食べるならどっち? 日米ボールパークのグルメ

パ・リーグ インサイト 新川諒

野球観戦に足を運ぶとき、球場で食事をするための条件とはなんだろうか?値段、それとも観戦をしながら簡単に食べられる手軽さか?球場でしか食べることのできない希少価値、あるいは単純に美味しいものを求めるだろうか?

まず真っ先に浮かぶのは「値段」のこと。球場で食べる食事は何かと割高になる傾向がある。さらに人気グルメを買うにも長い列に並ぶことも予想される。そのため球場を訪れる時には、近くで食事を終えてから行こうと思う人も多いだろう。だが仕事帰りやちょうどお昼時であれば、球場でと考える人も多い。球場で食べることを選んだ人に「おっ!」と思わせ、リピーターを増やしていくことが求められる。

パ・リーグ各球団を始め、世界中のプロスポーツ団体がメジャーリーグを始め、米国の各プロスポーツチームの取り組みや施設を見学し、参考にしている。だがグルメに関して言えば、世界が参考にしても良いと思えるさまざまなアイディアが、日本の球場には溢れている。

「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界にも認められている存在となった。味はもちろんだが、グルメを使った企画やアイディアも球場には溢れている。多くの球団で企画化している「選手プロデュース」のお弁当は、ファンにとっても球場でしか味わうことのできない希少価値がある。パ・リーグ各球団の公式サイトには、グルメのタブもあり、それぞれのメニューを見ることができる。

一方でメジャーリーグでも開幕に合わせて、各球場での新メニューとなる顔ぶれが紹介されている。だがこれは単純に「日本人」の味覚感覚だからかもしれないが、美味しさを追求しているよりはダイナミックさ、そしてインパクトがあるものが多かった。

2015年にワールドシリーズを制覇したカンザスシティ・ロイヤルズは「チャンピオンズ・アリー・ドッグ」という、優勝チームならではの新メニューを打ち出した。その中身というのは、天婦羅粉で包まれたウィンナーをベーコンで巻き、甘みのある刻んだキャベツにピリ辛のケチャップをソースに、プレッツェル生地のパンで挟んだものだ。

もう1つ気になったメニューでは、今季本拠地ターナー・フィールド最終年を迎えるアトランタ・ブレーブスが打ち出した「バーガーリザ」。名前を聞いただけでどんな食べ物か想像出来る人も多いだろう。名の通りハンバーガーとピザのコラボだ。しかもその値段は26ドル(約2,900円)とかなり割高だ。やはり値段の部分がネックになる人もいるだろうが、球場でしか食べることのできないグルメとしてどれだけ希少価値があるだろうか?

懐が気になるファンにとっては嬉しい「格安日」もある。私がインターンをしていたクリーブランド・インディアンズでは「ドル・ドッグナイト」が設けられており、その日はホットドッグ1本を1ドル(約111円)で食べることができる。このドル・ドッグナイトには、球場に多くの大学生が訪れる。大学の学生証持参で割引がきくカレッジナイトに開催することも多く、貧乏学生にとっては外野席で野球を見ながら格安で食事にあり付ける。この日はホットドッグの消費量がいつも以上に多いため、球団内の社内メールでは「手が空いている職員はホットドッグ作りを手伝ってください」という案内が送られてくるほどだ。職員やインターンも日中ホットドッグを巻く業務を手助けする。私も何度かこの業務に借り出され、アシスタントゼネラルマネージャー(GM)の隣で会話をしながら一緒にホットドッグを巻いたのは、ユニークな体験として心に残っている。

日本では独特なグルメ企画があり、オリックスでは「オリ達デー」と「オリ姫デー」限定メニューを打ち出した。男性ファンに向けたボリューム感満点のカツサンドやスタミナ満点のスタ丼などがメニューに並ぶ。そして女性ファンに向けた限定メニューでは苺サンデーやニューヨークで人気のポップオーバーなどのスイーツ、そしてツナ・アボガドを挟んだ「いてまえドッグ」など、ターゲットに合わせたメニューを考案している。

さらにはオリックス・バファローズでは、2014年からダンス&ヴォーカルユニット「BsGirls」の結成を記念して、京セラドーム大阪では指定店舗で指定メニューを購入したファンに「BsGirlsトレカコレクション」を配布するというコラボ企画を打ち出している。今シーズンも4月26日から開催。球場でのグルメ購入に、トレーディングカードというおまけを付けることで希少価値を加えている。

日本では各地域を大切にし、地元名物が球場で多く見られる。米国でも、ボストン・レッドソックスの本拠地フェンウェイ・パークではクラム・チャウダーが食べられたり、フィラデルフィア・フィリーズのシチズンズバンク・パークではフィリー・チーズステーキが食べられたりする。ビジターのファンは球場にいながらその地の名物も口にすることができる。地域の特色を生かしたグルメを提供するのも、付加価値の一つだろう。

球場へ足を運ぶ第一目的は野球観戦をすることかもしれない。だがグルメの楽しみを作ることで新たなファン層の拡大、そして球場でも野球以外の楽しみを作ることにつながる。

単純に日米どちらの球場グルメが優れているかは、それぞれの味覚や食文化があるため簡単な比較はできない。だが日本の球場で見られるグルメやさまざまな企画は、世界も参考にできる質であることは間違いないはずだ。日本の球場にはヘルメット・アイスや米国のケンタッキー・フライドチキンやサブウェイなど、輸入されてきたものも多く見られる。今では寿司ロールが多くの球場にあり、ドジャースタジアムでも吉野家が見られたことはあったが、今後は「日本食ブーム」が沸き起こる米国で本格的に日本流球場グルメが米国の球場に輸入されるシーンも見てみたい。

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パ・リーグ インサイト 新川諒

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