なぜ埼玉西武は苦戦している? 選手の対戦成績から考察する、2024年の千葉ロッテVS埼玉西武

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2024.9.13(金) 10:00

千葉ロッテマリーンズ・藤岡裕大選手 ©パーソル パ・リーグTV
千葉ロッテマリーンズ・藤岡裕大選手 ©パーソル パ・リーグTV

今季、千葉ロッテの対埼玉西武戦は16勝1敗

 今シーズン千葉ロッテは埼玉西武に対して開幕から破竹の16連勝を記録し、8月29日に埼玉西武が1勝を挙げるまで、その“相性”は多くのメディアに取り上げられることとなった。このカードがシーズンの行方を占う9月において7試合残されていることもあり、今後の対戦成績がチームの最終順位に影響を及ぼす可能性も大いにありうる。

 今回は、埼玉西武に対して好成績を残している千葉ロッテの選手について、投手と野手に分けて紹介。それに加えて、9月に千葉ロッテ戦が6試合開催される予定のベルーナドームを得意とする選手と、逆に埼玉西武の中で千葉ロッテ戦を得意とする選手についても確認し、今後の展望をあらためて占っていきたい。(成績は8月29日の試合終了時点)

先発投手が揃って好相性を示し、リリーフの主軸も完璧な投球を披露

 2024年シーズンにおいて、埼玉西武を得意としている千葉ロッテの投手は下記の通り。

2024年 埼玉西武戦で好成績を残している千葉ロッテの投手 ©PLM
2024年 埼玉西武戦で好成績を残している千葉ロッテの投手 ©PLM

 先発では、種市篤暉投手が3試合で2勝を挙げて防御率0.82、西野勇士投手も同じく3試合に登板して3連勝を記録して防御率0.87と、いずれも素晴らしい成績を残している。さらに、メルセデス投手も2試合に先発して防御率1.50と、安定した投球を見せている。

 小島和哉投手は今季のシーズン防御率が4.00と安定感を欠く投球も散見されるが、埼玉西武戦では防御率2.18、奪三振率7.40と一定以上の数字を記録している。これらの数字からも、先発陣の主力を務める投手たちが、総じて好相性を示していることがわかる。

 リリーフに目を向けると、セットアッパーを務める鈴木昭汰投手が8試合に登板して5ホールド2セーブ、防御率0.00という圧巻の投球を継続。さらに、益田直也投手は4試合でセーブを記録し、ここまで一人の走者も許さない完璧な投球を披露している。

 それに加えて、坂本光士郎投手も3試合で1勝1ホールド、防御率0.00と相手打線を封じ込めている。現在は一軍を離れている澤田圭佑投手と岩下大輝投手も同じく防御率0.00を記録しており、リリーフにおいても相性の良い投手が多く存在する点も特徴的だ。

高い打率やOPSを記録する打者が多く、幅広い役割の選手が躍動

 2024年シーズンにおいて、埼玉西武を得意としている千葉ロッテの打者は下記の通り。

2024年 埼玉西武戦で好成績を残している千葉ロッテの野手 ©PLM
2024年 埼玉西武戦で好成績を残している千葉ロッテの野手 ©PLM

 チームの中軸を務めるソト選手が17試合で打率.254、3本塁打、12打点、出塁率.351、OPS.828と、ポランコ選手と並びポイントゲッターとしての役目を果たしている。そのポランコ選手は打率こそ.230とやや低いものの、17試合で6本塁打とパワーを発揮。そのほか指標の面においても優秀な数字を残している。

 佐藤都志也選手は13試合で9打点2盗塁、打率.327と好成績を記録し、岡大海選手も12試合で7打点、打率.289、出塁率.400、OPS.844と活躍。球宴に選出された2名の選手が、ともに好相性を示している点も頼もしい要素だ。

 経験豊富な選手たちも埼玉西武戦で大いに持ち味を発揮しており、角中勝也選手は打率.409、出塁率.519、OPS1.246と圧巻の打棒を披露。藤岡裕大選手は10試合で14安打5打点、打率.378、出塁率.452、OPS.912と上位打線での起用に応え、田村龍弘選手も打率.438、出塁率.500、OPS1.063と、捕手ながら打線の得点力向上に寄与する働きを見せている。

打率.500の藤岡裕大選手を筆頭に、敵地で好相性を示す選手が多く存在

 次に、2024年にベルーナドームで好成績を残している千葉ロッテの選手たちを確認していこう。

2024年 ベルーナドームで好成績を残している千葉ロッテの投手 ©PLM
2024年 ベルーナドームで好成績を残している千葉ロッテの投手 ©PLM

 種市投手はベルーナドームで2試合に先発し、防御率1.20と安定した投球を見せている。メルセデス投手も登板こそ1試合ながら5回を無失点に抑えており、ビジターでの試合でも変わらぬ安定感を示した。

 リリーフ陣では鈴木投手が2試合に登板して2ホールド、防御率0.00、奪三振率9.00と、相手打線に付け入る隙を与えない投球を見せている。益田投手も3試合で3セーブを挙げて防御率0.00、奪三振率12.00と圧倒的なピッチングを披露しており、勝ちパターンの2投手は敵地のマウンドでも好相性を維持していることが示されている。

2024年 ベルーナドームで好成績を残している千葉ロッテの野手 ©PLM
2024年 ベルーナドームで好成績を残している千葉ロッテの野手 ©PLM

 野手の中で目を引くのは、10打数5安打の打率.500という驚異的な成績を記録している藤岡選手の存在だ。出塁率.545、長打率.600、OPS1.145と他の数字も軒並み優秀で、埼玉の地で抜群の存在感を示している。また、藤原選手も打率.300、出塁率.417、長打率.700、OPS1.117と圧巻の打棒を見せ、藤岡選手と共にビジター戦に臨む打線をけん引している。

 また、ポランコ選手が打率.235ながら出塁率.458、OPS.988と、敵地でも生産性の高い打撃を見せている。それに加えて、高部選手が5試合で6安打2盗塁、打率.400、出塁率.500、OPS1.033とチャンスメーカーとして優れた成績を残し、佐藤選手が5試合で8打点、打率.350、OPS.804と、走者を還す役割を果たしている点も特筆ものだ。

 さらに、8月30日に一軍復帰を果たした安田尚憲選手もベルーナドームでは打率.273、出塁率.429、OPS.883と優れた打撃を見せており、終盤戦に向け興味深い存在となるかもしれない。

リリーフ陣に相性の良い投手が多い点を、今後の対戦に生かせるか

 続いて、2024年に千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の投手たちについて紹介したい。

2024年 千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の投手 ©PLM
2024年 千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の投手 ©PLM

 松本航投手が4試合で防御率1.80と好成績を残しているほか、8月29日の試合で千葉ロッテ打線を6回途中0封し勝ち投手となった渡邉勇太朗投手が千葉ロッテと好相性を見せている。この2投手に加えて、故障からの復帰後はリリーフに回った平良投手が引き続き千葉ロッテ打線を封じ込められるかどうかが、今後の戦いのカギを握りそうだ。

 佐藤隼輔投手は7試合で防御率0.00と見事な投球を展開し、セットアッパーとしての役割を十二分に果たしている。また、田村伊知郎投手も3試合で防御率0.00、奪三振率10.13と好投を披露。同じく対戦防御率0.00の平井投手は現在一軍を離れているが、ブルペンに好相性の投手が多いことを今後の対戦に生かしたいところだ。

相性に苦しむ若手が多いなか、経験豊富な選手たちが意地を見せている

 最後に、2024年に千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の野手の顔ぶれを見ていきたい。

2024年 千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の野手 ©PLM
2024年 千葉ロッテ戦で好成績を残している埼玉西武の野手 ©PLM

 今季の千葉ロッテと最も好相性な選手としては、41歳の大ベテラン・中村剛也選手の存在が挙げられる。8試合の出場で3本塁打を放っているだけでなく、打率.292、出塁率.346、長打率.750、OPS1.096と、まさに抜群の数字を残している。現在は不振もあって一軍から離れているが、シーズン終盤に圧巻の打棒を披露する可能性は残されているはずだ。

 また、8月29日に先制弾を放った佐藤龍世選手もおもしろい存在だ。今後の対戦でも好守にはつらつとしたプレーを見せ、チームの苦境を救う存在となれるかに注目だ。

チームの最終順位をも左右しうる、残り8試合の対戦成績には要注目

 千葉ロッテでは先発とリリーフの中心的な投手たちが揃って埼玉西武を得意としており、野手陣も主力を担う選手の多くが好相性を示していた。ベルーナドームにおいてOPS1.000以上を記録している野手が多い点も含め、選手個々の成績にも相性の良さが表れていると考えられる。

 対する埼玉西武も、リリーフ陣や経験豊富な野手の中には好相性を示している選手が少なからず存在していた。先発陣や若手の野手陣が総じて千葉ロッテを苦手にしている点が難しいところだが、好相性の選手たちの活躍を突破口にして、残る試合で一矢報いたいところだ。

 2位以下は混戦が続いている現在のパ・リーグにおいて、千葉ロッテと埼玉西武の対戦成績が最終的に大きな意味を持つことになる可能性は高い。残る8試合の結果がどのように推移するかは、ファンならずとも注目の要素となってくることだろう。

文・望月遼太

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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