プレーボールから一番早くヒットを打ったのは誰? 爆速ヒットパレードTOP5

パ・リーグインサイト キビタキビオ

北海道日本ハムファイターズ・奈良間大己選手(C)PLM
北海道日本ハムファイターズ・奈良間大己選手(C)PLM

前回「本邦初」と称したそばから再び新奇な計測が登場

「面白いことを思いつくよね、『パテレ』のスタッフさんたち──」と書いたのは、前回の挟殺プレーのタイムTOP5でのことだった。それに味をしめたのだろうか? いやいや、前回以上に趣の異なる計測データが届いたから驚きだ。

「『爆速ヒットパレードTOP5』……って、なんじゃそりゃ?」と思ったが、「試合開始直後の先頭打者がヒットを打った打席で、プレーボールのコールからバットにボールが当たるまでの時間」とのこと。「炎のストップウオッチャー」を名乗らせてもらっている筆者も思いつかなかったプレータイムだが、ランキングに入ってくる先頭打者たちの早打ち傾向の特性をつかめるという意味では、真面目な目線でも興味深いものがある。

 1番打者だけが味わえる“プレイボール直後の快感”に最も早くたどり着いたのは誰か? 動画と併せてTOP5を紹介していこう。

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判で押したように一二塁間をササッと抜いた小深田大翔選手(東北楽天)

 最初に登場するのは、6秒40というタイムで5位にランクインした東北楽天・小深田大翔選手の爆速ヒットだ。低めのストレートをしっかりとしたスイングでとらえ、打球速度のあるゴロで一二塁間をきれいに抜くヒットとなった。

 試合開始早々、あっと驚くような会心の大飛球が出るのもいいが、こういう“判で押したような”定番のヒットをいとも簡単に打って幸先よくチャンスをつくることは、143試合という長丁場を戦うプロ野球のトップバッターに課せられた大事な仕事の一つだろう。それを実感させる一振りだ。

日本でもっとも“旬”の投手の出鼻をくじいた外崎修汰選手(埼玉西武)の速攻に拍手

 それは、プレーボールからわずか5秒94後のこと。現在の日本球界で、最も攻略が難しい投手の一人といえる千葉ロッテ・佐々木朗希投手の初球を一閃。見事に二塁打で出塁したのは、4位の埼玉西武・外崎修汰選手である。

 佐々木朗投手は、打者を2ストライクに追い込むと150km/hに迫る超高速フォークボールがある。それゆえに、外崎選手はカウントを取りにきたストレートに絞って打った……といえば一見簡単そうに思えるが、とんでもない。

 常時150km/h台を記録し、MAX165km/hを誇る日本人最速男・佐々木朗投手が投じるストレートは、プロの一流打者といえども、とらえるのは至難の業だ。それを一振りで仕留めて左中間を抜くとは。この一打が、埼玉西武ベンチに勢いを与えたのは間違いないだろう。

 実際の結末は、佐々木朗投手がこの一打を皮切りに無死2、3塁のピンチを招きながらも、次打者から3者連続三振の快投で切り抜け、8イニング投げて11奪三振、無失点で勝利投手になってしまうのだから、野球ってやつは……と苦笑してしまうが、それはそれ。外崎選手の職人然とした打撃技術と、初球から狙いにいった勇気には、惜しみない拍手を送りたい。

積極打法のルーキー・奈良間大己選手(北海道日本ハム)が3位に

 次に、3位にランクインしたのは、北海道日本ハムのルーキー・奈良間大己選手の5秒57というタイムだ。

 筆者は常葉大菊川高、立正大とプレーしてきた奈良間選手のアマチュア時代をところどころで見てきたが、高校時代に高校球児がそう簡単には記録することができない「フライの滞空時間6秒台」を記録しており、1番打者でありながらパンチ力も兼ね備えたタイプという印象が強かった。

 加えて、ファーストストライクを積極的に強振していく積極性も当時から売りの一つとしており、今回の爆速タイムと、痛烈なピッチャー返しからのショートゴロ内野安打で出塁する姿に、奈良間選手の一番のセールスポイントが発揮されたプレーだと感じられた。

2位には茶野篤政選手(オリックス)が。ルーキーと相性の良いプレーなのか?

 3位の奈良間選手と同じくルーキーの、それも育成契約からスタートして初年度から支配下契約を勝ち取り、今シーズン序盤に大活躍したオリックス・茶野篤政選手が5秒24というタイムで堂々2位に入った。

 やはり、ルーキーというのはがむしゃらに、ひたむきにプレーをするから、ファーストストライクに迷いなく手を出していく積極性が、2年目以降の選手よりもあるということなのだろうか? 初球のスーッと入ってきたカウント球を逃さず、体が勝手に動いたかのような流麗な流し打ちで見事レフトへ運んだ一打だった。

 ただ、実はこのプレー。当初、審判の判定はレフトの小深田選手がノーバウンドで捕球したとみて「アウト」だった。ところが、オリックスの中嶋聡監督がリクエストを要求し、ビデオ検証を経て「フェア=ヒット」に覆ったのだ。

 報道でも「プレーボール直後の“最速リクエスト成功”」という見出しの方が大きく扱われたプレーだったが、試合開始からバットに当てるまでのタイムもパ・リーグ2位の早さを記録していたのである。

 もちろん、ここではあくまで打った茶野選手が主役である。リアルタイムで目立たなかった分、大いに称賛したいと思う。

番外編 村林一輝選手(東北楽天)が脅威の粘りで最長タイムの先頭打者ヒットを記録

 続いて、恒例の番外編。先にタイムを申し上げると2分53秒63! おいおい、今までこんな長いのが登場したことがあったか? と目を疑う数字が登場してきた。

 これは、東北楽天・村林一輝選手が粘りに粘った末に記録した時間だ。今回のランキングに連ねる「短い時間でヒットを打った」選手たちとは対極をいくプレーというわけだ。

 もともとは守備や代走で一軍の試合に出場する機会を地道に積み上げていた村林選手だが、今シーズンの6月下旬からスタメンに名を連ねると、7月には1番に固定された。ようやく巡ってきたチャンス。若い村林選手は、一軍の投手を相手にとにかく食らいつく打撃を披露した。それを象徴していたのがこのシーンである。

 のっけからこれだけ粘ってくれたら、ベンチサイドとしては、たとえアウトになったとしても十分役目を果たしてくれたと思うだろう。それがヒットになったのだから、これ以上望むことはない。

 今回のランキングは速い時間でヒットを打つ選手に焦点が当たっているが、実を言うと、こちらの方が価値のある仕事をしているよな? と、密かに思ったりしている(笑)。

「爆速ヒット」初代王者誕生の影にハイテンポな相手先発投手の助演アリ!?

 すでに3位入賞を果たしていた奈良間選手が再び登場。「爆速ヒット」の初代王者に輝いた。

 初球のストレートを得意の積極打法で振り抜き、左中間を突破する二塁打とした好プレー。注目すべきはこのときの3秒71というタイムである。自身3位のときの5秒57、そして、2位の茶野選手の5秒24をも大きく引き離すダントツのスピード記録なのだ。

 ここまでくると、打者だけでどうにかなるものではない。そう、先発マウンドにいた埼玉西武・平良海馬投手が元来持つ投球テンポの速さも加わって生まれた奇跡のコラボレーションと言っていいだろう。平良投手は、テンポ良くどんどん投げ込んでいくタイプとして知られている。積極打法の奈良間選手とは、どうやらお互いのリズムが合うようだ。

 もし、これがダンスであったなら、二人はベストパートナーとして称えられたに違いない。だが、残念ながら野球である。ピッチャーとバッターは敵同士。奈良間選手にとって、平良投手は“カモ”になり得る存在であり、平良投手にとっては順風満帆に実績を積み上げてきた現在の自分の立ち位置を脅かす“目の上のコブ”になりかねない。

 来シーズン以降は当然、お互いのリズムを崩し合う駆け引きが展開されることも予想されるが、マイペースな平良投手が自分のリズムを変えてくるというのも考えにくい。そして同じく、今シーズンはたった10試合しか1番打者としてスタメン起用されていないにもかかわらず、1位と3位のダブル入賞を達成した奈良間選手の積極打法もブレることはないだろう。となれば、この二人。来年以降も「プレイボール直後の初球」を巡ってガチンコ勝負を繰り広げる“宿命のライバル”になるのではないか? 密かにそんな期待感が込み上げてきた。

 正直言うと、これまで「プレイボール直後の初球ヒッティングまでのタイム」については深く考えたことがなかったのだが、大変面白かった。新たな“観光名所”を発見した気分である。

 来季はもっと速い「爆速ヒット」が見られるだろうか? 年も明けていないというのに、早くも次の開幕が待ち遠しくなってきた。

文・キビタキビオ

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パ・リーグインサイト キビタキビオ

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