不振に苦しんだ2年目。転機となった秋季キャンプでのフォーム改造
入団2年目の昨季、開幕戦のスタメンに抜てきされた福岡ソフトバンクの正木智也選手。しかし、その期待に結果で応えられず出場は15試合にとどまった。さらに、二軍でも打率1割台を記録するなど、昨年は深刻な打撃不振に陥っていた。そうして迎えた11月の秋季キャンプでは、動作解析をもとにした科学的アプローチから自身の打撃を見つめ直したという。チームメートの近藤健介選手やドジャースの大谷翔平選手を参考につかんだテイクバックの感覚と、データに基づく分析からアッパー気味のスイングへとフォームの改造に着手。すると、台湾で行われたウインターリーグで好成績を収め、復調の兆しを見せた。
今季は中盤からスタメンに定着し、リーグ優勝に貢献
その取り組みを続けて迎えた今季は、6月までに二軍で打率.317、6本塁打を記録。日本生命セ・パ交流戦終了直後に一軍昇格を果たすと、以降の81試合中75試合でスタメン起用され、キャリアハイとなる7本塁打29打点を記録する活躍でリーグ優勝に貢献した。今やチームに欠かせない存在へと成長を遂げた正木選手であるが、その進化を詳細なデータからも見ていきたい。
今季はフライが増加したことがキャリアハイの要因に
もともと振り下ろすイメージだったスイング軌道をアッパー気味へと変えたと正木選手は語っているが、この変化は打球の内訳にも表れていた。過去2年と比較すると、今季はフライの打球が増加。このフライ割合55.8%はパ・リ―グで200打席以上の打者66人中9番目の数値で、本塁打王の山川穂高選手(福岡ソフトバンク)やフランミル・レイエス選手(北海道日本ハム)といった、リーグを代表するスラッガーらと遜色ない数字を記録している。
外野の定位置を越えるフライが増加
ただ、フライが増えたといっても、内野手の頭上に打ち上げるようなポップフライでは、成績の向上につながらない。そこで、フライの飛距離を確認すると、今季は過去2年と比較して飛距離の短い打球が大幅に減少。フライ打球のうち約7割が75m以上の当たりとなっており、外野の定位置を越えるような長打性の打球が増加していた。今季の正木選手は単にフライが増えただけでなく、バットでしっかり捉えた強い打球が多かったことが分かる。
打球の角度だけなく、打球の方向にも変化
また、打球に関しては、角度だけなく方向にも変化が表れていた。過去2年は引っ張った左方向への打球が多かったが、今季はセンターから右方向への割合が上昇。センター方向にも伸びる打球を放てるようになったことが特徴で、今季記録した7本塁打のうち3本がセンター方向だった。
センター方向の長打力はリーグトップクラス
昨季まではバックスピンのかかったフライが多かったという正木選手。打撃フォームを改良した今季は、ボールとバットの面同士がしっかり当たった強い打球が飛び出すようになったことで、中堅手の頭上を越える当たりを連発した。センター方向への長打率はリーグ3位となっており、和製大砲として今後の活躍を期待させる成績を示している。
クライマックスシリーズのファイナルステージ第1戦では、先制タイムリーを放ってチームに勢いを与えた正木智也選手。レギュラーシーズンでは得点圏打率.356を記録しており、リーグ最高の打撃成績を残す近藤選手の後を打つバッターとして、勝負強さが光る。自身初出場となる日本シリーズの舞台でも持ち前の打棒を発揮し、チームにチャンピオンフラッグをもたらしたい。
※文章、表中の数字はすべて2024年レギュラーシーズン終了時点
文・データスタジアム
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