来日6年目を迎える今季、自身初となるパ・リーグ球団での挑戦が始まる
2018年から巨人でプレーしていたC.C.メルセデス投手が、2022年オフに千葉ロッテへ移籍、5日に先発登板する。巨人時代は5年間にわたって先発として安定した投球を見せただけに、新天地でも先発陣の一角としての働きが期待されるところだ。
今回は、メルセデス投手のこれまでの球歴に加えて、各種指標、結果球の割合、交流戦での成績といったデータを紹介。来日7年目を迎える助っ人左腕が、初挑戦のパ・リーグにいち早く適応できる可能性について考えていきたい。
育成契約から這い上がり、計算の立つ先発左腕として5シーズンにわたって活躍
メルセデス投手がNPBで記録してきた、年度別成績は下記の通り。
メルセデス投手は2017年に育成選手として巨人に入団。来日2年目の2018年に二軍で防御率2.05と好投し、活躍が認められて7月に支配下登録を勝ち取る。その後は一軍でも先発の一角に定着し、92イニングで防御率2.05と安定感抜群の投球を披露。ほぼ後半戦のみの登板ながら鮮烈な印象を残し、一躍ブレイクを果たした。
続く2019年も引き続き先発を務め、自己最多の120.1イニングを消化。前年ほどの安定感はなかったものの、防御率3.52を記録して8勝をマークした。続く2020年は故障の影響で11試合の登板にとどまったが、防御率3.10と登板した試合では一定の投球内容を示した。
2021年も先発の一角として7勝を挙げ、2022年は20試合に登板して3年ぶりに100イニングを突破。一軍にデビューした2018年から5年連続で防御率3点台以下と、不振に陥ったといえる年が一度もない出色の安定感を誇る。千葉ロッテに移籍して迎える2023年も、これまで同様の活躍を見せられるだろうか。
典型的な「打たせて取る」スタイルながら、その安定感は出色
次に、メルセデス投手がNPBで記録してきた各種の指標を見ていきたい。
キャリア通算の奪三振率は6.46と低い一方で、与四球率は5年続けて2点台以下。制球よくストライクゾーン内に投げ込んでいく、典型的な“打たせて取る”タイプの投手といえる。
一軍にデビューした2018年の奪三振率は5.18と極端に低かったが、与四球率は1.57と非常に優れていた。ただし、被打率やBABIPといった、セイバーメトリクスでは投手にコントロールできる要素が少ないとされる指標が軒並み優秀だったこともあり、運に恵まれた面も否めなかった。
果たせるかな、翌年は被打率とBABIPがいずれも悪化し、防御率も前年に比べて下落した。それに伴い、与四球率は2点台と多少悪化した一方で、非常に低かった奪三振率はやや改善。多少のモデルチェンジによって運の揺り戻しを克服し、大崩れはしなかったとも考えられよう。
その後も被打率は年ごとに変化していたものの、防御率は毎年安定した水準を維持している。打たせて取るタイプながら被打率やBABIPから過度の影響を受けない安定性は、メルセデス投手の大きな強みと言えそうだ。
ただし、2021年には例年並みの与四球率を維持しながら奪三振率を向上させ、K/BBはキャリアベストの3.36を記録。しかしながら、被打率の悪化に伴い、防御率はキャリアワーストとなっている。持ち前の安定感で一定の成績を残し続けているとはいえ、打たせて取るタイプであるが故に、守備力も含めた周囲の環境はより重要となりうる。
その点、千葉ロッテ先発陣の主軸には、石川歩投手、美馬学投手、小島和哉投手と、打たせて取るスタイルの投手が既に多く存在している。抜群の奪三振率を誇る佐々木朗希投手は例外的だが、同タイプの投手が活躍できる土壌が出来上がっていることは、メルセデス投手にとってもプラスとなりそうだ。
交流戦では2年続けて、パ・リーグの球団を相手に好投を見せた
続いて、メルセデス投手の交流戦における成績を紹介する。
2019年は3試合の登板で防御率4.02とやや安定感は欠いたが、15.2イニングで17奪三振を記録し、奪三振率9.77と力強い投球を見せた。そして、2021年は2試合の登板でいずれも白星を挙げて自責点はわずかに1、防御率0.71と圧倒的な投球を披露した。続く2022年も3試合に登板して防御率2.70と、2年続けて好投を見せている。
2022年終了時点で、交流戦における通算防御率は2.61と優秀だ。また、通算の奪三振率も8.19とキャリア平均(6.46)を大きく上回っており、打たせて取るだけにとどまらない投球を見せている点も特筆に値する。総じてパ・リーグとの相性の良さを感じさせる数字が並ぶだけに、所属リーグが移る今季は、さらなる好成績も期待できるだろう。
投球の軸となる速球とスライダーは、被打率の面でも優秀な数字を記録している
ここからは、メルセデス投手の球種について見ていこう。メルセデス投手が2022年に記録した、結果球における球種の割合は次の通り。
140km/h台の速球と、120~130km/h台のスライダーの2球種が投球の中心だ。それに加えて、110~120km/h台の大きく曲がるカーブ、130km/h台の小さく変化するチェンジアップも一定以上の頻度で投じ、速球に近いスピードで変化するツーシームも稀に使用する。
その中でも速球の割合は結果球の半分以上を占めており、打たせて取る投球の軸となっていることがわかる。また、スライダーも全体の1/4に近い割合で使用しており、変化球の中では特に頼れるピースとして重用している。
最後に、メルセデス投手が2022年に記録した球種別の被打率を確認していこう。
ストレートとスライダーの被打率は、ともに全球種を合計した被打率(.260)を下回っている。これらの球種が多投するに値するものであることが、この数字からも読み取れる。また、ツーシームは投じる割合こそ少ないものの、被打率.143と抜群の数字を残している。
その一方で、カーブは被打率.314、チェンジアップは被打率.364と、いずれも打ち込まれている。球速と変化量の両面で投球にアクセントを加えられるカーブ、変化量の小ささや速球との球速差の少なさから「抜く」配球に適したチェンジアップは、いずれも重要な球種となりうる。年が変わり、環境も変わることによって、被打率や配球にも変化が及ぶのかは興味深いトピックとなりそうだ。
新天地でさらなる飛躍を果たし、チームの慢性的な左腕不足を解消できるか
千葉ロッテの先発投手陣は慢性的に左不足であり、数年以上にわたってローテーションを守っている左腕は小島投手ただ一人。ロメロ投手が昨季限りで退団し、本前郁也投手、佐藤奨真投手、鈴木昭汰投手といった若手たちもローテーション定着を果たせていないだけに、貴重な先発左腕のメルセデス投手にかかる期待は大きなものとなる。
交流戦で見せたパ・リーグ球団との相性の良さ、千葉ロッテ投手陣の傾向に合致する打たせて取る投球スタイルと、移籍を機にさらなる飛躍を果たしうる材料も少なからず存在。3月8日に29歳を迎えたばかりと、年齢的にもこれから全盛期を迎える可能性は大いにある。来日7年目を迎える大型左腕が新天地で不動の存在となれるか、その投球には要注目だ。
文・望月遼太
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