オリックス・バファローズがパーソル CS パ第4戦で千葉ロッテマリーンズを下し、3年連続となる日本シリーズ進出を決めた。終わってみれば4勝1敗(アドバンテージ1勝含む)と余裕のある勝ち上がり方に見える。
しかし全試合見た人はそのようには感じないほど、見ごたえのあったシリーズだったのではないだろうか。
そのなかでもこのシリーズのポイントになった試合に、唯一の負け試合だった第2戦をあげたい。
田嶋大樹の続投に見た、短期決戦の戦い方の難しさ
オリックスは、初戦をエース山本由伸投手で苦しみながら勝ち、この試合も勝てばパーソル CS パの突破を一気に手繰り寄せるという10月19日の第2戦は、田嶋大樹投手を先発のマウンドに送った。
序盤は審判とのストライクゾーンの兼ね合いで苦しみながらも、決して悪い出来ではなかった。力のあるストレートと、流れるように落ちるスライダーを武器に、中盤から勢いに乗っていき、5回終わって67球3失点と、シーズン中ならもちろん続投な場面だ。
そしてこの日も田嶋投手は6回もマウンドに上がる。そしてツーアウトまで問題なく進むのだが、そこからが難しかった。
石川慎吾選手に少しボールが荒れた感じで四球を出し、続くポランコ選手をストレートの四球。ツーアウトを簡単にとってから2人続けて四球を出して1、2塁のピンチをつくってしまう。それでもまだ球数は87球。
田嶋投手の体力であればまだ問題のない球数ということもありタイムをかけ、平井コーチを中心に一度はマウンドに集まるものの、ベンチは続投を決断する。そして続く岡大海選手に初球ボールからの2球目、甘く入った変化球でタイムリーを浴び3対2と1点差に迫られてしまう。
交代もあるかと思ってみていたが、次の打者が左打者の安田尚憲選手ということもあってか、あと1つのアウトを田嶋投手に任せることをベンチは決断。
だがここでも2ボールとボール先行させて3球目の甘く入ったカットボールを痛打されてしまい、逆転を許してしまう。打者の安田選手が走塁でアウトになったためこの回はここでチェンジとなったが、結果継投のタイミングを失敗した形となった。
ここで思ったのはシーズンとは違うポストシーズンの継投の難しさだ。
田嶋投手はこの試合決して調子が悪いわけではなく、最後の場面以外はしっかりと自身の役割を果たすピッチングだったと思う。シーズンでいえばここでの続投の決断は決して難しいものではなく、本人の意思がある限り、続投させるという選択をするのがセオリーな場面だと思う。
だがロッテのポストシーズンを勝ち上がってきた勢いと、この回2アウト取ってからの田嶋投手のボール先行ということを見れば、継投もありだったのかなと結果論ながらに思う(ただあそこで田嶋投手が抑えていれば何も言われなく、次の回からリリーフに変わっていたと思うので一概に失敗ともいえないのだが……)。
試合後の監督の会見でも中嶋監督自身が「自分のミス」と言ったようにすごく難しい展開であった。
そして迎えた第3戦、先発は球団新記録となるデビューから無傷の7連勝とチームの優勝に大貢献した東晃平投手が上がる。
この日も初回ピンチを迎えるもののしっかり後続を抑え、2回には3者連続三振に仕留めるなど、さすがのピッチングを披露した。5回投げ終わり東投手は76球で0対0と緊迫した試合になる。ここもシーズンなら間違いなく球数的にも続投の場面であるが、前日の第2戦をふまえてなのか、中嶋監督は6回からリリーフ陣にスイッチ。残り4イニングをオリックス自慢のリリーフ陣がしっかり抑えて完封勝ちを収めた。
続く第4戦も同じような展開になる。この日は左のエース宮城大弥投手がマウンドに上がり、味方の先制点もあり本来の力を存分に発揮。6回無失点で前日の東投手と同じく76球。宮城投手であればシーズン中はここでももちろん続投で、完封を狙えるくらいの場面であるが、ここも早めの継投に回し7回を阿部翔太投手、8回を山崎颯一郎投手、9回を抑えの平野佳寿投手としっかり逃げ切った。
ポストシーズンという全ての試合が大事となるところでの継投というのは本当に難しいということがわかったパーソル CS パであった。
第2戦で失点した山岡泰輔を、翌日の試合で登板させたのもポイントに
投手起用という意味でもうひとつ“さすが”と思ったポイントがある。
それが山岡泰輔投手の起用法についてである。
第2戦は守護神・平野佳投手がベンチ入りしていなかったこともあり、抑えとしてマウンドに上がった山岡投手は、間隔が空いたこともあってか本来の実力が出せず、サヨナラ負けを許してしまう。
普通なら次の日からの登板はやや慎重になってもおかしくないが、中嶋監督は続く第3戦の0対0の同点で迎えた7回という大事な場面に、山岡投手をマウンドにあげたのだ。そこで山岡投手は死球で1人ランナーは出すもののしっかりと抑えた。試合後の山岡投手のコメントでは、「早めに投げさせていただいた監督に感謝したい」とのコメントもあった。
これがオリックスの強さを象徴する場面であったと思う。
選手がもし結果を出せないことがあってもすぐにチャンスを与える。そして選手がその期待に応えるということがシーズン中から行われ、全員が勝ちパターンで投げれるリリーフ陣が揃っている。
日本シリーズでは阪神タイガースとの関西ダービーとなったわけだが、どちらも投手力が武器のチームで1点を争う試合が多く予想される。
先発投手からリリーフへの継投のタイミング、そしてリリーフ陣の起用法が見どころになるだろう。ぜひそんなところにも注目してみてほしい。
文・鈴木優
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