二遊間のレギュラーとして、19年ぶりの11連勝に大きく貢献を果たした
23歳の友杉篤輝選手と26歳の小川龍成選手が、今季途中から千葉ロッテの二遊間に定着しつつある。小川選手が5月30日の阪神戦でサヨナラの押し出し四球を選べば、続く6月1日には友杉選手が9回2死から同点打。19年ぶりの11連勝にも主力として大きく貢献を果たしており、ともにチームに欠かせない存在となりつつある。
今回は、友杉選手と小川選手がこれまで残してきた成績と球歴に加えて、各種の指標に基づく打者としての特徴を紹介。新生マリーンズのセンターラインを守る2名の若武者についてより深く掘り下げつつ、今後のさらなる活躍にも期待を寄せたい。(成績は6月11日の試合終了時点)
1年目からレギュラー争いを繰り広げ、2年目にして定位置をつかみつつある
友杉選手がこれまで残してきた、年度別成績は下記の通り。
友杉選手は2022年のドラフト2位でプロ入り。プロ1年目の2023年はオープン戦で打率.267と一定の数字を残し、新人ながら開幕一軍入りを果たす。シーズンに入って以降は藤岡裕大選手と併用されながら、遊撃手として出場を重ねた。同年は64試合に出場して打率.254という数字を残し、優れた打撃センスの一端を示している。
守備でも堅実なプレーを披露し、9月18日の埼玉西武戦では代走で好走塁を見せて勝利の立役者となるなど、走攻守にわたってチームの優勝争いに貢献。シーズン最終盤は一軍登録を外れ、ポストシーズンへの出場も果たせなかったものの、上位争いを繰り広げる環境に身を置き、貴重な経験を積む1年を送った。
続く2024年は藤岡選手が二塁にコンバートされたこともあり、遊撃手のポジションが空く格好に。開幕直後は友杉選手と茶谷健太選手がポジションを争ったが、4月以降は友杉選手がレギュラーの座に定着。上位から下位までさまざまな打順で起用されながら前年同様に一定の打撃成績を残しており、攻守にわたってチームを支える存在となっている。
打撃がネックとなっていたが、新たなスタイルの習得が飛躍のきっかけに
小川選手がこれまで残してきた、年度別成績は下記の通り。
小川選手は2020年のドラフト3位でプロ入り。プロ1年目の2021年は開幕前から随所で俊足を活かして存在感を示したものの、オープン戦で負傷して開幕一軍入りはならず。開幕後は二軍で51試合に出場して打率.181とプロの壁に苦しみ、一軍でもバイプレーヤーとして20試合に出場したものの、6打席で無安打という結果に終わっている。
続く2022年もスーパーサブとして一軍で68試合に出場したが、一軍で打率.109、二軍で打率.171と、前年同様に打撃面で苦戦を強いられた。3年目の2023年は、二軍で打率.279と課題の打撃で成長を示した。一軍では打率.150と結果を残しきれなかったが、外野手に故障が相次いだ影響で本職の内野に加えて外野守備にも挑戦し、活躍の場を広げてみせた。
そして、2024年はチームの重鎮である角中勝也選手を彷彿とさせる、ファウルで粘って甘い球を捉える新たな打撃スタイルを習得。その甲斐あって最大のネックだった打撃面で長足の進歩を見せ、守備でも華麗なダイビングキャッチをたびたび披露。藤岡選手の故障離脱後は二塁手として先発出場を重ねており、定位置確保に向けて大きく前進している。
三振も四球も少ない、積極果敢な打撃スタイルが最大の持ち味だ
続いて、友杉選手がこれまで記録してきた年度別の指標を見ていきたい。
通算打率.255に対して通算出塁率が.288、打率と出塁率の差を示す「IsoD」が通算で.033と、四球を選ぶ頻度は少ない。ボールをじっくりと選ぶというよりは、甘い球を積極果敢に打ちに出る打撃スタイルの持ち主であることが、これらの数字からも読み取れる。
また、友杉選手は一軍の公式戦で本塁打を放ったことが一度もなく、通算の長打率も.304と高くはない。その一方で、三振率は2023年が.148、2024年が.128といずれも低く、コンタクトに長けた俊足の好打者、という趣が強い選手であることがうかがえる。
こうしたタイプの打者にとっては、ホームランを除くインプレーになった打球が安打になった割合を示す、「BABIP」という指標がとりわけ重要となる。この指標は、選手の能力に影響を受ける要素が少なく、運に左右される部分が大きいと一般的に考えられている。
打者の場合は選手の特性によってキャリア平均の数字が少なからず変動するが、一般的な基準値は.300とされている。そして、友杉選手のBABIPは2023年が.303、2024年が.296と、いずれも基準値に近い数字となっている。すなわち、友杉選手の活躍は決して運に恵まれているわけではなく、選手本人の実力によるものと考えられるということだ。
バッティングでの苦戦は、「運に恵まれなかった」側面が大きい可能性も?
最後に、小川選手がこれまで記録してきた年度別の指標を見ていこう。
通算打率.188に対し、通算出塁率は.286。通算のIsoDも.099と高水準だ。今季から取り入れた粘りのスタイルにも示されているように、積極的に打ちに出る友杉選手とは異なり、小川選手はじっくりと球を見ていくタイプの打者であることが示されている。
その一方で、2024年の三振率は.167と、優れた水準にある点もポイントだ。当然ながら、ファウルで粘って甘い球を待つスタイルを取る場合、ツーストライクに追い込まれるケースが増え、三振のリスクも高まる。それでいて、さほど多くの三振を喫していないという小川選手の特性は、それだけ優れた選球眼と対応力を持つことの表れといえよう。
ただし、小川選手は2022年に1本のホームランを放っているものの、通算の長打率は.219とかなり低い。さらに、長打率から安打の影響を省いた「ISO」という指標も通算で.031と非常に低くなっており、アベレージヒッターの趣が強い点は友杉選手と共通している。
また、一般的に小川選手のような俊足の左打者は内野安打が多くなるため、BABIPは高くなる傾向にある。にもかかわらず、小川選手の通算のBABIPが.245と、極端に低い数字になっている。小川選手は昨季まで打撃面で苦戦が続いていたが、実はキャリアを通じて非常に運に恵まれていなかったという側面が、BABIPを通じて新たに浮かび上がることになる。
裏を返せば、今後のキャリアにおいて運に恵まれなかったぶんの反動が起これば、大きく打撃成績が向上する可能性もあると考えられる。BABIPが.303と基準値に近い数字となった2024年に、打撃成績が向上を見せている点も示唆的だ。すなわち、小川選手は成績面における今後の伸びしろを大いに残した存在である、という考え方もできるはずだ。
走攻守の全てで存在感を放つ若きコンビが、今後のチームを担う礎となるか
積極的な打撃スタイルを武器にプロ入りから2年続けて結果を残している友杉選手と、打撃スタイルの変更が奏功して新たなスタイルを確立しつつある小川選手。二遊間コンビとして台頭を見せている両選手だが、その打者としてのスタイルは大きく異なる。
守備においては、友杉選手は派手なファインプレーこそ少ないものの、広い守備範囲を堅実にカバーして大いに投手を助けている。小川選手も今季はセカンドとしてわずか1失策 と堅い守備を見せているだけでなく、鮮やかなダイビングキャッチをたびたび披露し、ヒット性の打球を凡打に変えるシーンを幾度となく作っている。
攻撃面での成長に加えて、守備においてもひときわ存在感を放っている若き二遊間コンビの存在は、今後のチームにとっても貴重な礎となるはず。両選手がこのままレギュラーの座を確保し、鉄壁の守備を誇る名コンビとなるか。攻守にわたってスピード感あふれるプレーを見せる二人の若武者に、今からぜひ注目してみてはいかがだろうか。
文・望月遼太
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