支配下「最小」選手が生きる道。埼玉西武・水口選手の今季は飛躍のシーズンとなるか

パ・リーグ インサイト

2017.7.11(火) 00:00

メットライフドーム(C)SEIBU Lions
メットライフドーム(C)SEIBU Lions

180センチ以上の高身長の選手がひしめくプロ野球界において、身長が高い、大きな体という要素がある程度のアドバンテージを持っていることは確かである。しかし、そんな中で、奮闘を続ける小兵がいる。それが埼玉西武の水口選手だ。

水口選手の身長は163センチ。現在支配下登録されているNPBの選手の中では最も小柄で、最高身長の北海道日本ハムのマーティン投手と比べると40センチもの差がある。今季はすでに34試合に出場するなど、一軍での出場機会を着実に増やしている水口選手だが、その道のりは決して平坦なものではなかった。

独立リーグの1つである香川オリーブガイナーズで、NPBを目指して戦っていた水口選手だったが、2011年に左肘を故障。これが原因で練習生となった水口選手を待っていたのは「裏方」としての仕事だった。ほかの選手のサポートはもちろんのこと、時には着ぐるみの中に入りファン対応をしたこともあった。

怪我が完治した後、独立リーグでの活躍が目に止まり、2012年に埼玉西武から育成1巡目で指名を受けた。当初は育成登録のため背番号は3桁の「123」だったが、ファームで2桁の盗塁を記録するなどの活躍が認められ、2015年に念願の支配下登録。新しい背番号「00」を背負い、日本野球界最高峰で戦うプロの仲間入りを果たした。2016年には一軍初出場を果たすと、初安打・初打点を決めるなど結果を残している。

そんな水口選手の持ち味は、50メートル6秒を切る俊足と、小回りの利く身体を生かした堅実な守備だ。今季は4月29日に一軍昇格し、その日の千葉ロッテ戦で即スタメン出場。第1打席でいきなり安打を放つとすかさず盗塁も決め、ファンの心に強くその存在を印象付けた。以降は一軍に定着し、終盤の代走や守備固めとして出場機会を得ている。

しかしながら、今季は打者としての成長も著しく、高いミート力を生かした堅実な打撃で、今季の成績は40打数14安打3打点、打率.350。三振はわずか「5」である。また、5月20日の福岡ソフトバンク戦にスタメン出場すると、自身初となる二塁打を放って勝利に貢献。今後はバットでのさらなる活躍にも期待が持てるだろう。

スターティングメンバーには強打者が多く揃っており、豪快なイメージの強い埼玉西武打線だが、主力選手だけではシーズンを通して現在の順位を保っていくのは難しい。チームのさらなる浮上のためには、主力を「裏」から支える存在が欠かせないことを忘れてはならない。一軍の舞台で野球をするための苦労と、憧れの場所でプレーをしているという充実感。28歳にしてその両方を知っている水口選手が、次第にチーム全体に疲れが見え始める後半戦の支えとなれるか。小さな「縁の下の力持ち」から、これからも目が離せない。

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