「不器用なので、こまめに投げ切れるピッチャーじゃない。戻ったら力勝負をしていきたい」
今から2年前の夏、トミー・ジョン手術のリハビリ中だった千葉ロッテの岩下大輝投手が、目指す投手像についてこのように語った。あれから2年、自己最速の151キロを計測するなど着実に力をつけた右腕は、7月21日、初の一軍昇格を果たしている。
2014年ドラフト3位で、星稜高校から千葉ロッテに入団した岩下投手。2015年8月27日の東京ヤクルトとの二軍戦で公式戦デビューを飾ったが、同年の11月に『右肘の内側側副靭帯再建手術』、いわゆるトミー・ジョン手術を受けた。
「焦りはないですね。みんなにゆっくりでいいと言われています。飛ばしているつもりはないです。最近はやっと人相手にキャッチボールができるようになりました」。リハビリ中の2016年6月には、キャッチボールができる喜び、ボールを投げられる喜び、チームメイト・スタッフへの感謝を、笑顔で前向きに話してくれた。
手術を受けたことで、自身の体と向き合うきっかけにもなったという。
「イメージというか、体をどう使うか前よりも考えるようになりました。以前はただ思いっきり投げているだけでした。どれだけフォームに負担を少なくやるかというのを考えているつもりでいます」。
実戦復帰前にはレジェンドのフリー打撃に登板
長いリハビリを経て実戦復帰を果たしたのは、2016年9月6日。フューチャーズの一員として参加した、埼玉西武とのチャレンジマッチだった。
久々の実戦登板から3日、右肘に関する質問を投げかけると、岩下投手は「怖さはなかったです」と答え、少し間をあけて「その(チャレンジマッチの)前に1回、サブローさんに投げさせてもらったので、それに比べたら緊張しませんでした」と続けた。
実戦復帰の数日前に、同年限りで現役引退を発表していたサブロー氏のフリー打撃の投手を務める機会があったという。岩下投手は「(サブロー氏から)アドバイスをもらいました。基本はタイミングの話です。ピッチャーとしての特徴と、バッターからの意見を教えて頂きました」と金言をもらい、「サブローさんからというのはありがたかったです」と感謝した。
こだわった力勝負
2017年3月24日に行われた北海道日本ハムとの二軍戦(鎌ケ谷)では、2年ぶりに公式戦のマウンドに上がった。関谷亮太投手の後を受けて、6回から登板。四球で走者を出したが1イニングを無失点に抑え、笑顔でベンチに戻ってきた。
「あのときは、ただ単にピッチャーライナーを取って、普通にボールボーイに渡せばよかったのを、マウンドに置いてきたので笑っちゃいました」と笑顔の理由を教えてくれた。
また、「ストレートでファウルを取って、決め球として変化球、ストレートで押せるようなピッチャーになりたい。基本となるストレートで最初はやっていこうと思います」と、復帰前と同じように改めて“力勝負"にこだわる姿勢を見せた。
この年は一軍昇格こそ叶わなかったが、二軍で15試合に登板して、3勝3敗、防御率2.48という成績を残しシーズンを終えた。
自己最速151キロを計測
10月には『腰椎椎間板ヘルニア』の手術を行ったが、2018年の開幕には間に合っている。
3月25日の東京ヤクルトとの二軍戦で初登板を果たすと、その後もコンスタントに登板。7月6日の楽天戦では、トミー・ジョン手術後、公式戦最長となる7イニングスを投げた。同月12日に行われたフレッシュオールスターゲームにイースタン選抜に出場し、自己最速となる151キロを計測。一歩一歩、着実に成長を続けていた。
小野晋吾二軍投手コーチも「細かい部分で足りない部分が多い」としたが、「球速に関しては(スピードが)出るようになりましたし、変化球の精度など一軍に近いものがある」と評価している。
そして7月21日、ついに一軍への切符を手にし、ようやくプロのスタートラインに立った。制球面など課題は多いが、本人もそれを自覚して克服する努力をしている最中だ。プロ1年目からコツコツと積み上げてきたもの、今持っている力を存分に発揮し、“岩下大輝"というピッチャーの存在を、千葉ロッテファンに見せ付けてほしい。
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