WBCは開幕直前に行われるだけに、シーズン成績に影響が出る懸念も……
2023年は、日本代表が第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)において、3大会ぶりに世界一を奪還した年でもあった。優勝メンバーにはパ・リーグ球団に在籍する選手も13名存在しており、いずれも自らの持ち味を生かしてチームの世界一に貢献を果たしている。
しかし、WBCは例年であれば開幕前の調整期間にあたる時期に開催されることもあり、シーズンに向けた調整に影響を与える可能性もある。過去にはWBC出場後のレギュラーシーズンで不振に陥ってしまった選手も存在しただけに、同一年のシーズン成績は選手にとっても重要なものになってくる。
今回は、2023年のWBCに出場したパ・リーグの選手たちが、同大会前後のレギュラーシーズンで残した成績を紹介。各選手が今シーズンに見せた活躍について、あらためて振り返っていきたい。
自身3度目のセーブ王、3年連続の投手4冠と個人タイトルを獲得した投手も
2023年のWBCに日本代表の一員として出場したパ・リーグの投手が、2022年と2023年のシーズンに残した成績は下記の通り。
伊藤大海投手は2023年の防御率が3.46と、前年の防御率2.95よりも数字を落とした。しかし、奪三振率は6.48から7.87、与四球率は2.83から2.41と、いずれも前年に比べて改善。K/BBは2.29から3.27と大きく良化していただけに、投球内容自体はむしろ進化していたという見方もできよう。
松井裕樹投手はWBCでは1試合の登板にとどまったが、シーズンでは例年通りに東北楽天のクローザーに君臨。59試合で防御率1.57と抜群の安定感を発揮し、39セーブで自身3度目の最多セーブを受賞した。WBCの影響を感じさせるどころか前年以上の好成績を記録し、あらためて自らの実力を示してみせた。
佐々木朗希投手は奪三振率13.35、K/BB7.94という驚異的な数字を残し、指のマメの影響で離脱を経験しながら、7月24日の時点で防御率と奪三振の2部門でリーグトップに立っていた。しかし、同日の試合でわき腹を痛めて長期離脱し、規定投球回到達は果たせず。前年以上に圧倒的な投球内容を見せただけに、2度の離脱が惜しまれるシーズンとなった。
山本由伸投手は大きな故障なくシーズンを投げぬき、16勝、奪三振率9.27、K/BB6.04、防御率1.21と今季もすばらしい投球を披露。3年連続の投手4冠という前人未到の快挙を達成し、リーグ3連覇を果たしたチームを力強くけん引した。フル回転の活躍を見せたWBCの影響も大きくは受けず、NPBを代表する先発投手としての能力を存分に発揮した。
宮城大弥投手は3年連続となる規定投球回到達と2桁勝利をマークしただけでなく、防御率は前年の3.16から2.27へと1点近く改善。左のエースとして山本投手と強力な両輪を構成し、与四球率1.90、K/BB3.94、WHIP0.94と投球内容も良化させた。
宇田川優希投手は序盤から調子が上がらず、2023年の6月は月間防御率9.00と苦しんだ。しかし、7月の防御率は0.84、8月は同1.50、9月は同1.08と、夏場以降は好投を継続。46試合で20ホールド・2セーブ、防御率1.77を記録してリーグ優勝にも貢献し、ブレイクを果たした前年終盤の勢いそのままに、ブルペンの主力として確固たる地位を築いた。
山崎颯一郎投手は前年の終盤戦と同じくリリーフ陣の柱としてフル回転し、勝ちパターンとして53試合で27ホールド・9セーブを記録。9月20日の時点で防御率1.05と、まさに抜群の安定感を誇った。9月26日に6失点を喫して最終的な防御率は2点台となったが、奪三振率10.38とすばらしい数字を記録し、リーグ優勝の胴上げ投手となる大活躍を見せた。
野手でも2冠王に輝いた好打者や、自身2度目の盗塁王を手にした韋駄天が存在
続いて、2023年のWBCに日本代表として参加したパ・リーグの野手が、2022年と2023年に記録した成績を見ていこう。
源田壮亮選手はWBCで負った故障の影響で5月26日まで出場できなかったが、復帰後は従来通りに遊撃手のレギュラーを務めた。約2カ月の離脱がありながらプロ入りから7年連続となる100試合出場を達成し、上位打線を務めて一定の数字を記録。守備面でも6年連続となるゴールデングラブ賞を受賞するなど、今季もチームの核として活躍した。
近藤健介選手は移籍1年目の今年、自身初となる全試合出場を達成。26本塁打、87打点、OPS.959と圧巻の打棒を発揮し、本塁打王と打点王の2冠に輝いた。最終盤まで三冠王の可能性も残すほどの圧倒的な活躍ぶりを見せ、レギュラーとして活躍したWBCの直後にキャリアハイのシーズンを送るという、まさに驚異的な1年を過ごした。
甲斐拓也選手は前年を上回る139試合に出場し、2年ぶり4度目の2桁本塁打を記録。2022年は打率.180、OPS.498と深刻な打撃不振に陥っていたが、2023年は打率.202、OPS.602と、打撃成績も前年に比べて向上させた。FAで嶺井博希選手が加入した今季も正捕手の座を譲ることなく、扇の要として不動の地位を守り抜く働きを披露した。
牧原大成選手は今季も二塁手と中堅手を中心に、攻守にわたってユーティリティとして奮闘。しかし、打撃面では2022年の打率.301から同.259に数字を落とし、故障の影響で8月30日を最後に戦列を離れた。なかなかセンターを固定できないチーム事情を鑑みても、本人とチームの双方にとって惜しまれる長期離脱となってしまった。
周東佑京選手は自己最多の114試合に出場し、打率.241を記録。WBC準決勝で披露した圧倒的な脚力はシーズンでも発揮され、36盗塁で3年ぶり2度目の盗塁王を獲得した。守備でも内外野の3ポジションをこなしつつ、外野手としてたびたび俊足を生かした好守を披露。スタメンから途中出場まで幅広い起用に応え、故障者が続出したチームを支えた。
WBC直後のシーズンで、好成績を残した選手が多く存在したのは興味深い要素だ
山本投手、松井投手、宮城投手、宇田川投手、山崎颯投手の5名は前年以上の成績を残し、WBCの影響を感じさせない大活躍を見せた。野手では近藤選手が2冠王に輝くほどの大活躍を見せ、甲斐選手も打撃面で復調の兆しを見せた。周東選手も自身2度目の盗塁王のタイトルを獲得するなど、WBCを経て成績を向上させた選手が多く存在した点は興味深い。
その一方で、WBCで右手小指を骨折した源田選手をはじめ、佐々木朗投手と牧原大選手もシーズン中に故障で長期離脱を余儀なくされた。佐々木朗投手はキャリアハイの投球内容を示し、源田選手と牧原大選手も出場した試合では堅実にチームに貢献していただけに、WBCと故障の因果関係について考えさせられる部分もある。
それでも、17試合の出場で0本塁打に終わった山川穂高選手を除けば、大きく成績を落とした選手は存在しなかった。過去には2017年の石川歩投手や大野奨太選手のように、WBC出場を境に大不振に陥ってしまった選手も存在したなかで、2023年の優勝メンバーの多くが継続して結果を残している点は頼もしい限りだ。
列島に歓喜の渦をもたらした侍ジャパンのパ・リーグ戦士たちが、今後も日本を代表する選手として活躍を続けてくれるか。総じて明るい兆しを見せてくれた2023年のシーズンに続く、今後の各選手の活躍にも大いに期待したいところだ。
文・望月遼太
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