7球団競合の大器は完成間近? 後半戦絶好調な清宮幸太郎の打棒をひもとく

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北海道日本ハムファイターズ・清宮幸太郎選手 ©パーソル パ・リーグTV
北海道日本ハムファイターズ・清宮幸太郎選手 ©パーソル パ・リーグTV

開幕出遅れるも後半戦に打棒が爆発

清宮幸太郎選手 期間別打撃成績 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 期間別打撃成績 ©データスタジアム

 7年目を迎えた今季も、スタートは決して順調ではなかった。春季キャンプ直前に左足を捻挫した影響で、開幕に出遅れた北海道日本ハムの清宮幸太郎選手。4月途中に一軍へ合流したもののバットは振るわず、5月から6月にかけて再び二軍生活が続いた。本人いわく、転機となったのは7月中旬に同僚のアリエル・マルティネス選手からもらったアドバイスのようだ。前半戦最後の2試合で計7安打2本塁打の活躍を見せると、オールスター明けもそのままの勢いで快打を連発。後半戦はここまで打率.335、9本塁打をマークしている。これまで打撃の安定感という面で苦しんできた同選手が高打率を維持し、同時に持ち前の長打力も発揮できているのはなぜか。本稿では打率と長打それぞれにつながる、2つの変化を紹介したい。

打率向上のカギは外角の変化球への対応

清宮幸太郎選手 変化球のコース別打率 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 変化球のコース別打率 ©データスタジアム

 はじめは打率の向上に注目したい。ボールを引っ張ることで力強い打球を飛ばす、いわゆるプルヒッターの清宮選手は、毎年外角球を苦手としており、過去年度の外角打率は最も高いシーズンで.224止まりだった。投手は基本的に外角を中心に投球を組み立てるため、投球の約半数は外角に投じられる。そのため、外角球を打てないことが低打率の主な原因となっていた。今季も前半戦はその傾向が変わらず、特に外の変化球に対して打率.133と苦しんでいたが、後半戦に入るとその外角変化球の打率が.366と向上。ストレートを含めた外角打率も.318と例年にない好成績をマークしている。

清宮幸太郎選手 外角の変化球に対する打球方向割合 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 外角の変化球に対する打球方向割合 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 外角の変化球に対する打球性質割合 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 外角の変化球に対する打球性質割合 ©データスタジアム

 では、なぜ外の変化球をヒットにできるようになったのだろうか。まず打球方向を見ると、前半戦は全体の6割近くをライトへ引っ張っていたものが、後半戦はレフト方向への打球が増えていることが分かる。また、それに伴って打球性質の割合も大きく変化しており、ゴロ打球の割合が大きく低下し、ライナーとフライの割合が上昇している。つまり、これまでは外の変化球を強引に引っ張り、引っかけてゴロにすることが多かったが、コースに逆らわないバッティングをすることで、安打になりやすいライナーとフライの打球を打てるようになったというわけだ。

 ここまで打率向上の要因について見てきたが、苦手としていた外の変化球の克服がもうひとつのトピックである長打にもつながっているのかというと、実はそうではない。二塁打こそ増えているものの本塁打は出ておらず、ヒットはあくまで単打が中心だからだ。

ストレートに対する長打が増加

清宮幸太郎選手 ストレート打撃成績 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 ストレート打撃成績 ©データスタジアム

 長打が増えている要因は主にストレート打撃成績の向上にある。前半戦は1本だった本塁打が後半戦は5本を数えており、長打力を表す指標であるISOも前半戦から大きく上昇している。変化球のISOは.188から.184と逆に低下しており、長打の増加につながっているのはストレートに対する結果であるといえる。

ストレートを捉えた際のフライ打球の質が向上

清宮幸太郎選手 ストレートに対するフライ打球が本塁打になった割合 ©データスタジアム
清宮幸太郎選手 ストレートに対するフライ打球が本塁打になった割合 ©データスタジアム

 前述の打率向上の項では、その要因として打球方向や打球性質の変化を紹介したが、ストレートを捉えた際の打球については、例えば引っ張り方向の打球やフライ打球が増えるといった長打につながる割合の変化は見られなかった。変わったのはフライ打球の質そのものだ。HR/FBはフライ打球に占める本塁打の割合を表しており、ISOと同じく長打力の指標として用いられる。後半戦はストレートに対するHR/FBが前半戦の約2.5倍の14.3%となっており、これもISOと同じくリーグ屈指の優秀な数値だ。後半戦はストレートを以前より強く遠くに飛ばせるようになったといえるだろう。

 以上のように、現在の清宮幸太郎選手は外の変化球を逆方向に飛ばすようになった一方で、決して速球への対応力を損なうことなく、むしろリーグ屈指の強さを発揮。これによって打率と長打という2つの要素を見事に両立させている。プロ入りからの6年間は、才能の一端をところどころでのぞかせながら好成績を残せずにいたが、後半戦の躍進からは本格ブレークの予感が漂っており、ポストシーズンや来季以降の活躍を期待せずにはいられない。7球団競合の大器が完成する日はもう間もなくだ。

※文章、表中の数字はすべて2024年9月23日終了時点

文・データスタジアム

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