今季の開幕投手を任された6投手は、いずれも一定以上の投球を披露した
2023年のプロ野球が開幕して1週間。WBCの影響もあって各球団の先発ローテーションはやや複雑化しているが、開幕投手に関しては、チームを上昇気流に乗せてくれることを期待しての抜擢という点は例年と相違なかっただろう。
今季の開幕投手の顔ぶれは、下記の通りだ。
北海道日本ハム:加藤貴之投手
東北楽天:田中将大投手
埼玉西武:高橋光成投手
千葉ロッテ:小島和哉投手
オリックス:山下舜平大投手
福岡ソフトバンク:大関友久投手
開幕戦では6名ともに5回以上を投げて3失点以下と、どの投手も一定以上の投球を披露。開幕投手の座に相応しい実力を証明してくれたといえよう。
さて、去る2022年に開幕投手を務めた6名の投手たちは、それぞれどのようなシーズンを送ったのだろうか。今回は、昨季の開幕投手を託された投手の顔ぶれと、実際の投球を振り返るとともに、各投手が年間を通して活躍できたか否かを確認していきたい。
北山亘基(北海道日本ハム)
北山亘基投手は、京都産業大学から2021年のドラフト8位でプロ入り。オープン戦で5試合に登板して2セーブを挙げ、防御率0.00とアピールに成功し、リリーフとして開幕一軍入りを果たす。そして、開幕戦からブルペンデーを用いるという新庄剛志監督の奇策によって、ルーキーながら開幕投手に抜擢された。
その開幕戦ではオープナーとして2回を消化。2安打3四球と走者こそ出したものの、粘りの投球を見せて無失点と大役を果たした。その後もブルペンの中心として55試合に登板し、防御率3.51、奪三振率10.17と持ち味を発揮。ドラフト下位指名ながらその投球がプロでも通用することを示し、ルーキーイヤーから大いに存在感を示してみせた。
則本昂大(東北楽天)
則本昂大投手は新人ながら開幕投手を務めた2013年を皮切りに、2022年までに通算7度の開幕投手を務めてきた。2年ぶりの大役を務めた昨季は5回までノーヒットの快投を見せながら、6回に3失点を喫して負け投手に。その後は新型コロナウイルスへの感染もあり、シーズン2試合目の登板は5月1日まで遅れることになった。
だが、復帰した5月からは2カ月連続で月間防御率2点台を記録し、3勝ずつを積み上げて復調を示す。7月は防御率6.48、8月は防御率5.87と夏場に調子を崩したが、9月には3戦3勝、防御率2.14と再び快投を見せ、2年連続8回目となる2桁勝利に到達。通算100勝と1500投球回にも到達した節目のシーズンを、良いかたちで締めくくってみせた。
高橋光成(埼玉西武)
高橋光成投手は2021年に自身初の開幕投手を務め、オリックスを相手に7.1回を3失点に抑えて勝ち投手に。2022年には2年連続で大役を任されたが、同じくオリックスに対して7回2失点と力投しながら敗戦投手に。その後も開幕から3試合続けて勝ちがなかったが、4試合目で初白星を挙げてからは4連勝を記録した。
その後も先発陣の柱として活躍を続け、4月15日からシーズン終了まで防御率2点台以下の数字を維持し続けた。8月16日以降の7試合で6勝と終盤戦で勝ち星も量産し、自己最多の12勝を挙げた。3年連続で規定投球回に到達し、防御率も前年の3.78から2.20へと劇的に改善。先発としての大きな成長を示す、非常に充実したシーズンを過ごした。
石川歩(千葉ロッテ)
石川歩投手は2019年と2020年に開幕投手を務め、2022年は2年ぶり3回目の大役に。その開幕戦では高卒新人の松川虎生選手とバッテリーを組み、7回無失点の好投で白星を挙げた。4月に入ってからも5試合に登板して防御率1.05と好投を続け、最優秀防御率に輝いた2016年の大活躍を思い起こさせる快投を披露した。
その後も6月7日まで防御率1点台と安定した成績を維持していたが、腰痛の影響による登録抹消を経てからは調子を崩し、7失点を喫した9月13日の投球が年間最後の登板に。故障もあって中盤戦以降に失速こそしたものの、防御率2点台でシーズンを終えたのは実に6年ぶり。若き捕手との新バッテリー形成が奏功し、復調を印象付けたことも確かだ。
山本由伸(オリックス)
山本由伸投手は2021年に自身初の開幕投手を務めたが、味方のエラーもあり、7回を投げて自責点1ながら敗戦投手に。しかし、2022年は2年連続の開幕投手を務め、8回無失点と前年を上回る好投を披露して白星を記録。チームの開幕戦での連敗を10でストップさせて長年のジンクスを払しょくすると、その後も支配的な投球を続けていった。
6月18日の埼玉西武戦ではノーヒットノーランの快挙も達成し、前年に続いて最多勝、最優秀防御率、最多奪三振、最高勝率の投手4冠に輝く抜群の成績を残した。リーグMVPと沢村賞も2年連続で受賞し、防御率1点台と200奪三振というボーダーも2年連続でクリア。前年に見せたフル回転の影響を感じさせない、圧倒的なシーズンを送ってみせた。
千賀滉大(福岡ソフトバンク)
千賀滉大投手は2018年と2019年に開幕投手を務め、2022年は3年ぶり3度目となる大役を任された。勝ち星こそつかなかったが7回1失点の好投で開幕戦の勝利に貢献すると、4月は5試合に登板して3勝、防御率0.71と圧倒的な投球を見せた。だが、その後は故障や新型コロナウイルスへの感染などにより、複数回の戦線離脱を強いられることになった。
それでも、6月以降は全ての月で防御率2点台以下と流石の安定感を見せ、離脱期間がありながら規定投球回に到達して11勝をマーク。先発ローテーションに定着した2016年以降では初となる、防御率1点台も記録した。例年以上の投球内容を示した点に加え、ポストシーズンでも気迫の投球を見せるなど、大いに存在感を示したシーズンといえよう。
2022年の6投手はいずれも活躍を見せただけに、今季の面々にも期待を寄せたい
北山投手は新人ながらブルペンの主軸として奮闘し、則本投手、高橋光成投手、山本投手、千賀投手の4名はいずれも2桁勝利を記録。石川投手は故障の影響もあってシーズン途中に調子を崩したが、それでも防御率2点台と復調傾向を示した。今回取り上げた投手たちは、総じて主戦投手に相応しいピッチングを見せてくれたといえよう。
2023年に開幕投手を務めた6名の投手たちも、前年に大役を務めた投手たちに引き続き、一定以上の活躍を披露することができるか。開幕投手の座は、いわば首脳陣からの期待の表れ。各投手にはその期待に応える快投を続け、シーズンを通してローテーションをけん引してほしいところだ。
文・望月遼太
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