6回先頭に四球を許し「野手は守りやすくなったぞ!」と若月が激励
1本もヒットを打たれていないのに、野手陣がマウンドに集結した。オリックスの山本由伸投手が9日に敵地で行われた千葉ロッテ戦で、NPB史上100度目(自身2度目)となるノーヒットノーランを達成。その試合の6回、先頭の安田に四球を許すと、捕手の若月が駆け寄った。3点リードの展開ながら、頓宮、宜保、安達、西野が次々と集まった。
「若月さんが1番最初に『よっしゃ、これで野手は守りやすくなったぞ!』と冗談で言ってくれました。(完全試合ペースで)みんな緊張していたらしいんですけど、ホッとした表情になっていました」
仲間の表情を見て、少しだけ肩の荷が降りた。その後もスイスイと快投を続けた。9回2死から荻野に死球を当ててしまうが、最後は藤岡を二ゴロに封じてゲームセット。途中出場の山足から2年連続で“記念球”を受け取ると、歓喜のウォーターシャワーに濡れた。
前髪をかき上げてお立ち台に上がると、敵地に集ったファンを沸かせた。「すごくチームの雰囲気が良かった。誰かにミスがあっても、みんなでカバーできたらノビノビ野球ができる。今のオリックスには、そんな空気が流れています」。言葉を紡ぐように、山本は味方野手が失策を犯しても顔色を変えることはない。むしろ、笑顔が映える。
「真剣にプレーしていても、ミスはつきもの。減らせるのがベストだと思いますけど、(失策を)やらかした選手も一生懸命プレーしている。僕も(投球が)良い日と悪い日がある。前向きに、というか。楽しく野球ができる環境が1番かなと思っています」
絶対的エースになっても「僕は運が良かった!」山本の素顔
絶対的エースになっても、マウンドでは孤独。三塁手の宗や、一塁手の頓宮がピンチでマウンドに来てくれるのは、内心、嬉しいという。「(野球は)間がすごく大事なスポーツ。流れが左右するスポーツなので、仕切り直す空間を作ってくれるのはありがたいです。自分だけではわからないこともありますから」。晴れやかな笑顔で話す。
2019年のプレミア12で優勝、2021年は東京五輪で金メダル、パ・リーグの頂点へ。2022年は悲願の日本一に輝くと、今春はWBCで世界一に大きく貢献。20日の千葉ロッテ戦に勝利し、3連覇も成し遂げた。「僕は運が良かった! ただ、それだけです」。貫禄ある“王者”は、謙遜を重ねて成長していく。
(真柴健 / Ken Mashiba)
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