9月30日、札幌ドームで行われた北海道日本ハムと埼玉西武の一戦。優勝へのマジックを「1」としてこの日の試合を迎えた埼玉西武が1対4で北海道日本ハムに敗戦。しかし、福岡ソフトバンクが千葉ロッテに敗れ、2008年以来10年ぶりとなるリーグ制覇を成し遂げた。試合後には札幌市内のホテルで共同記者会見が行われ、辻監督、中村選手、栗山選手、榎田投手、秋山選手、浅村選手、菊池投手、山川選手、多和田投手が出席し、優勝の喜びを語った。
以下は共同記者会見の全文。
-今のお気持ちは? 胴上げのときには何がよぎりましたか?
(辻監督)ホッとしています。喜びと、私を胴上げしてくれるたくさんの選手たちの気持ちが伝わりました。ここまで頑張ってくれて、うれしい思いがすべてです。
-今年のライオンズの強さはどんなところ?
(辻監督)数字で見れば、打線大爆発。個々に特徴を持ったキャラクターに富んだ選手たちがいました。投手を含め1点を大事にとって、1点を大事に守り抜こうという戦いが理想だと思って取り組んだが、劣勢になっても最後まであきらめず選手たちがその日の勝利に向けて頑張ってくれました。
-チームの成長は?
(辻監督)優勝経験のない選手がほとんどでした。昨年の2位からもう一つ飛躍するためには優勝しかないと思っていました。開幕8連勝というスタートから(首位から)一度も落ちることなく、走り抜けたことに誇りに思います。
-ここを乗り切れて大きかったという時期はありますか?
(辻監督)9月の中頃、ソフトバンクさん、日本ハムさんと戦う9連戦に入る前日。怖いというか、この連戦がどういう結果になるのか? どうやったら乗り切れるのか? という不安に今シーズン初めて襲われました。見事に連勝、連勝と素晴らしいゲームをやってくれて、マジック1になったときに優勝できると思いました。
-キャプテン浅村選手の働きについてどう思いますか?
(辻監督)よいしょするわけではないですが、申し分なしです。もともと口数が多い方ではないですが、十分にグラウンドで選手に背中を見せながら、打つことに関しても状況に応じた打撃をしてくれた。全試合に出場してくれてチームを引っ張ってくれました。(記者会見にいる選手)全員が手本となって取り組んでくれた。
-選手のみなさん、今の気持ちを教えてください
(浅村選手)素直にうれしいです。(胴上げのときは)終盤にプレッシャーを感じてやっていたと思いますが、それが一気に解放されたような気持ちでした。
(山川選手)うれしかったです。(胴上げをして)監督さんと被りますが、追い詰められていましたし、優勝したことがなかったので、ホッとしました。
(中村選手)本当にうれしいと思いました。10年前と比べてそれほど心境の変化はないですが、10年前も同じ札幌で負けて胴上げをしているので似ているな、と思いました。
(栗山選手)うれしいです。おかわり(中村選手)と一緒で、本当は勝って決めるのが一番で、優勝を決める一打を自分が打つつもりだったのですが、全然打てなくて残念でした。
(秋山選手)うれしいです。4月の勢いのまま行けないというのを5月に痛感して、それぞれが壁や疲労にぶつかって乗り越えて、6月の交流戦あたりからチームの方向が見えて、乗り切った感じがしました。
(菊池投手)9年間、いろいろなことがあったのですが、今日が一番うれしい一日になりました。監督さんを胴上げしたいと2年間思っていましたし、素晴らしい強力打線に助けてもらいながら1年間なんとか戦えました。
(多和田投手)すごくうれしいです。野手の方がとても打ってくれて、自分もそうですが、投手陣のみなさんがとても助かったと思います。
(榎田投手)とてもうれしいですし、正直、去年の今頃の自分のことを考えたら「天国と地獄」ではないですが、埼玉西武に来られてよかったです。求められて優勝するために呼ばれたと思って、一生懸命やった成果が実ってよかったです。
-印象的な試合、シーンと理由を教えてください。
(辻監督)急に言われても思い出せないのですが、数々のサヨナラなど多々ありましたが、(菊池)雄星がソフトバンクに勝った試合ですね。雄星がちょっと変わってくれるんじゃないか、非常に大事な試合でした。どういう形であれ、ソフトバンクにやっと勝てた。近いこともありますが、うれしかったです。
(浅村選手)山川がヘッドスライディングした試合です。めったに見ないシーンですし、印象的に残っているといえばその試合ですね。
(山川選手)いつか忘れましたが、日本ハムにひっくり返して、サヨナラ勝ちした試合が印象的です。「お客さんが帰らないチームにしよう」と言っていたのでそれを実行できた。そのとおりになった試合だったかな、と思います。
(中村選手)浅村、山川、栗山が打った3者連続ホームランです。3番、4番、5番が打って、僕が6番だったのでプレッシャーに押しつぶされそうになりました。(その後に)しょうもない打撃をしてくやしかったです(笑)
(栗山選手)自分が満塁ホームランを打って、おかわり(中村選手)が3ランを打って、そのあと2人そろってお立ち台に立ったのが印象的です。(理由は、記者会見で)たまたま隣に座っているのでそれを言ったほうがいいかな(笑)
(秋山選手)先日の逆転3ランが印象に残っています。あんまり逆転のシーンに絡んだ試合が少なく、ああいった場面で決められたことと、ベンチ、ファンの歓声が自分が感じた中で今年、今までで一番でした。あれだけチームメイトもファンも喜んでくださった1本を打てたのは大きかった。
(菊池投手)28日のソフトバンク戦は印象に残っています。辻監督になられてエースに指名していただいて、ソフトバンクに勝てなかったので「形だけ、名前だけのエース」と負ける度に自分のことを責めていた部分もありました。中村さん、山川に打ってもらって打線の援護を得ながら勝たせてもらったのは思い出に残る試合になると思います。
(多和田投手)すごい試合が多すぎて、選べないです。自分では良い投球がなかったが、群馬で(投げたときに試合中に)子供が産まれたので印象に残っています。
(榎田)10勝できた試合も印象にありますが、古巣の阪神に勝てたのが気持ち的には大きかったです。そこで西武の一員になれたという思いがあります。
-10年かかりました。気が早いですが、次の優勝へは「続けて」という思いですか?
(辻監督)もちろんです。(40周年の)今年が始まるとき10周年、20周年、30周年のときには必ず優勝しているとプレッシャーをかけられ、去年は2位だったから優勝しかないというプレッシャーをかけられました。ただ、それだけの力は十分にあると信じていましたし、優勝できたことはうれしいですし、来年も再来年も勝ちたいです。
-監督が現役のころは毎年のように優勝した非常に強いチームでしたが、今年のチームと比較して強さの違いはありますか?
(辻監督)打線の破壊力で言ったら、今の方が総合的にホームランも打てますし、走れますし、迫力というところでは打線は上だと思います。あんまりそういう質問うれしくないんですが(笑)。結果的に投手力も厳しい厳しいと言われていましたが、それがチーム力です。打線と投手力でうまく乗り切った。昔は昔です。今では全く野球が違っていると思います。
-昨年のキャンプでお父さんが亡くなられた時にもチームに帯同し続けたと思いますが、その思いは?
(辻監督)ちょうど(亡くなったのが)キャンプインの日でしたが、父親とは前日にお別れをしました。野球が好きな父だったので「野球やってろ」と必ず言うと思いました。監督としてスタートの日ですから、選手と迎えたいというのがありました。母ももういないのですが、試合の時は国旗掲揚のときには両親のことを必ず思っていました。喜んでくれていると思います。
-ここは自信、手応えがあることを教えてください
(栗山選手)みんな、力を合わせて一致団結して一つのゲームに向かう。一つになれる強みがあると思います。
(中村選手)みんなそうだと思いますが、ムラなくできるのがいいと思います。
(山川選手)僕自身は試合に出続けられたことが一番。そこがよかったです。チームとしてはよかった。
(浅村選手)チームでは誰かが打てなくても誰かが打ってカバーできる。投手が打たれても打線がカバーできる、打線が打てないときに投手がカバーできる、そういうところは強くなった部分でもあるかな、と思います。自分はないです。
(秋山選手)個人的には試合に出続けたことは誰にも負けないと思います。
(菊池投手)個人的には9年間、良いこと、悪いこと、苦しいことを経験したので、その経験は大きな財産だと思います。チームは勝つたびに一つになる実感がありましたが、これからCS、日本シリーズと残っているので、それを強みにして頑張っていきたいです。
(多和田投手)個人としては1年間、投げ続けることができて、それが一番自分の自信、今後につながると思います。
(榎田投手)自分は、まだチームに来て半年しか経っていませんが、客観的に見てすごい打つというのがあります。ゲームを作ればなんとかなると思ってやっていたので、そのは強みです。野手が打ってくるのが大きいと思ってやっていました。それがチームの強さかと思います
-送りバントがリーグ最少でしたが、それが少なかった理由は?
(辻監督)もちろんゲーム前は相手投手の兼ね合いで考えますが、防御率を見て普通に考えれば4点取られるチームではあります。ですが、うちの野手は足があります。内野ゴロでゲッツー崩れになれば走れるというのを踏まえれば打たせます。
(選手たちは)成長の途中だと思っています。走者がいるといったシチュエーションでどういう打撃をすればいいか、選手が考える、実行する。それで結果が良かった、悪かったときに「ここがどうだったのか」反省するという作業は頭にありました。そういう中で状況に応じて打撃をしてくれますし、成長をシーズンを通じて感じています。
足(を防ぐの)は投手と捕手の共同作業ですが、追い込まれてからのしつこさは成長したと思います。この試合の中で成長する2年目には必要だと思っていました。当然、全員はホームランを打てるという強みはあります。相手投手がビビってくれれば四球を選べる、というのもあるので、選手たちが考えて野球をやってくれたのだと思います。
-就任するまで3年連続Bクラスのチームを2年で優勝に導きましたが、当初から変わったところは?
(辻監督)就任当時から見ていて、全員能力があると思っていました。その能力をどう生かせるかで、チーム全体と個々に自分の良さを出す。山川なら相手に恐怖を与える長打が魅力。もちろん中村もです。個々のいいところを伸ばす、もっと出てくれば伸びると思っていた。この選手は勝負強い選手もいれば、ここ一番で走ってくれる選手もいたので、そういうバランスなどで成長したと思います。
-森選手の捕手、打者としての成長について
(辻監督)森の場合は打撃も魅力ある選手ですが、まず捕手として試合に出続けるように育てなければいけないというところから、ある程度試合数をこなしてきたので、大きな成長を感じています。
-強力打線は作ろうと思って作ったのでしょうか? 結果的になったのでしょうか?
(辻監督)チームづくりは強力打線を作ろうとも思っていなかったですが、能力のある選手がこれだけいた、ということだと思います。
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