WBC出場はシーズンにどう影響する? 2017年大会、14名のパ・リーグ戦士を振り返る

パ・リーグ インサイト 望月遼太

2023.2.23(木) 07:00

松井裕樹投手(左)と則本昂大投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV
松井裕樹投手(左)と則本昂大投手(右)(C)パーソル パ・リーグTV

WBCに出場する選手には、例年よりも早めの調整が求められる側面も

 3月9日、いよいよ第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の日本初戦の火蓋が切って落とされる。WBCに選出された選手は例年よりも早めの調整が求められることもあり、シーズン開幕後に影響が出ないか、不安に思うファンも少なくはないだろう。

 そこで、今回は2017年の第4回WBCに参加した当時パ・リーグ所属の選手たちが、同年のシーズンで残した成績を紹介。2016年と2017年の数字を比較することにより、前回大会に出場した選手たちの成績が、どの程度変化していたのかについて振り返っていきたい。

2016年14勝を挙げた2人の先発右腕にとって苦しい1年に

 まずは、当時パ・リーグに所属していた8名の投手たちの成績を見ていこう。

2017年WBC パ・リーグ所属投手(当時)の投球成績(C)PLM
2017年WBC パ・リーグ所属投手(当時)の投球成績(C)PLM

 石川歩投手はプロ初年度から3年連続で2桁勝利を記録し、2016年には最優秀防御率を受賞。抜群の制球力を武器にリーグ屈指の先発投手となりつつあったが、2017年はキャリアワーストの防御率5.09と安定感を欠き、勝ち星もわずか3つと大苦戦を強いられた。

 また、宮西尚生投手も例年通りに50試合登板を果たしたものの、防御率は1.52から3.32に悪化。それでも左のセットアッパーとして一定の成績を残した点は流石の一言だが、ホールドポイントも42から29へと大きく減少し、疲労の影響が感じられた部分は否めなかった。

 武田翔太投手も2015年、2016年と2年連続で13勝以上を挙げていたが、2017年は故障の影響もあって13試合の登板にとどまった。防御率の面でも過去2年間に比べるとやや悪くなっており、以降も故障が相次ぐなど完全復活は果たせていない状況だ。

東北楽天のエースと守護神は、WBCを経て大きく成績を向上

 その一方で、WBCを経て成績を向上させた投手たちも存在。松井裕樹投手は防御率を3.32から1.20へと大きく改善させ、シーズンを通して支配的な投球を披露。防御率0.87を記録した2015年に見せていた安定感を取り戻し、守護神として充実の1年を送った。

 松井投手と同僚の則本昂大投手も自己最多タイの15勝を挙げ、防御率2.57も自己最高。また、自己最多の222奪三振を記録し、4年連続となる最多奪三振を獲得しただけでなく、8試合連続2桁奪三振というNPB記録も樹立。まさに歴史的な快投を披露してみせた。

 牧田和久投手は防御率こそ1.60から2.30に悪化させたものの、2016年と同様にセットアッパーとしてフル回転。登板数は8試合増加し、ホールドポイントも前年から1減らしただけと、開幕前から登板を重ねた疲労を感じさせない奮闘ぶりでチームを支えた。

 千賀滉大投手はWBCで先発と中継ぎを兼任し、同大会では日本代表で唯一となるポジション別優秀選手に選出。シーズンでも防御率は2016年とほぼ同じで、勝ち星は1つ上積み。WBCでの奮闘ぶりを考えれば、成績を維持してみせた点は特筆に値するはずだ。

 やや特異なケースといえるのが増井浩俊投手で、2016年はシーズン途中に先発に転向して10勝を挙げた。2017年は抑えに復帰して27セーブ、奪三振率14.01を記録した。調整の難しいオフシーズンを経たことを考えれば、十二分に成功の1年だったと形容できよう。

中田選手はWBC本大会でも日本代表の中軸として活躍したが……

 続いて、当時パ・リーグに所属していた6名の野手の成績を確認していきたい。

2017年WBC パ・リーグ所属野手(当時)の成績(C)PLM
2017年WBC パ・リーグ所属野手(当時)の成績(C)PLM

 中田翔選手は2012年から5年連続で24本塁打以上を記録するなど安定した活躍を続け、2017年のWBCでは日本代表の中軸も務めた。しかし、開幕後は打率.216、OPS.676と極度の不振に苦しみ、狂った歯車は最後まで噛み合わないまま終わってしまった。

 大野奨太選手も2016年はゴールデングラブ賞を受賞する活躍を見せ、チームの日本一に大きく貢献した。だが、2017年は故障の影響もあって打撃成績が悪化し、持ち味の一つだった盗塁阻止率も2016年の.310から.098に落ちるなど、攻守ともに精彩を欠いた。

炭谷選手は打撃が長年の課題だったが、WBCを境にその傾向に変化が

 先述の2選手こそ成績を落としたものの、残る4選手はいずれも一定以上の成績を残した点は興味深いところだ。

 炭谷銀仁朗選手は長年にわたって打撃を課題としていたが、2017年に打撃開眼。キャリアで初めて打率.250を上回り、2016年に比べてOPSを.100以上改善させた。その後も打撃面でたびたび存在感を発揮するなど、一つのきっかけをつかんだシーズンとなっている。

 秋山翔吾選手は2年ぶりに打率.300を上回っただけでなく、本塁打も初めて20本を超えた。本塁打と打点はキャリア最多の数字で、OPSも.933と極めて優秀な水準に到達。パワーが格段に増した点をはじめ、各種の数字が打者としてのさらなる進化を示している。

 内川聖一選手は故障の影響で出場試合数こそ減ったものの、わずか73試合で12本塁打とハイペースでアーチを記録。出塁率.370、OPS.851はいずれも首位打者に輝いた2011年に匹敵する数字であり、打撃内容そのものはキャリアの中でも上位に入る優秀さだった。

 松田宣浩選手はWBC準決勝で敗退につながる痛恨のエラーを犯してしまったが、その影響を引きずることなく奮闘した。3年連続となる全試合出場を達成し、概ね2016年と大差のない数字を記録。不動の三塁手として、チームの日本一奪還にも貢献を果たしている。

不振に陥った選手も、前年以上の活躍を見せた選手も存在したが……

 投手陣では、石川投手、宮西投手、武田投手の3名が、前年に比べて成績を大きく落とした。宮西投手は2018年に41ホールドポイントを挙げて防御率1.80と復調したが、石川投手と武田投手は現在に至るまで2桁勝利を挙げられていない。

 しかし、松井投手と則本投手は2016年を上回る大活躍を見せ、牧田投手と千賀投手もチームの主力投手として好投。増井投手も抑えに再転向して活躍した。不振に陥った投手が3名に対して、2016年と同じく活躍した投手が3名、2016年を上回る好成績を残した投手が2名と、一定以上の投球を披露した投手の方が多くなっていた。

 野手陣に目を向けると、中田選手と大野選手の2名は2016年に比べて成績を落とした。中田選手は2018年に打率.265、25本塁打、106打点と活躍したが、大野選手は中日への移籍後も苦しい状況が続いている。

 だが、炭谷選手と秋山選手はWBCを経て進化を遂げ、2016年を上回る成績を記録。内川選手も怪我に悩まされながら出色の打撃内容を示し、松田選手も例年通りにチームの主力として活躍した。

 故障に悩まされた側面もある内川選手の評価は難しいところだが、内川選手を除く選手たちの内訳に目を向けても、不振に陥った選手が2名、一定以上の活躍を見せた選手が3名。投手陣と同じく、活躍した選手の方が多い、あるいはどちらも同数と見なすのが妥当だろう。

WBC戦士たちは、シーズン開幕後も本来の実力を発揮できるか

 開幕後は苦しいシーズンを送った選手もいれば、逆に覚醒のきっかけをつかみ、さらなる飛躍を果たす選手も存在。2016年と同等、あるいはそれ以上の活躍を見せた選手のほうが数字の面では多いという点も、ファンにとっては心強い材料といえよう。

 もちろん、シーズン開幕後に各選手がどのような結果を残すのか、現時点ではまだわからないのも確かだ。来たる本大会における日本代表の躍進を祈りつつ、WBC戦士たちがレギュラーシーズンにおいても、本来の実力を発揮してくれることを願ってやまない。

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パ・リーグ インサイト 望月遼太

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