オリックス・山本由伸投手が今年も獲得したことで話題になった「投手4冠」。3年連続3度目の投手4冠達成は前人未到の大記録だ。
そもそも「投手4冠」とは先発投手の主要タイトルである最優秀防御率、勝率第一位投手(最高勝率)、最多勝利、最多奪三振を獲得すること。長いプロ野球史でも達成者はたったの12人という名誉ある称号だ。今回は「平成で投手4冠を達成した名投手」を紹介する。
野茂英雄(平成2年、1990年)
まずは、背中を打者に向ける独特の「トルネード投法」で日米通算201勝を挙げた野茂英雄氏だ。
新日鉄堺からアマチュアNo.1投手として注目され、1989年のドラフト会議で史上最多8球団から1位指名を受け近鉄に入団。ルーキーイヤーからその才能を遺憾なく発揮し、プロ初勝利(4月29日オリックス戦)は1試合17奪三振で飾る。さらに、7月から8月にかけて5試合連続2桁奪三振(当時のNPB記録)もマークした。
新人ながら圧倒的な奪三振能力と豊富なスタミナで投手4冠を獲得。最優秀選手、最優秀新人、ベストナイン、パ・リーグ第1号となる沢村賞も受賞し一大旋風を巻き起こした。
上原浩治(平成11年、1999年)
2人目は、日本で唯一日米通算100勝100セーブ100ホールドを達成した投手である上原浩治氏。
大阪体育大学から1998年ドラフト1位で巨人に入団。5月30日の阪神戦から9月21日の阪神戦まで15連勝を記録するなど、新人離れした活躍で最終的に投手4冠を制する。それとともに最優秀新人、ベストナイン、ゴールデングラブ賞、20世紀最後の沢村賞も受賞した。
斉藤和巳(平成18年、2006年)
最後は通算勝率.775、「負けないエース」として君臨した斉藤和巳氏(現・福岡ソフトバンク四軍監督)。2003年に防御率2.83、20勝、勝率.870で投手3冠に輝き、沢村賞も受賞したが、2006年に再び支配的な活躍を見せる。
6月8日巨人戦で打者27人に対して被安打1のみの準完全試合の好投をするなど、本拠地・ヤフードーム(現・PayPayドーム)では防御率1.26。また全ての月で月間防御率2.50以下をキープした。投手4冠に加えてリーグトップの5完封を記録。ベストナイン、自身2度目の沢村賞も獲得した。
これほどの投手でも2度は手にできなかった「投手4冠」
ここまで平成の投手4冠達成者3名を紹介したが、それ以前をさかのぼってみても、沢村栄治氏、スタルヒン氏、藤本英雄氏、杉下茂氏、杉浦忠氏、稲尾和久氏、木田勇氏、江川卓氏と往年の名投手たちがずらり。
これほどの投手達でも2度は手にすることが出来なかった投手4冠。その称号を25歳という若さで3度達成している山本投手は、もう既に「レジェンド」の域に達しているといっても過言ではないだろう。年々進化を遂げ、日本プロ野球史に残る大投手への階段を上り続ける山本投手。アメリカでの快投にも期待したい。
文・村井幸太郎
関連リンク
・1年目から勝ちパターンに定着。渡辺翔太の“魔球”に迫る
・2023年WBC組のシーズン成績はどうだった?
・「捕手以外のポジションでプレーした捕手」の顔ぶれは
・日替わりオーダーはパのスタンダードに。選手起用から見るオリックスの強さとは
・現役最多本塁打、NPB通算2000投球回…… パ・リーグ各球団の最年長選手
記事提供: