プロスポーツの現場で働くってどうなの? 転職組が打ち明けた、ここだけ「ホンネトークVOL.01」

パ・リーグ インサイト

2018.6.21(木) 12:00

5月25日に開催された国内初のスポーツ業界合同中途採用イベント「パ・リーグ キャリアフォーラム」(詳細はこちら)では、スポーツビジネスに携わる出展15社が壇上でプレゼンテーションを行い、各個社ブースでは参加者へ説明会と個人面談の場が設けられた。また、それだけではなく、様々な業界からの転職者がスポーツ業界へ入って感じた胸の内を語る対談形式の「ホンネトーク」が行われている。登壇した、いわば“先輩社員”のリアルな声に、参加者が耳を傾けた。

――今回はスポーツ業界へ転身された4名の方に、ご登壇いただきました。まずは簡単に自己紹介をしていただけますでしょうか。

柳下堅志氏(株式会社北海道日本ハムファイターズ):現在、コンシューマービジネス部マーチャンダイジンググループに所属していまして、北海道日本ハムグッズの企画、仕入れ、販売部署のマネジメントを担当しています。転職して3年が経ち、現在39歳です。前職は飲料メーカーの販売会社に勤め、設備投資、物流、購買の仕事をしていました。

清田和大氏(株式会社埼玉西武ライオンズ):所属は事業部事業企画グループで「新しいものをやっていこう」という部署です。主な業務としては、ファンクラブCRMの企画や市場調査、アンケートなどのマーケティングリサーチ、レポートなどの分析業務です。前職は外資系の小売業で、一つのブランドの売り上げを最大化していました。

山本桂司氏(浦和レッドダイヤモンズ株式会社):損害保険系の会社に14年間勤めて、浦和レッズは3年目になります。現在はパートナー営業部という部署で、スポンサー営業が中心の業務です。

辻彰徳氏(パシフィックリーグマーケティング株式会社):セールス&マーケティングという部署でディレクターをしています。要は企画営業職で、BtoBのセールスがメインです。前職は新卒で新規事業のウェブ広告営業を担当していました。

転職前に得た経験と、スポーツビジネス畑で得られるもの

――今日はテーマをいくつか用意しています。まずは転職ですので「活かせるスキル、身につくスキル」から。

山本氏:スポーツクラブのマネジメントがしたくて、その目標を達成するには自分に何が足りないかを考えました。経営の知識や人脈、コネを転職する前に埋めたいと思いまして。前職で働いている間に神戸大学の大学院、MBAで経営を勉強しながら、論文作成の際には各クラブの社長とGMに手紙を送ってインタビューをお願いしながらコネクションを作りました。ちょうど卒業のタイミングで、今度はJリーグがJHCというクラブの経営者を育てる学校を作ることになり、チャンスだと思い入学しました。そこでも勉強しながら、人脈、コネクションができて、卒業後に浦和レッズへ入社したという経緯です。多分、私が一番評価をされたのは行動力だと思います。

――前職の経験が、現在の仕事に活きることもあるのではないでしょうか。

柳下氏:そうですね。前職で物流や購買の業務で業者と折衝したり、価格や値決めの交渉をしていました。身につけた一般的なビジネススキルが、今はグッズを企画して仕入れの価格交渉に活かせているのは感じています。

――面接でも、具体的な仕事内容の話やスキルについて突っ込まれましたか。

柳下氏:はい。ですが、どちらかというと、入社したときは学生時代から住み着いている北海道が好きで、貢献したくて、そのために北海道日本ハムで仕事がしたいということを語りました。入るまでは仕事がイメージしづらかったですけれど、実際にはグッズ部門の仕事などは一般的なビジネスに通じるところがあって。実は活かせるスキルも結構あるんだなと感じています。

――スポーツの世界は特殊と言われますが、ビジネスモデルを考えたら実はそうでもなかったりします。では、自チームや会社の「ここが自慢」をお願いします。

辻氏:会社の自慢は挙げたらきりがないですね(笑)プロ野球はもちろんなんですが、それだけにビジネスが限らないのが大きな魅力の一つでもあります。他のスポーツにつながったり、違う業界にも売り込みに行ったり。社内も新規事業を積極的に起こそうとする体制があるので、それを社長に直談判してやらせてもらえたりします。失敗するよりも、チャレンジしたことをすごく評価してくれるので働きがいのある会社だと思っています。

清田氏:埼玉西武は今、変化期を迎えています。大きな変換期を迎えるにあたって、2020年には球場改修など様々なビジネスチャレンジができることが自慢と思っています。お客様にいかに喜んでもらうかといったソリューションをどのように提供していくのか、何が必要なのかを真摯に見つめて、チャレンジできるのは非常に面白いですね。

柳下氏:新球場の話では、夢のある取り組みに関われることで非常にわくわくする気持ちがあります。より良いものにしていくために、自分たちが頑張らなきゃいけないので責任感も感じますが、自慢でもあります。

山本氏:いろんなところに住んでいたので、浦和レッズというブランドが凄く強いなと感じています。働いていることがすごいと言われてしまいますが、勘違いしてはいけない、気を付けなければいけないというのはあります。もう一つ、仕事の自慢となると、稼がれたお金がどこで使われているのかがわかる部分ですね。例えば、一億円稼いできたらそれがチームの補強費になり、要は「自分でチームを強くすることができる」という距離感が凄く楽しい仕事です。

――スポーツ業界のいい話が聞けたところで、「こんなはずじゃなかった…」ということはありますか。入ってみて驚いたことやギャップのような話もあれば。

夢が追求できるフィールドで

清田氏:業務内容でもお伝えしましたけど、CRM、マーケティングリサーチ、分析と、その他にもマルチタスクの業務があります。埼玉西武に就職する際はCRMじゃなければ入らないと思っていましたけど、現状ではそればかりできているわけではない。それぞれが分散してしまっていて、こんなはずじゃなかったなと。今は楽しんで、様々な経験ができることをポジティブに捉えています。CRMはスポーツビジネスの根幹になるところなので。

――専門家になるためには、当然ほかの業務のことも知っていないといけない。

清田氏:アンケートなどをつうじてお客さんが何を思っているのかなど、その実態を把握した上でCRMをごりごりやっているので、そこはつながっていると思います。

――実際に、今のポジションは事前に決まって転職するのでしょうか。

柳下氏:入社する前は動員イベントの仕事と言われていましたけど、実際はグッズ関連の部署でした。今もグッズを扱う部署で仕事をしていますが、動員イベントの仕事やイベントユニフォームのビジュアルを決める仕事、プロジェクトとして進める仕事も担当しました。先程、マルチタスクの話がありましたけど、どこの部署でもやりたいと思えばいろんな仕事を任せてもらえます。正直、あまり部門は関係ないといった感じですね。

――入りさえすれば幅広く取り組めるのだと思いますけど、何らかの専門性を持って柔軟に複数の仕事がこなせる懐の深さがないと、おそらくプロスポーツチームでは仕事が務まらない印象を受けました。では、最後にビジネスパーソンとしての「将来の夢」をお聞きしたいと思います。

清田氏:具体的な夢になるんですけど、メットライフドームを平日満員にする。

――今はどのくらいですか。

清田氏:控えさせていただきたい(笑)

辻氏:将来は経営者、実業家になりたいと思っていまして、自分が発進したサービスで世の中を良くしたいです。今の業界で、スポーツを通して世の中を良くするということに取り組んでいるので、それをヒントに将来は現職を活かした経営ができる人材になりたいと思います。

――いつか、このイベントで最初に登壇するのが、次の社長の辻さんになっているかもしれないということですね。

辻氏:はい。なるかもしれませんね(笑)

柳下氏:弊社も新球場の構想がありまして、まだ正式に確定してはいないですけど取り組んでいます。それが実現できれば街づくりを一からやっていくことになると思うので、前例がない取り組みの中枢にかかわって、社会の課題を解決できる。スポーツで社会の重要な役割を担うというのが夢です。

――山本さんは、待遇面が随分と変わってでもサッカー界に飛び込みました。

山本氏:申し上げた通り、転職がゴールではありませんので。クラブのマネジメントをすることが私のゴールで、いかにそこのポジションに就くか。…と、浦和レッズがクラブワールドカップで優勝することが夢でございます。


社会に出れば、人生の3分の1が労働時間になる。今回の登壇者にとって、転職は一大決心だったに違いない。トーク中に披露された、スポーツビジネス業界ならではの酸いと甘い。そこに“ドリーム・ジョブ”の世界が垣間見られたことで、参加者たちは憧れの世界への思いを、より一層と募らせられたのではないだろうか。

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