高卒4年目で3度以上の2ケタ勝利は、藤浪晋太郎（阪神）、大谷翔平（北海道日本ハム）以来

　今季も2ケタ勝利を挙げる活躍を見せ、オリックスの優勝に貢献した宮城大弥投手。ここまでキャリアハイとなるシーズン3完封をマークするなど、安定感抜群のピッチングで山本由伸投手や山下舜平大投手とともに強力投手陣を形成し、チームを3連覇に導いた。本稿では宮城投手が今季見せた投球の変化について迫っていきたいと思う。

WBCの経験を経て進化。ダルビッシュ有直伝のフォークボール

　今年の自主トレで「チェンジアップだけでは対応されやすい、もう少し速い落ちる球が欲しい」と語っていた宮城投手。今季はシーズンの開幕前に侍ジャパンの一員としてWBCに出場を果たしたが、そこでチームメートだったダルビッシュ有投手（パドレス）からアドバイスをもらうなど、フォークの完全習得に取り組んできた。実際にここまでの球種別投球割合を見ていくと、昨季までと比べてフォークは約7ポイント近く上昇しており、チェンジアップとほぼ同割合で投じるようになった。まだまだ成長途上だが、実戦で自信を持って使えるレベルまで磨き上げることができているといえる。

より緩急を生かせる球速帯に

　次に各球種の平均球速を見ていこう。フォークの平均球速は約135キロで、持ち球ではストレートの次に速いボールになっている。球速分布的にストレートが約145 キロ、スライダーとチェンジアップが125 キロ前後で球速差が約20 キロ開いている。そこを埋めるボールとしてフォークは効果を発揮しており、投球割合が増えた今季は打者にとってより狙い球が絞りづらくなっているといえるだろう。加えて今季はカーブが昨季までと比べて10 キロ以上遅く、例年以上に「緩急」というところにフォーカスを置いたピッチングを見せている。

球速差を生かして打者を翻弄するスタイル

　フォークがしっかりと操れるようになったことに加えて球速を落としたカーブを投じるようになった今シーズン。打者はストレートか135キロ前後で落ちるフォーク、125 キロ前後で曲がるスライダーとチェンジアップ、100 キロを切るほどのスローカーブと縦横への変化や幅広い球速帯に対応しなければならなくなり、より捉えるのが困難になった。今季の見逃しでストライクを奪った割合はパ・リーグ投手の中でトップを記録。同ランキングの2位にはこちらも緩急とコントロールを武器とする左腕の北海道日本ハム・加藤貴之投手が入っており、球速差を生かして打者をいかに翻弄しているのかがわかる数字といえるだろう。

「新球・フォーク」も高水準。球界トップクラスの3つの変化球

　打者のタイミングや狙いを外すことにより一層の成長が見られた今季のピッチング。最後に各球種の被打率を見ていく。カーブこそ球速を落としたことも影響してか打者に狙われて捉えられることが増えたものの、その他の球種は軒並み高水準の数字をマーク。完全習得を目指したフォークも1割台と力を発揮しており、今季のさらなる躍進を支える「新球」として十二分に機能した。

　体調不良の影響でチームの3連覇の輪の中には加われなかったが、8月から9月にかけて29イニング連続無失点を記録するなど、間違いなく優勝の立役者といえる活躍を見せた宮城投手。同期入団である紅林弘太郎選手はビールかけのインタビュー中に宮城投手に対して「日本一取って、また一緒にビールかけしようぜ！」と呼びかけた。固い絆で結ばれた盟友との約束を果たすべく、次はパーソルクライマックスシリーズ、SMBC日本シリーズのマウンドで躍動し、みんなと喜びを分かち合う左腕の姿を期待したいところだ。

※文章、表中の数字はすべて2023年9月23日終了時点

文・データスタジアム編集部

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