「パ・リーグ女子(パリ女)」とは、パ・リーグを愛する女性のこと。特に自分なりの野球の楽しみ方を確立し、野球のために驚異的なバイタリティを発揮する方のことを言う。以前「パリ女」を取材させていただいた「パ・リーグインサイト」編集部は、彼女たちの強烈な個性にリスペクトを抱くとともに、その知られざる生態に関する興味を深めた。
≫パ・リーグ女子注意報【変態系女子】
現在、パシフィックリーグマーケティング株式会社で「パーソル パ・リーグTV」配信業務に携わるENAさんとMEIさんは、オリックスの公式ダンス&ヴォーカルユニット「BsGirls」の元メンバーであり、タイプの違う「パリ女」でもある。
そこで今回編集部は、ZOZOマリンスタジアムで千葉ロッテvs埼玉西武を観戦する2人に密着。「パリ女」としての一面を披露してもらい、球場の新たな楽しみ方の示唆をいただくことにした。「“はたらく”パ・リーグ女子」の華麗なる1日とともに、舞台となったZOZOマリンスタジアムの魅力をお伝えできればと思う。
MEIさんは「パリ女」の中で、選手に恋愛感情に近いものを抱くタイプ・「ラブ系」である。推しているのは千葉ロッテのチームリーダー・鈴木大地選手で、ちょっと変わったこだわりは「選手がファンサービスをしているところを見るのが好き」だということ。
ENAさんは、選手の身体のパーツに惹きつけられるタイプ・「変態系女子」。「首の筋肉」が好きで、埼玉西武のベテラン・栗山巧選手の首が刺さるらしい。どのあたりが基準になっているか身振り手振りを交えて説明してくれたが、残念ながら編集部には難易度が高かった。
その日ENAさんとMEIさんは、海浜幕張駅からシャトルバスでZOZOマリンスタジアムへ。開場前に球場に到着し、まず「マリーンズストア ミュージアム店」に向かう。
MEIさんは鈴木選手のレプリカユニホームをお買い上げ。本拠地の選手は白いホームユニを着用するが、「カッコイイ」ので黒いビジターユニに決めた。
試合開始の1時間半ほど前、スタジアム入場。荷物検査を通過すると、2人は興奮のあまり突然走り出す。細い通路を抜けて一気に視界が開け、眼下に美しいフィールドが広がる瞬間は、確かに爽快だ。野外球場の醍醐味だろう。
フィールドシート付近では、千葉ロッテの選手がお客さまにサインをしている最中だった。「ファンサービスを見るのが好き」なMEIさんは、しばし立ち止まって遠くからその光景を眺める。小さな子どもに優しい三木亮選手には思わず「カッコイイ」と高い声が出た。
ZOZOマリンスタジアムはグルメも素晴らしい。球場外周のケータリングカーと、テントゾーンはいい匂いをさせて食欲を誘い、球場内のフードメニューもバラエティ豊かだ。寒いときにはあったまる、暑いときにはビールがおいしくなる「もつ煮込み」が名物。
今回ENAさんは、「選手の台所」の「大地と勝つ!玉カレー」「菅野選手のミスターダブルホットドッグ」、MEIさんは「ナイスボール」の「角中選手の勝負飯・宝島牛丼」に舌鼓を打った。ちなみに編集部のおすすめは「Bamboo forest」の「KEBABナンドック」だ。おそらく大抵の人が想像する「球場で買う650円のナンドッグ」の3倍はでかい。
ご飯を食べながら、試合開始を見届ける。初回、千葉ロッテのスタメンは「サブマリーンズ」の子どもたちと一緒に守備位置に就くが、そこもMEIさんのおすすめポイントだ。子どもたちに合わせて屈んだり、膝をついたりする選手の姿が乙女心をくすぐるらしい。
試合が始まると、すぐに千葉ロッテが先制し、その後は緊迫した投手戦が繰り広げられた。千葉ロッテといえば、12球団屈指の迫力を誇る「ファンの応援」も見どころだろう。印象的な応援歌、チャンステーマ、唯一無二の一体感の虜になってしまう人が後を絶たない。
試合中、ほどよいところでスタジアム散策。フロアの壁の至るところに選手の巨大パネルが設置されており、記念撮影や等身大の選手との背比べができる。「大地に挑戦!飛びマクレ」は、鈴木選手が打席に向かう際のルーティン、約80センチのジャンプに挑めるスポットだ。
2人は「勝利のハートメイク」も実践。これは資生堂の「インテグレート」とパ・リーグのコラボメイクで、ほっぺたにチークでハートを描いて応援マインドを表現する。
パ・リーグは2016年から、資生堂とともに「女性の応援文化を作る」取り組みを実施してきた。各本拠地球場では「勝利のハート メイクルーム」が常設されており、試合開催時はいつでも、誰でも使用することができる。
スタンドに戻り、ENAさんは埼玉西武、MEIさんは千葉ロッテの応援に精を出す。
だがMEIさんの願いむなしく、千葉ロッテは惜敗。選手が肩を組んでファンとともに飛び跳ねる勝利パフォーマンス「We Are」を体験することはできなかった。
帰り道「あのエラーはもったいなかった」「最後の盗塁は良かった」と、試合の感想を言い合いながら、「“はたらく”パ・リーグ女子」の華麗なる1日は終了。編集部は、夜の幕張に消えていく2人の背中を見送った。
今回ENAさんとMEIさんには普段通り、自然体で野球観戦を楽しんでもらったが、好きなものに夢中になっている女性の姿の、なんと魅力的なことだろう。好きな選手が凡退したとき、活躍したときなどに飛び出すリアクションも面白いが、好きな選手を褒め称えるときに突如発揮される研ぎ澄まされた語彙には、羨望すら覚えた。
近年、各球団の努力によりプロ野球の観客動員数は増え続けている。しかし新規層の開拓が難航し、いわゆるファンの「コア化」が進む。そんな中で、元気な女性ファンの存在は球場を華やかにすること、常にポジティブなその応援は前向きな力を持つことを、再確認できた。
「パリ女」が「パリ女」を呼び、まだまだ敷居の高い野球観戦というものを、「ポピュラーなお出かけスポット」のひとつにする未来を思い描いてみる。プロ野球の新しいファン獲得のために、「パリ女」はきっと大事なカギを握っている。
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