スポーツにライバルは付き物だ。それが同じ街をホームとする相手であれば、なおさらライバルとしての要素が強くなる。
いわゆる「ダービーマッチ」はヨーロッパサッカーを中心に過激とも言われるほど盛り上がりを見せるが、メジャーリーグでも、長年の歴史からさまざまなライバル関係が存在する。その中でも、同じ街をホームとしたチーム同士の対戦時にどういった意味合いがあり、取り組みが行われているのか注目してみたい。
メジャーではニューヨークを本拠地とするヤンキースとメッツが対戦する「サブウェイ・シリース」が代表的だ。それ以外にもロサンゼルスを本拠地とするドジャースとエンジェルスの「フリーウェイ・シリーズ」、さらにはシカゴを本拠地とするカブスとホワイトソックスが対戦する「クロスタウン・シリーズ」などもある。
メジャーではプレーオフへ進出するために一番手っ取り早いのが、地区を優勝することだ。地区を制するものが優位に立てるのは言うまでもない。その中でシーズン中に訪れる同じ街をホームとする相手との試合はどういった意味合いを持つのだろうか。
米国でよく言われるのは「We are fighting for bragging rights(我々は自慢する権利のために戦っている)」というフレーズだ。
例えばニューヨークに住んでいてヤンキースファンになるか、メッツファンになるかは親や友人からの影響、どちらかのスタジアム寄りに住んでいるかなど環境に左右される部分も多いだろう。いわば、「ふとしたきっかけ」によるものでもある。周囲にはそれぞれのファンが混在していて、職場や学校内でも双方のファンが存在する環境が多い。
米国ではスポーツは日々の話題の中心になっている。自分が応援しているチームが勝利すれば、負かした相手のファンに対しても大きな顔ができる。ちょっとしたジョークも含めた要素が「ダービーマッチ」には存在する。
そのため出会った彼女や結婚相手がライバルチームのファンだったということも珍しくない。そのためよく観客席が映像で映されて、別々のチームのユニフォームを身にまとうカップルの存在も多く見られる。
【高速道路標識を使った盛り上げも】
ロサンゼルスを本拠地とするエンジェルスとドジャースは同じ高速道路を利用して、それぞれの球場を行き来できる環境にある。高速道路の標識には、NORTH(北)にドジャースのロゴが、そしてSOUTH(南)にはエンジェルスのロゴが描かれていているところもあり、この2チームが街の至るところを彩っている。
2015年にはシーズン開幕前の4月2日に開催される「フリーウェイ・シリーズ」に伴い、面白い取り組みが行われた。高速道路から見える広告看板を利用して、この対決を盛り上げた。その標識には「Is your MVP Red or Blue(あなたのMVPは赤を身にまとっていますか?それとも青ですか?)」という問いかけだ。
その看板にはメジャーを代表するエンジェルスのマイク・トラウト選手、そしてドジャースのクレイトン・カーショー投手の顔写真も掲載されていた。南カルフォリニア州を代表する2チームのスターが両リーグのMVP賞を受賞したことから、ツイッターなどのソーシャルメディアでも盛り上がり、両チームが共同でマーケティング企画への取り組みを実行したきっかけとなった。
広い米国だからこそ、地元愛そして球団愛はそれぞれが強く持っているのかもしれない。戦う選手たちにとっては長いシーズンを通してみればただの1勝かもしれないが、地元の人々にとっては翌年の対戦まで自慢する権利を得ることができる、1勝以上の重みがある。
米国では2013年シーズンから地区再編に伴い、アメリカンリーグ、ナショナルリーグそれぞれに15球団が存在するようになった。そのため毎日どこかで交流戦が行われ、交流戦そのものはさほど特別なものではなくなってしまった。それでも、同じ街を本拠地とするチーム同士の対決は1年の間に「ホーム&アウェイ」のシリーズに限ることがほとんどだ。
日本のプロ野球でも2005年に交流戦が導入され、リーグを交差した対戦も珍しいものではなくなった。それでも数年に1度しか訪れない地での対戦では、さまざまな企画が開催されるようになった。
プロ野球は5月31日から交流戦が開始する。同じ地域を本拠地するチーム同士の対決では、今年はオリックス・バファローズが6月14日から甲子園で阪神タイガースと試合を行う。それ以外では「首都圏シリーズ」などがあり、千葉ロッテマリーンズは6月10日から東京ヤクルトスワローズを本拠地に迎える。今シーズン何度か行われた取り組みだが、その週末の土曜にはQVCマリンフィールドでサンライズレッドの胸に「CHIBA」と書かれたユニフォームが来場者全員に配布される。
日本での交流戦の歴史は今季で12年とまだ浅い。今後さまざまな戦いを生み出していくことによって、さらなる深みが出てくるだろう。そしてその戦いを盛り上げていく取り組みにも注目していきたい。
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