【宗佑磨×鈴木優 対談企画】V3のキーマンが迎える9年目の充実の春

パ・リーグ インサイト 鈴木優

 昨シーズン、パシフィック・リーグで2年連続優勝、さらに悲願の日本シリーズ優勝を果たしたオリックス・バファローズ。再び頂点を目指し、現在一軍二軍総出で早春の宮崎で研さんを積んでいる。

 今回は9年目のシーズンを迎える宗佑磨選手に話を聞く。

 実は筆者(元オリックス投手 鈴木優)と宗選手は同期入団であり大親友。いまも親交が深い。入団9年目、選手としても円熟味を増してきた宗選手のプレー内外の魅力に迫る。

・オリックス・バファローズ 宗佑磨選手(以下、B宗)
・パ・リーグ インサイト 鈴木優(以下、イ鈴木)

「あの子からしたら、おれはすごいおじさんに見えるのかな(笑)」

イ鈴木「どうですか今年のキャンプは。日本一になりましたけど……って、なんで敬語なんだろう。いいかな? いつもどおりで(笑)。パッと来た感じではお客さんがすごく入っていると思ったけど」

B宗「そう、多分増えてる。しかも女性のファンが増えていると思う。多分“颯一郎(山﨑颯一郎投手)効果”だよ」

イ鈴木「いや、“宗効果”でしょ」

B宗「おれはダメだな。颯一郎、福也さん(山﨑福也投手)とかだな」

イ鈴木「そんなことはないと思うけどな。宗のユニフォーム着ている人もたくさんいるから。それで宗自身はどう? 調整とか」

B宗「B班でやらせてもらっているけど、今年は全体練習がキュッと(短く)なっているね。自分で調整をやっていく感じかな。個人練習の時間が増えているから、自分の課題に向き合いやすくなっている。そういう面ではいい感じだと思う」

イ鈴木「宗自身の身体とかのパフォーマンスとかもいい感じ?」

B宗「まあまあ、痛いところはなくはないけど、できるレベルだし。そこから試合とかも入ってくるから、そこから徐々に動かしていって、いい感じで試合に入れたらいいな」

イ鈴木「最近記事でも出ている内藤鵬くん(2022年ドラフト高卒2位)とかどうなの?」

B宗「やっぱパワーあるよ。高卒の感じがしない。堂々としてる」

イ鈴木「ホームランバッターとしてすごくいい?」

B宗「そうだね。長距離ヒッターって感じ」

イ鈴木「ポジションはどこなの?」

B宗「サードとかじゃない? B班では、おれとか西野さん(西野真弘選手)と一緒にPFP(Pitchers Fielding Practice, 投内連携)とかやってる」

イ鈴木「じゃあ若い子からしたら、宗がB班に行くことによってコミュニケーションがとれるのはいいことなんじゃない?」

B宗「そうなのかな、おれはわからないけど。でもおれらが1年目のときだと、9年目とかって言ったらTさん(T-岡田選手)とかくらい? そう考えたら、あの子からしたら、おれはすごいおじさんに見えるのかな(笑)」

イ鈴木「おれらより後に入団した人が多いじゃん? それに、宗はここまでレギュラーとして日本一取って、このチームを引っ張っていくキャプテンシーとか心の変化はどう?」

B宗「ないっす(笑)。正尚さん(吉田正尚選手)とかもいなくなって、まだまだ(チームとして)実力不足とか、そういうところも試合で感じるところも多い。
でも(試合に)出ている数は、多分上から数えたほうがはやいからさ。そういう意味では、試合に出してもらえるとなったら、引っ張っていけるようなプレーをしたいし、そういう声かけもしていきたいな」

イ鈴木「宗は結構年齢に関わらずピッチャーに声かけに来てくれるじゃん。それはピッチャーからしたらすごくありがたいと思うよ」

B宗「いやでも最初は行きづらいよ。だって何言っていいかわからないし。みんなほぼ年上なわけじゃん。けど1年間試合に出させてもらう立場になってから、そういうのもやっていかないと、と思った。それにこっちが嫌というより、ピッチャーも来てほしいタイミングとかあったでしょ?」

イ鈴木「うん、いっぱいあったよ(笑)」

B宗「そういうのも出ている人がやらないと。ベンチにいる人にはできないからね」

イ鈴木「でも意外とピッチャー側からしたら、全く嫌なものではないから、行けば行くほどいいと思う。宗的に見て、若手ピッチャーでこの投手はいいなっていう人いるの?」

B宗「舜平大(山下舜平大投手)じゃない? 球エグいぞ」

イ鈴木「なるほど、今日ブルペン見たけど体つきもフォームも結構変わったよね」

B宗「変わった。なんか大谷翔平さんっぽいイメージ。本人に聞いたわけじゃないからわからないけど、意識していると思う。それ(大谷選手)にしかみえないし、1人だけキャッチボールでも球質が違うんだよね。軽く投げているのに糸を引いているような」

イ鈴木「今シーズン楽しみな選手の一人だね。例年よりは、若干スロースペースで調整してる感じ?」

B宗「WBCで開幕が1週間くらい遅れるんだよね。だからそれでずれているんだと思う。全体練習で身体がそこまで疲れない分、自分でやらなきゃって気持ちになるから、これはこれでいいと思う」

目指す数字は3割2桁HR。一流になるために日々の“ちょっと”の積み重ねを

イ鈴木「今シーズン、守備は文句ないと思うけど、バッティングとか目指している数字とかはあるの?」

B宗「やっぱり3割は打ちたいと思っているし、レギュラーとしてサードで出るとするなら、2桁ホームランという結果も必要になってくると思う。昨季は長打が例年に比べて少なかったから、そこは増やしたいね」

イ鈴木「なるほど。でも率が上がったら、必然と長打も増えてきそうだよね」

B宗「そう、それもある。基本的なことをずっとオフシーズンはやってきたから。いい選手って練習と試合の姿が一緒だと思うんだよね。正尚さんとかバッティング練習でやっていることを、そのまま試合でできていると思うな」

イ鈴木「バッティング練習めちゃくちゃ飛ばすけど、試合になると全然打てない人とかもいるよね」

B宗「そうそう。そういう選手はスイングの形が変わっちゃうんだよね。これはずっと思っていることけど、再現性を高くしたいから、そこを試合でできるように調整していきたいな」

イ鈴木「守備ももちろん、バッティングフォームも再現性を高くしないといけない」

B宗「もちろん。そのために正しい練習をしないといけないわけだね」

イ鈴木「自分のなかでは何番打ちたいとかあるの? 昨季は2番が多かった?」

B宗「いや、でも昨季は、得点圏打率もちょっと高かったりしたから、5、6番も多かったんだよね。正尚さんとかが長打で出た後に、それを返す役目も一昨年に比べて多かった。そこは嫌いではなかったけど、そこに立つならもう少し長打率とかが必要になってくるよね。1番はムリだなー」

イ鈴木「あ、そうなの? おれは宗の1番好きだったけどね。“長打も打てるフルスイング1番”」

B宗「あれはよくない(笑)。たぶん後ろを打つ人が迷惑する。おれ、1番は難しいんだよ。初球を見たい自分と、初球から打ちたい自分がいて。1番が初球から打つと後ろの人はやりづらいんじゃないかな。だから周平さん(福田周平選手)が1番の時の2番はやりやすかった」

イ鈴木「周平さんはもともと見ていくタイプだからね。その2人の並びは見ていてもすごいキレイだった。宗はチームバッティングもできるし、得点圏でランナーも返せて自分も出れる。昔ながらの“2番”ではないけど、現代的な2番は合っているんじゃないかな」

B宗「まあ、そうだね」

イ鈴木「打線も正尚さん、寅威さん(伏見寅威選手)が抜けて、森さん(森友哉選手)が入ってきて、結構変わっていきそうだよね。まあもともと固定されないのがオリックスのスタイルだけど」

B宗「去年も(打順が)140種類くらいあったらしいし」

イ鈴木「スタメンは、当日に言われるの?」

B宗「試合の1時間前くらいにボードに書き出されて。『出てねえじゃんおれ!』っていう人もいる(笑)」

イ鈴木「結構ギリギリだね(笑)。宗は『今日は何番くらいなんだろ』くらいな感じでしょ?」

B宗「そうだね、特に去年とかは。ずっと6番打っていて、たまに2番って書かれているとドキッとするんだよね。『今日は打席数多いかも』みたいな。5番とか6番はだいたい4打席くらい。でも2番は5打席、6打席立つ可能性もあるから」

イ鈴木「打席が増えるなかで、打率の計算も変わることがあるじゃん。そうするとフォアボール取りにいったり、ヒット狙っていったりした方がいいとか、心持ちを変えることとかあるの?」

B宗「それは打順によって変えることはあんまりないかな。でもやっぱり、1試合の中で目標にしているのが“1ヒット、1四球”。それが取れたら最高」

イ鈴木「要するに2出塁か」

B宗「四球取りたいよね。2番とかにいるとなおさら」

イ鈴木「やっぱり1〜3番の人は打席が多くなるからね」

B宗「そうそう、だから凡退はきつい。5タコ(5打席凡退)ってマジできついから。メンタル的に」

イ鈴木「3タコと5タコでは違う?」

B宗「四球があれば『まあヒット打ちたかったな』くらい。5タコは『あぁやっちまった』って……結構打率下がるからね。」

イ鈴木「どうなるんだろうね、今シーズンは」

B宗「ここからオープン戦があるけど、そこで出られなかったら意味ないからさ。ここで話している意味もなくなっちゃうし。試合に出られないと結果も出せないからね。そこ(定位置競争)に乗れるようにやりたいなと」

イ鈴木「レギュラーは確約されていないと思っている?」

B宗「確約されていないと思う。本当に。昨日とかも太田(太田椋選手)もホームラン打つし。みんな若い子たちも元気いいからさ、まあおれも若い子たちなんだろうけど(笑)」

イ鈴木「まあそこがさ、はっきり若いって言えないくらいになっているのよね」

B宗「ヤバいよね。9年目。昔は『4年やりたいよね』みたいな感じだったのに(笑)」

イ鈴木「おれはこうやって引退して次の道で頑張っていくけど、宗はもう現役で。それでお互いに野球終わったときに何か同じ夢を描いていけたら」

B宗「そうだね、頑張りましょう!(笑)」

イ鈴木「最後に、今年の意気込みを教えてください」

B宗「チームとしては、リーグ3連覇と日本一2連覇を狙える位置にある。周りのチームも強いとは思うけど、連覇を狙えるのはおれらしかいないからチームとしてはそこを目指していく。

個人としては3割、2桁本塁打を狙っていきたい。ゴールデングラブ賞とかも狙っていきたいけど、まずは試合に出ないと狙えないから、今まずしっかり状態を上げていって、いい状態で試合に入りたいかな。

なんでも一気には狙えないから、“ちょっと”の毎日の成長をしていきたいと思っているよ。一流ではないから、一流になるためにも積み重ねていきたいなと」

イ鈴木「一般的にはもう一流なんだけど、そこを謙虚にやれるところが宗の良さだね。
頑張って!」

文・鈴木 優

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