
この同じ質問に対して辻監督もこの一戦を挙げた。「やはり雄星が福岡ソフトバンクに勝った試合ですかね。なんかここで雄星がちょっと変わってくれるんじゃないか、と、そういう意味で大事な試合と思っていて。彼も今年非常に苦労してきた選手ですし、どんな形であれ、福岡ソフトバンクにやっと勝てたというのが、嬉しかったですね」。指揮官の言葉を横で聞いていた菊池の表情が、なんとも嬉しそうだった。
クライマックスシリーズのファイナルステージでも戦う可能性が高い福岡ソフトバンク。苦手意識を払拭できた意味は、先を見据えても大きいはず。10年ぶり22度目のリーグ制覇を果たした埼玉西武。“真のエース”となった菊池がCS突破、そして日本一へと導く。
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