前年活躍した投手は苦戦する?
投手の肩は消耗品、と形容されることは少なくない。前年に主力として活躍した投手が勤続疲労や故障で翌年に成績を落としたり、登板機会を減らすケースは枚挙にいとまがない。その一方で、新たにチームに加わった戦力や既存戦力が台頭を果たし、チームに前年からの貴重な上積みをもたらすケースも、過去には多く存在している。
今回は、2023年シーズンに大きく成績を伸ばした投手や、活躍を見せた新戦力の中から、新シーズンも同じ球団でプレーする投手たちの成績をチームごとに紹介。各球団の投手陣が前年からどのように変遷したのかについて、あらためて振り返っていきたい。
北海道日本ハム
近藤健介選手の人的補償で福岡ソフトバンクから加入した田中正義投手が、移籍初年度から新天地で躍動。クローザーとして8ホールド25セーブ、奪三振率8.94を記録し、高いポテンシャルをついに開花させた。また、シーズン途中にトレードで加わった山本拓実投手も26試合で防御率1.50と出色の投球を見せ、移籍組が相次いで大きな戦力となっている。
さらに、移籍3年目の池田隆英投手も自身初めて50試合以上に登板し、気迫を前面に押し出した投球で25ホールド、防御率2.86と奮闘。左腕の河野竜生投手も50試合で20ホールド、防御率1.70と素晴らしい投球を見せ、新たなセットアッパーが次々に台頭した。
その一方で、宮西尚生投手や杉浦稔大投手といった実績組も復調の兆しを見せ、福田俊投手は29試合で無失点と完璧な投球を披露。上原健太投手と鈴木健矢投手は先発登板の機会を増やして存在感を発揮するなど、投手陣の見通しは格段に明るくなっている。
東北楽天
ドラフト1位ルーキーの荘司康誠投手は109.2イニングを消化して防御率3.36と、即戦力の期待に応えて先発として好投した。同じく新人の渡辺翔太投手は1年目から51試合に登板し、25ホールド、防御率2.40とセットアッパーとして大活躍。さらに、伊藤茉央投手も25試合で防御率3.27と一定の投球を披露するなど、3名の新人が一軍の舞台で奮闘を見せた。
貴重な左腕の鈴木翔天投手はリーグ最多の61試合に登板し、22ホールド、防御率3.30、奪三振率9.69と大車輪の働きを示した。また、前年はわずか1ホールドに終わった酒居知史投手は2年ぶりに2点台の防御率を記録し、セットアッパーの座に返り咲いて20ホールドを挙げている。
さらに、プロ入りからの2年間は一軍登板がなかった内星龍投手がブレイクを果たし、53試合で防御率2.28と安定した投球を披露。同じく3年目の藤井聖投手も先発とリリーフを兼任しながら防御率2.29と好成績を残しており、来季はさらなる活躍が期待されるところだ。
埼玉西武
隅田知一郎投手はプロ1年目の2022年は1勝10敗と苦戦したが、翌2023年には防御率3.44、奪三振率8.79と好投を見せ、白星を9勝まで伸ばしてみせた。また、佐藤隼輔投手も47試合で18ホールド、防御率2.50を記録し、セットアッパーとして活躍。前年のドラフト1、2位コンビが大きな成長を示したのは、今後のチームにとっても大きな要素だ。
さらに、新人の青山美夏人投手と、7月に支配下契約に移行した豆田泰志投手が、いずれもブルペンの貴重な戦力として活躍。リリーフに専念した平井克典投手が28ホールド、防御率2.55と勝ちパターンを担い、田村伊知郎投手も24試合で防御率1.52と出色の投球を見せた。
前年に故障の影響でわずか9試合の登板に終わった今井達也投手は、2023年に防御率2.30、奪三振率8.80と躍動し、自身初の2桁勝利を達成。先発転向1年目の平良海馬投手も11勝を挙げて防御率2.40、奪三振率9.18と素晴らしい投球を見せ、能力の高さを存分に示した。
千葉ロッテ
北海道日本ハムからトレード加入した西村天裕投手は自己最多の44試合に登板し、防御率1.25と抜群の安定感を発揮。同じく移籍1年目の澤田圭佑投手も防御率1.08と好投し、シーズン終盤には抑えを務めるなど、トミー・ジョン手術からの鮮やかな復活を果たした。
種市篤暉投手はわずか1試合の登板に終わった前年から大きな飛躍を遂げ、自身初の2桁勝利を記録。奪三振率10.34という抜群の数字を残し、最終盤まで最多奪三振のタイトルを争った。先発に再転向した西野勇士投手も117イニングで防御率2.69と好投を見せ、トミー・ジョン手術からの復活組が力強く投手陣をけん引した。
2022年途中にトレード移籍した坂本光士郎投手は登板機会を大きく増加させ、貴重な左腕としてフル回転。終盤戦に病気で戦線を離れた岩下大輝投手も離脱までは好投を見せ、東妻勇輔投手も復調を示した。鈴木昭汰投手と中村稔弥投手は安定感が大きく向上し、若手の横山陸人投手と中森俊介投手も存在感を示すなど、多くの投手が台頭を見せていた。
オリックス
山下舜平大投手は過去2年間で一度も一軍登板がなかったが、2023年にプロ初登板で開幕投手という大抜擢を受ける。その後は16試合で9勝、防御率1.61、奪三振率9.57と抜群のポテンシャルを示し、同年の新人王に輝いてみせた。東晃平投手もシーズン終盤に先発陣の一角に加わり、無傷の6連勝を記録する出色の活躍を見せた。
前年終盤にブレイクした宇田川優希投手は今季もリリーフ陣の中心として活躍し、46試合で20ホールド、防御率1.77と優秀な成績を残した。同じく前年途中にセットアッパーに定着した山崎颯一郎投手も、27ホールド9セーブと大車輪の働きを披露。両者ともに前年同様にリーグ優勝の原動力となり、あらためてその実力を証明している。
さらに、2年目の小木田敦也投手も登板機会を倍以上に増加させ、防御率2.19と安定した投球を続けた。さらに、前年は不振に陥った山田修義投手も防御率1.15と復活を果たし、山岡泰輔投手はリリーフとして新境地を開拓。短いイニングに集中することで奪三振率が9.29と大きく向上し、防御率2.30とブルペンの新たな力となった。
福岡ソフトバンク
2023年にNPBへ復帰した有原航平投手は、17試合で10勝、防御率2.31と圧巻の投球を見せ、先発の柱として投手陣をけん引。同じく移籍1年目のオスナ投手も12ホールド29セーブ、防御率0.92と抜群の安定感を示し、絶対的なクローザーとして君臨した。
ルーキーの大津亮介投手は46試合で13ホールド、防御率2.43と、即戦力としてブルペンを支えた。6年目の田浦文丸投手も自己最多の45試合に登板し、貴重な左の中継ぎとして防御率2.38と活躍。武田翔太投手もシーズン途中に中継ぎに転向して以降は好投を見せ、ロングリリーフとして登板機会を増やした。
来日5年目を迎えていたスチュワート・ジュニア投手は快速球を武器に防御率3.38を記録し、先発陣の一角へと成長した。板東湧梧投手は6月8日まで中継ぎで防御率2.30と好投をし、6月15日以降は先発に転向。チーム事情に応じて役割を変えつつ、活躍の場を広げた。
新シーズン大きな躍進を果たす投手たちの顔ぶれは?
プロ野球における新陳代謝は、毎年のように進むもの。新戦力の加入、既存戦力の成長、実績ある投手の復活といった要素は、長いシーズンで各球団が投手陣をやり繰りするにあたって、決して欠かすことができないものだ。
はたして、来たる新シーズンに大きな躍進を果たす投手はどのような顔ぶれになるのだろうか。2023年に活躍を見せた投手たちのさらなる活躍に期待するとともに、新たな力の台頭も今から楽しみにしたいところだ。
文・望月遼太
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