オリックス一筋19年の「浪速の轟砲」。T-岡田が残した“3本のスリーラン”を振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

オリックス・バファローズ T-岡田選手【写真:球団提供】
オリックス・バファローズ T-岡田選手【写真:球団提供】

低迷期から黄金期に至るまで、主力打者としてオリックスを支え続けた

 9月8日、オリックスがT-岡田選手が今季限りで現役を引退することを発表した。T-岡田選手は2005年にオリックスに入団して以来、チーム一筋19年の現役生活を送ってきた。和製大砲として低迷期から黄金期に至るまでバファローズを支え続け、豪快なバッティングで幾度となくファンを魅了してきた。

 今回は、T-岡田選手がプロの舞台で残した球歴に加えて、T-岡田選手のキャリアの中でも特に印象に残る「3本のスリーラン」について紹介。見る者の記憶に強く残る美しい本塁打を放ってきた和製大砲の足跡を、パーソル パ・リーグTVの映像とともに振り返っていきたい。(記録は9月13日の試合終了時点)

22歳の若さでタイトルを獲得。その後も和製大砲として長く活躍

 T-岡田選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

T-岡田選手 年度別成績 ⓒPLM
T-岡田選手 年度別成績 ⓒPLM

 T-岡田選手は履正社高校から、2005年の高校生ドラフト1巡目でオリックスに入団。入団から4年間はレギュラー定着を果たせなかったが、登録名を本名から「T-岡田」に変更したプロ5年目に大ブレイク。打率.284、33本塁打、96打点、OPS.933という見事な成績を残し、22歳の若さで本塁打王のタイトルを獲得する飛躍のシーズンを送った。

 その後の3年間は本塁打20本未満とやや苦しんだが、2024年に24本塁打、OPS.824と復調を見せ、熾烈な優勝争いを繰り広げたチームを力強くけん引。2016年には打率.284、20本塁打、OPS.828と好成績を残し、2017年には自身2度目の30本塁打超えとなる31本塁打を記録するなど、和製大砲としてチームの中軸を担い続けた。

 30歳を超えてからも強打者として活躍を続け、2020年は100試合で16本塁打を放ってOPS.797と一定以上の数字を記録。そして、2021年には115試合で17本塁打と随所で持ち前のパワーを発揮し、主力の一人として25年ぶりのリーグ優勝にも大きく貢献した。

 その後も活躍が期待されたが、2022年以降は2年続けて打率1割台と深刻な不振に陥り、出場機会も激減。復活をかけて臨んだ今季も、3試合の出場で無安打と結果を残せなかった。広い大阪ドームを本拠地としながら通算204本塁打、715打点を記録し、長きにわたってチームを支えた生え抜きの強打者が、惜しまれながらバットを置く決断を下した。

 ここからは、T-岡田選手が現役生活を通じて放ってきた数々の本塁打の中から、とりわけ大きなインパクトを残した3本のスリーランについて、それぞれパーソル パ・リーグTVの映像をもとに紹介していきたい。

7点差を大逆転した試合を締めくくるサヨナラ3ラン(2010年6月2日)

 オリックスは8回表を終えた時点で7点のビハインドを背負っていたが、8回裏に打線が奮起。この年のセ・リーグを制した中日の強力投手陣を攻め立て、1イニングで一挙に7点を奪う猛攻を見せて同点に追いついた。そして、同点で迎えた延長11回裏の1死1、2塁という状況で、4番を務めるT-岡田選手に打席が回ってきた。

 T-岡田選手が低めのコースに投じられたボールを巧みにすくい上げると、高い弾道を描いた打球はそのままスタンドに飛び込むサヨナラ3ランに。まさに四番としての期待に応える鮮やかな一打で、4時間49分にわたる大熱戦に最高のかたちで終止符を打った。

 22歳の若さで本塁打王を獲得した2010年シーズンに飛び出した、ホームランバッターとしての天性の素質を感じさせる見事な一打。キャリアの初期から高い打撃技術を有していたことを示すこのホームランは、この活躍を一過性のもので終えることなく、長きにわたってプロの舞台でプレーを続ける未来を予見させるものでもあった。

チームをシーズン終了の危機から救う、劇的な逆転3ラン(2014年10月12日)

 シーズン最終盤までもつれた熾烈な優勝争いに惜しくも敗れたオリックスは、クライマックスシリーズでシーズン3位の北海道日本ハムを迎え撃った。初戦を落として後がない状況で迎えた第2戦、オリックスは8回裏を迎えた時点で1点ビハインド。このまま試合に敗れると、その時点でシーズン終了という土俵際まで追い詰められた。

 この状況でチームは2死1、2塁とチャンスを作り、この試合で4番を任されたT-岡田選手が打席に立った。レギュラーシーズンでは32本塁打を放ったウィリー・モー・ペーニャ氏の後を打つ5番を担うことが多かったT-岡田選手だが、ペーニャ氏の離脱に伴い4番に座ったことでこの打席が回ってきた、という点にも数奇な運命を感じるところだ。

 T-岡田選手は1ストライク3ボールから谷元圭介氏のボールを完璧に捉え、打った瞬間それとわかる起死回生の逆転3ランをライトスタンドに叩き込んだ。負ければシーズンが終わる瀬戸際で飛び出した、豪快かつ美しいチームを救うアーチ。まさに劇的と形容するほかない一発は、T-岡田選手にとってもキャリアにおける最大のハイライトの一つとなった。

25年ぶりの優勝を大きく手繰り寄せる、天王山での逆転3ラン(2021年9月30日)

 首位の千葉ロッテを追う2位のオリックスにとって、逆転優勝のためには敵地での直接対決でのスイープが必須に近い状況だった。オリックスは最初の2試合で2連勝を飾り、同一カード3連勝を賭けて最終戦に臨んだ。しかし、この試合では同点で迎えた8回裏に2点を勝ち越され、9回表の攻撃に全てを賭ける状況となった。

 オリックスは2死1、3塁と最後の攻撃でチャンスを作り、打席に入ったT-岡田選手に試合の行方が託された。33歳の頼れるベテランは千葉ロッテの守護神・益田直也投手の投球を捉え、打球はそのままライトスタンドへ。あと1アウトで敗戦という状況から試合をひっくり返す、まさに値千金の逆転3ランとなった。

 T-岡田選手の劇的な一発によってチームは同一カード3連勝を飾り、その勢いのまま25年ぶりのリーグ優勝を果たす。優勝へのターニングポイントとなった3連戦で合計7打点と圧巻の成績を残し、2014年に果たせなかった悲願のリーグ優勝を大きく手繰り寄せ、生え抜きとしてチームに歓喜をもたらす非常に重要な一打となった。

勝負の世界で酸いも甘いも噛み分けた、美しいドラマのような球歴だった

 若くして大ブレイクを果たした2010年、優勝まであと一歩に迫りながら涙をのんだ2014年、そして自らの一打によってチームを優勝に導いた2021年。勝負の世界で酸いも甘いも噛み分けてきたT-岡田選手が歩んだ球歴は、まさに美しいドラマと形容できるものでもあった。

 苦しい時期のチームを主力選手として懸命に支え、美しいアーチを幾度となく描いてきたT-岡田選手。キャリアを通じて劇的な活躍を見せてきた「浪速の轟砲」が生んだ数々の名場面は、パ・リーグファンの記憶と心に、いつまでも残り続けることだろう。

文・望月遼太

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