自身初のオールスターでMVP。大躍進を見せる佐藤都志也の“変化”にデータで迫る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

千葉ロッテマリーンズ・佐藤都志也選手【写真:球団提供】
千葉ロッテマリーンズ・佐藤都志也選手【写真:球団提供】

自身初の大舞台でも見事な活躍を見せ、MVPのタイトルを受賞した

 千葉ロッテの佐藤都志也選手が、7月26日の試合終了時点でリーグ2位の打率.302を記録している。さらに、自身初の大舞台となった「マイナビオールスターゲーム2024」では、第2戦で6打数5安打という離れ業を披露。サイクルヒット達成まであと一歩に迫る圧巻の活躍で、見事にMVPのタイトルを獲得してみせた。

 今回は、佐藤選手がこれまで残してきた球歴に加えて、セイバーメトリクスで用いられる各種の指標に基づく、選手としての特徴を紹介。「打てる捕手」としての大躍進につながった佐藤選手の打撃スタイルの変化について、より深く掘り下げていきたい。(成績は7月26日の試合終了時点)

長らく打撃面が課題だったが、今季は打率が劇的な向上を見せている

 佐藤選手がこれまで記録してきた、年度別成績は下記の通り。

佐藤都志也選手 年度別成績(C)PLM
佐藤都志也選手 年度別成績(C)PLM

 佐藤選手は2019年のドラフト2位で千葉ロッテに入団。1年目の2020年は主に指名打者として60試合に出場し、打率.228ながら9月にはプロ初本塁打を含む2本塁打を記録。翌2021年は田村龍弘選手の故障もあって捕手としての出場機会が増加し、前年を上回る6本塁打を放ったものの、打率.205と確実性を欠き、全幅の信頼を勝ち取るには至らなかった。

 2022年は自己最多の118試合に出場し、リーグ1位の盗塁阻止率 .361という数字を記録。キャリア最多の8本塁打を放ち、打撃を活かして一塁手として起用される機会も増加した一方で、打率.214、OPSはキャリアワーストの.574と、打者としての生産性には課題を残した。

 続く2023年は新たに就任した吉井理人監督のもとで田村選手と併用され、主に若手投手の先発時にマスクを被った。打率.218、4本塁打と打撃面では苦戦が続いたが、前年に続いて100試合以上に出場し、主力捕手としてチームの2位躍進にも貢献を果たした。

 そして、2024年は課題となっていた打撃面でついに長足の進歩を見せ、打率.302、OPS.722とキャリアベストの数字を記録している。前年同様に先発投手に応じて捕手としてスタメンに名を連ねつつ、一塁手として出場する機会も再び増加。前年までの準レギュラーという立場から脱却し、今やチームの打線に欠かせない存在となりつつある。

昨季までは一発長打と四球の多さが持ち味だったが……

 次に、佐藤選手がこれまで記録してきた年度別の指標を見ていこう。

佐藤都志也選手 年度別指標(C)PLM
佐藤都志也選手 年度別指標(C)PLM

 昨季までの佐藤選手は低打率ながら長打力を持ち味とする打者という趣が強かったが、通算の長打率は.340、通算OPSは.632と、どちらの数字も高くはなかった。また、2024年のOPSは.715とまずまずの数字だが、長打率に関しては.375と、引き続き高いとは言えない水準にとどまっている。

 こうした傾向は、長打率から単打の影響を省いた、真の長打力を示すとされる「IsoD」という指標においても示されている。2024年のIsoDは.042とキャリアで最も低い数字となっており、純粋な長打力という観点で見ても今季の数字はやや控えめだ。

 さらに、本塁打を1本放つのに必要となる打席数を示す「AB/HR」も、2024年は131.00と、キャリア通算の50.27という数字を大きく下回っている。今季は逆方向への打球が増加していることも含めて、長打を狙って引っ張るスタイルから、広角に打ち分ける好打者を目指したスタイルの転換が奏功していると考えられる。

 一方で、打率と出塁率の差を示すISOに関しては、プロ2年目の2021年から3年連続で.100以上と優秀な数字を記録していた。また、2021年のISOは.182と、極めて優れた水準に達していた。これらの数字からも、総じて慎重にボールを見極めながら、じっくりと四球を選んでいくスタイルを取っていたことがわかる。

 しかし、2024年のISOは.076とキャリアで最も低く、キャリア平均の.105という数字も下回っている。その一方で、打率が飛躍的に向上したことに伴い、出塁率は.344と大きく向上し、キャリア平均(.293)を遥かに上回る数字を記録している。

 そして、四球を三振で割って求める、打者の選球眼を示す指標の一つである「BB/K」に関しても、今季は.692とキャリアベストの数字を記録している。IsoDが低下した一方でK/BBが改善されたという事実は、四球を選ぶという観点ではなく、打てるボールの取捨選択という分野においては、むしろ大きく選球眼が向上しているという見方もできよう。

 すなわち、昨季までは身長な打撃スタイルゆえに甘い球を見逃す機会もあったが、今季はより積極的なアプローチを取っていることがわかる。先述した長打を狙うスタイルからの脱却も含めて、アプローチの変化がキャリアの好転につながっている可能性は高そうだ。

打撃スタイルの変化によって、より安打が出やすくなった側面も?

 ここからは、ホームランを除くインプレーの打球が安打になった割合を示す「BABIP」に目を向けていきたい。この指標は選手自身の能力以上に運に左右される部分が大きいと考えられており、一般的な選手にとっての基準値は.300とされている。

 しかし、佐藤選手の通算BABIPは.263と、極端に低い数字となっている。佐藤選手は捕手ながら俊足の持ち主として知られ、左打者という特性もあって内野安打が比較的生まれやすい資質を持つ。それにもかかわらず、通算BABIPが極端に低いという事実は、キャリアを通じて運に恵まれてこなかったことを示唆するものでもある。

 そして、2024年のBABIPは.324と、キャリアで初めて基準値である.300を上回るシーズンを送っている。BABIPは長いスパンで見れば特定の値に収束していく傾向にあるだけに、今季のBABIPの向上によって、ようやく佐藤選手に運が向いてきたという見方もできよう。

 その一方で、打撃スタイルの変化がBABIPに好影響を与えた可能性も存在している。昨季までの佐藤選手はプルヒッターの傾向が強く、守備シフトの影響を受けやすいタイプの打者でもあった。それに対して、今季は本塁打が減少した代わりに逆方向への打球が増え、より広角に打ち分けることが可能な打者へと成長を遂げている。

 こうした打撃スタイルの変化によって、相手の守備陣にとっても佐藤選手に対する画一的な対策は取りにくくなりつつある。今季を通じて打者としての引き出しを大きく増やしてみせた佐藤選手の成長が、BABIPの上昇と打率の向上につながっている可能性は大いにありそうだ。

「打てる捕手」の台頭は、チームにとっても非常に大きな収穫となる

 従来の低打率ながら一発長打の可能性を秘めた打者から、率を残せるアベレージヒッターへと変化を遂げつつある佐藤選手。好球必打を意識した新たなアプローチが奏功していることは、打率の向上のみならず、OPSやBB/Kのような指標にも確かに示されている。

 球界全体において投高打低の傾向が続く中で、「打てる捕手」がチームにもたらすプラスの影響はこれまで以上に大きくなりつつある。佐藤選手がこのまま好成績を維持して自身初の規定打席到達を果たせば、チームにとっても今シーズンにおける最大の収穫の一つとなることだろう。

文・望月遼太

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