自己最長7回2失点で6月13日以来のプロ2勝目
■埼玉西武 10-2 福岡ソフトバンク(2日・メットライフ)
埼玉西武は今井達也投手は2日、本拠地での福岡ソフトバンク戦で初登板初勝利となった6月13日以来となる2勝目を挙げた。前日14得点を挙げた強力打線を相手に、7回5安打2失点の好投が光った。
「モニターでブルペンを見ていて、最後にアウトコースへ素晴らしい球を投げていた」。試合前の投球練習を見た辻監督は、この日の調子の良さを感じ取っていたという。その見立ては見事に的中していた。
福岡ソフトバンク打線を相手に真っ向勝負に挑んだ。初回は8球中7球をストレートで押す強気の投球で3者凡退と好発進。「イニングの先頭打者を全力で抑える」という意識をしっかり具現化させてみせた。
そして、2回。全力で抑えにいった先頭のデスパイネにヒットを許すと、続く5番・中村晃に四球を与えて、無死一、二塁のピンチ。前日4安打2本塁打の6番・長谷川勇への初球が、まさかのパスボールで、無死二、三塁とさらにピンチを拡大させた。
だが、度重なる失敗から這い上がってきた背番号11は、ここからが今までとは違った。
「ランナーを出しても投げ急ぐことなく、自分のペースで行けた」と、お立ち台で語ったように、長谷川の二ゴロの間に1点先制され、なおも1死三塁とピンチが続く中、動じるそぶりも見せずに松田宣浩をフルカウントから外角低め149キロのストレートで見逃し三振。続く甲斐拓也も打ち取り、最少失点で切り抜けた。この場面については辻監督も「あそこを1点で凌いだのは大きかった」と勝因の1つに挙げていた。
「うちの打線なら失点が少なければ勝てる」と今井が信じた味方打線は、直後の2回裏に今季苦手としていたホークス石川から一挙7得点を奪った。「大きなプレゼント(辻監督)」をもらったが、「自分がやることは極力失点しないこと。それは変わらない」と冷静さを失わなかった。
そして、自身初となる7回のマウンドに見せ場は訪れた。
7回先頭は故障の影響で4回守備から途中出場していた柳田悠岐。これが7試合ぶりの打席だったが、球界を代表するスラッガーである事実は疑う余地もない。その柳田との初対戦した今井は、初球、2球目と大きなカーブで立て続けに空振りを奪って追い込むと、「球界を代表する打者なので狙ってもいってもいいかな」と、最後は8球目143キロのチェンジアップで三振に仕留めた。
フォークやシンカーのように変化も「自分の中ではチェンジアップ」
試合後、この場面を振り返る今井に浮かれた様子はなかった。カーブでの空振りと低めのチェンジアップには身近ら及第点を与えたが、「(三振直前の)外の真っ直ぐがちょっと(身体が)開き気味になりシュート回転していたので、そこはもうちょっとしっかり投げ切りたかった」と反省を口にしていた。
柳田に投じたチェンジアップ。これこそ今井が1軍に上がる前に、今後を見据えてファームで練習してきたボールだ。だが、当初は「あまり自分でコントロールできない球だった」という。
「最初はチェンジアップなので、抜こう抜こうという気持ちがあって、身体が開くことが多かった。だから極力、ストレートと同じフォームで投げられるように練習を重ねてきて、その成果がだんだん現れるようになってきているのかなと思います」
ファームでの取り組みが身を結びつつある球は、その球筋からフォークやシンカーと捉えられることもあるが、「自分の中ではチェンジアップ。カウント球にも、最後の決め球にも使えるかな」と自信を深めている。辻監督も「真っ直ぐも良かったけど、チェンジアップが低めにフォークみたいに落ちる。真っ直ぐの腕の振りがいいから、チェンジアップの腕の振りもいい」と高く評価した。
中盤にはボールが抜けることもあったが、終わってみれば自己最長の7回を投げた。今後の配球の組み立てやゲームプランにはまだまだ健闘の余地はあるが、「大体はアバウトにというか大胆にやっていきたい」と話す。「若さで向かっていく姿勢が足りなかったが、前回登板あたりから改善されてきた。今日は暑い中、よく投げてくれました」と話す指揮官は、20歳右腕の好投に賛辞を送った。
「今日みたいに7回2失点。取られても3失点以内という投球をしていけば、自ずと勝ち星は増えていくと思うし、チームもどんどん勝っていける。次回登板機会がもらえるならば、しっかり勝てるように頑張ります」と語った今井。これで2勝2敗。苦しい経験を経て、ようやく自らの星勘定を五分に戻した若獅子の今後は、大きな期待が持てそうだ。
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