今オフに山川穂高選手と西川龍馬選手がFA移籍したことにより、人的補償として甲斐野央投手が埼玉西武へ、日高暖己投手が広島へそれぞれ移籍した。
制度の見直しを含め、現在「人的補償」が大きな注目を集めているが、過去には、田中正義投手など移籍後に飛躍を遂げた選手たちも多く存在している。そこで、今回は過去5年間で、人的補償での移籍を経験したパ・リーグの選手を紹介していく。
【2023年】5球団競合の右腕が北の守護神へ
2023年、人的補償として移籍したのは北海道日本ハム・田中正投手と元埼玉西武・張奕投手だ。
田中正投手は、2016年のドラフトにおいて5球団競合の末に福岡ソフトバンクに入団するなど、飛躍が期待されたが、怪我による離脱も多く、本領を発揮することができず。しかし、2023年に近藤健介選手の人的補償として北海道日本ハムへ移籍すると、プロ7年目にして初勝利を挙げ、以降は主にチームの守護神として起用された。シーズン終盤には痛打も目立ったが、リーグ5位となる25セーブを記録し、怪我なくシーズンを完走している。
張奕投手は、野手としてオリックスに入団後、投手へ転向すると、2019年のプレミア12では台湾代表に選出され、先発投手部門のベストナインに輝くなど、着実に力を伸ばした。その後、森友哉選手の人的補償で埼玉西武へ移籍し、最速157km/hの直球を武器とした活躍が期待されたが、怪我の影響も大きく昨季自由契約に。オフは台湾プロ野球の台鋼ホークスの一員としてウインターリーグに参加した。
【2020年】移籍した両投手がリリーフエースに定着
2020年は、千葉ロッテ・小野郁投手と東北楽天・酒居知史投手が移籍している。
小野投手は東北楽天時代、二軍の抑えとして活躍していたものの、一軍では思うような結果を出せずにいた。しかし、2020年に鈴木大地選手の人的補償として千葉ロッテへ移籍すると、3年連続で40試合以上に登板し、オールスターゲームにも選出されるなど、リリーフの柱へと成長を遂げた。昨季は、怪我の影響もあり10試合の登板にとどまったが、今季はチームの優勝に貢献する活躍を見せたい。
酒居投手も、2020年に美馬学投手の人的補償として東北楽天に移籍すると、移籍1年目からセットアッパーに起用され、46試合に登板。 昨季も47試合で5勝3敗20ホールド、防御率2.98の好成績をマーク。移籍後だけで200試合近くに登板しており、フル回転でチームの救援陣を支えている。今後の活躍にも引き続き期待したい。
【2019年】巨人の左腕エースが人的補償でパ・リーグへ
2019年に人的補償として移籍したのは、現在巨人でコーチを務めている内海哲也氏と元オリックス・竹安大知投手だ。
巨人の左腕エースとして長年チームに貢献してきた内海投手だったが、2019年に炭谷銀仁朗選手の人的補償として埼玉西武へ移籍。過去には最多勝、最多奪三振のタイトルも獲得していただけに、その期待も大きかったが、移籍後3年間の登板数は11試合と、一軍で思うような結果を残すことができず、惜しまれながら、2022年にユニフォームを脱いだ。
2015年にドラフト3位で阪神に入団した竹安投手は、2019年に西勇輝投手の人的補償としてオリックスへ。移籍初年度には「移籍先で初完封勝利を挙げる」という、人的補償選手として2人目となる記録を達成するなど、その後のさらなる飛躍を予感させた。しかし、以降は右肘の状態が思わしくなく、昨オフに自由契約となり、現役引退を決断した。
人的補償選手はあくまでもFA選手の「補償」の位置づけであるため、大型補強にはつながらないケースも多い。しかし、プレーする環境が変わることで大きく飛躍を遂げる選手たちも少なからず存在している。FA権を行使して移籍した山川選手と西川選手はもちろんのこと、彼らの人的補償として移籍した甲斐野投手と日高投手の今後の活躍にも注目したい。
文・輿水佑一郎
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